第2話 サボります
神SHOTを見れて恍惚としているレイナは、またもや御者の声で我に返った。
「お嬢様、そろそろ行かないと遅刻してしまいますが? まだご気分は優れませんか?」
優れないどころか絶好調なのだが、レイナは正門のところで仲良さ気に話しているハインツとヒロインを見やって、
「えぇ、気分が優れないから屋敷に戻って貰える? あぁでも、その前にハインツ殿下に一言断って来てくれるかしら? 私のことを待ってるみたいだから」
二人の邪魔をしてはいけないと判断した。
「お嬢様...元気そうに見えますが...」
「あ~! フラフラするわぁ~! 今にも倒れそうだわぁ~!」
「はぁ...分かりましたよ...ハインツ殿下にお伝えして来ます」
「お願いね~!」
御者がハインツとヒロインのところに行って説明しているのを、レイナはこっそりと窓から覗いていた。一瞬、こちらを見たハインツと目が合いそうになったので、慌てて隠れる。
「良し良し。これでハインツとヒロインは上手くいきそうね」
レイナは笑みを浮かべながら、屋敷へと戻って行った。
◇◇◇
屋敷に戻ったレイナは、仮病ではあるものの、それを悟らせないためにベッドに横たわり、頭の中で先程見た光景をフラッシュバックしていた。
「はぁ~♪ ヒロインのクレアたん、可愛かったわぁ~♪ 金髪碧眼のキラキラ王子と並ぶとまぁ絵になること! はぁ~♪ 尊いわぁ~♪ 確か王立学園唯一の平民出身で、頭脳明晰なのよね。学費免除の特待生枠で入学して来た才媛。はぁ~♪ 可愛い上に頭まで良いなんて完璧よねぇ~♪ それに比べて...」
レイナは自分の顔を鏡で確認してみた。
「うん、確かに凄い美人さんではあるよね。黒髪黒目は元日本人にとっては馴染み深いけど、ちょっと目元がキツイ感じかなぁ~ まぁ、紛うことなき悪役令嬢面だよね~」
それはともかく、明日からも神SHOTのGETを夢見ながら、レイナは眠りに着いたのだった。
◇◇◇
「お嬢様、お嬢様、起きていらっしゃいますか?」
レイナはドアを叩く音で目を覚ました。
「ふぁい、起きてるよ~」
すると侍女が部屋に入って来た。
「あぁ、良かった。お目覚めで。お嬢様?」
この娘の名前が分からない...レイナは焦った。
「あ、あぁ、ゴメン。まだ頭がボーっとしてて。何か用?」
「ハインツ殿下がお見舞いにいらっしゃってますけど」
「は、ハインツ殿下が?」
悪いけど今日は会いたくない。レイナはせっかくの気分を台無しにされたくなかった。
「はい、どうします? お帰り願いますか?」
「う、うん、悪いけどあなたからそう伝えて貰える?」
「分かりました。このエルにお任せ下さい」
この娘の名前はエルね。レイナは頭の中にメモした。
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