第1話 新生活の幕開け

ふと目が覚め、時計を見ると時刻は6時だった。

「東京の朝は慣れないな」

田舎生まれ田舎育ちの俺、鷹野大和は東京の高校に通うことが決まり、寮生活を始めて約1週間がたった。生活にはすぐ慣れると思っていたが、思ったより時間がかかりそうだ。今思えば、田舎での朝の蛙の大合唱も恋しく思ってくる。

「とりあえずランニングでもするか」

そう言うと、顔を洗い、軽い運動着に着替えて部屋を出た。階段を降り、食堂を覗くと寮母さんが食事の準備をしていた。

「何か手伝いましょうか?」

そう言うと寮母さんはこちらに気づいた。

「大和くんおはよう。そうね、テーブルに割り箸だけおいてもらえるかしら?」

「了解しました」

「ありがとね〜大和くんはいい夫になるわ」

「寮母さんの期待に応えられるよう頑張ります」

「まさこさんって呼んでくれてもいいのよ??」

「検討しておきます…」

そう言い、各テーブルの上に割り箸を置いた。

「少しランニングに行ってきます」

「あと30分ほどで朝食が用意できるからそれまでには帰ってきてね♪」

「了解です」

この人朝からテンション高いな、そう思いながら寮の外に出た。

「田舎の朝ほどではないけど寒いな」

もう1枚上着を着てくればよかったと後悔したが、取りに行くのも面倒だったのでそのまま走ることにした。

自分の通ってる学校は東京の都心から離れており、寮も学校から徒歩10分のところにあるので周りにあると期待していた高層ビルなどもなく静かな住宅街だった。10分ほど走り住宅街を抜けると、そこには巨大な公園があった。

「今日は少し行ってみるか」

そう思い、公園内をランニングしていると網フェンスに囲われた本格的なバスケコートがあった。まだ朝が早いので人の気配はない。

「今度バスケしに来てみるか」

少し自分が高揚したのを感じ、時計をみるともう20分も経っていたことに気がついてランニングのペースを上げ、寮に帰ることにした。

寮に戻ると朝食が準備されていた。一度部屋に戻り、制服に着替え食堂に向かう途中、ある男子に話しかけられた。そいつの名前は鳩山俊。同じ寮の隣の住民でかつ同じクラスメートである。俺の通う学校は創立されてから3年しか経っておらず、クラスも1学年4クラスしかないため、寮の隣の住民と同じクラスということはさほど珍しくない。

「おっす〜朝いなかったけど、どこ行ってたのか?」

「軽くランニングしてた」

「やっぱ田舎育ちのスタミナは桁が違うな。毎日イノシシにでも追っかけられてたのか?」

「まあな」

「え、まじ?」

「冗談に決まってんだろ!」

こいつは相変わらずバカだ。将来ハニートラップに引っかかりそうで心配である。

「とりあえず飯食いにいこうぜ」

「おう、そうだな」

そういって朝食を済まし、部屋で学校の支度を始めた。

入学してからの1週間は自己紹介やオリエンテーションが行われたため、いろんな人と関わり、仲良くなった。田舎には居なかったオシャレな子やギャルっぽい子などいろんな人がいて楽しかった。その中でも特に目立っている女子がいた。

名前は大鷲凛。容姿はとても可愛らしく、性格も明るく誰彼構わず話しかけてくれるし、運動もでき、学力においても入試TOPで合格したらしい。

「初めまして!大鷲凛です!鷹野大和くんだよね?これからよろしくね♪」

「よ、よろしく」

そんな完璧な彼女の本音がみえず、恐怖を感じると同時に、過去の自分と重なり、少し嫌な気持ちになったことを思い出した。

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