第3話 ストーキングします

 次の日、登校したレイナは下駄箱で固まっていた。


「クラスが分からない...」


 入学式を欠席したのだから当然だ。途方に暮れていると、


「おい、レイナ」


「は、ハインツ殿下...お、おはようございます...あ、あの...昨日はすいませんでした...お見舞いにも来て頂いたのに...」


「...体の方はもういいのか?」


「は、はい、お陰様で...」


「ならいい、連いて来い。クラスが分からないんだろ? お前は俺と同じA組だ」


「あ、ありがとうございます...」


 待っててくれた上に案内までしてくれる? そんなに嫌われてる訳じゃないのかな? と、レイナが希望的観測を頭の中で浮かべていた時だった。


「急にしおらしくなって何を企んでるのか知らんが、これだけは言っておくぞ。本当ならお前とは話したくもないし、顔も見たくないんだ。お前が昨日休んだから仕方無しに声を掛けただけだ。同じクラスになったからって話し掛けて来るんじゃないぞ? 分かったな? 肝に銘じておけ」


「わ、分かりました...」


 やっぱり気のせいだったようだ...



◇◇◇



 クラスに着いて回りを見渡してみると、


 (あ、クレアたん、同じクラスなんだ! 嬉しいな♪)


 ピンク髪のヒロインの姿があった。


 (はぁ~♪ 今日も可愛いな~♪)


 クレアの席はレイナのちょうど斜め前の席なので、授業中レイナはその可憐な横顔をずっと眺めていた。授業なんか聞いちゃいない。


 (眼福、眼福~♪ これから毎日楽しくなるね~♪)


 朝、ハインツに罵倒されたことなど頭の中からすっかり飛んでしまっていた。



◇◇◇



「レイナ様~ お昼ご一緒しましょう~」 


 お昼休みになるとレイナの取り巻き達がやって来た。ゲーム画面でレイナの背景に描かれていた奴らだ。名前が分からないので、取り巻きA、B、Cとしておく。


「あ、うん。私ちょっと用があるから、先に行って席だけ取っておいてくれる?」


「分かりました~」


 取り巻き達の相手をしている内にクレアの姿が見えなくなっていた。


 (ゲーム通りならクレアたんはあの場所にいるはず)


 レイナは中庭を見渡せる回廊に来ていた。


 (やっぱりここに居た! クレアたんは貴族しか居ない学食で食事するのを避けて、中庭で一人お弁当を食べているんだよね。なんか寂しそう...購買でパンでも買って私が一緒に...いやでも断られたりしたら凹むなぁ...ハインツに見付かったりしても面倒だし...仕方無い、学食行くか...)


 これからもレイナのストーキングは続く。


 

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