第120話 お見合い?
「娘だった?」
聞くと辺境伯は悔しそうに
「ああ、娘だったんだ」
辺境伯は遠くを見るような目を窓の外に向けていた。
「娘はあの日、領の辺境の村の視察に赴いていた。だが、その村に盗賊共が現れて村人達に略奪、暴行を始めおった。娘は村人の避難を先導していたのだが逃げ遅れて、盗賊共に拉致されてしまった」
辺境伯は目を覆って首を小さく振る。
「残念だが村人の前で甲斐甲斐しく動いたために娘は自分の事を廻りの村人達に知られることになってしまった。辺境伯の娘が盗賊に拉致られたという情報は隠しようがなくなった……もはや
そう言うと辺境伯は少し寂しそうにしながらも……
「そこで本人に誰か気になっている相手をと聞いたらそれなら盗賊から助けてくれた人、君を紹介してくれと言われたんだ」
「ちょっとお父さん……」
そう言うとエリザベータさんは恥ずかしいのか顔を赤らめて顔を手で隠してしまった。
「あえてお聞きしますが、他に誰かいなかったのですか?騎士団とか家臣団とかには?……」
「騎士団員や家臣じゃ意味が無いとか言われてな……それ以上は本人じゃないとわからん」
言われてエリザベータさんに顔を向けて、
「どうして俺がいいの?」と聞くと、
「……」
どうも親の前では言いづらいらしい。
「申し訳ないのですが、少しお嬢さんと2人で話をさせていただけませんか?」
辺境伯は頷いて、
「私は騎士隊員の訓練を見に行こう」
そう言って部屋を出て行ってしまった。
遠ざかっていく足音が聞こえなくなるまで待ってから、もう一度話を始めた。
「どうして俺がいいの?騎士団や家臣団にいい人はいなかったの?」
そう問いかけると、
「せれでは意味が無いじゃないですか?」と言う。
「今までは家の事を中心に考えて生きてきたように感じます。でも家の事から離れて、自分のいいように生きることができるようになると……何をすればいいのか……」
そう言うとエリザベータさんは優美な眉をひそめた。
因みにエリザベータさんは17歳。
辺境伯の第5子にして3女である。
長女は第2王子へ嫁いでおり、次女は公爵家への輿入れが決まっている。
エリザベータさんも嫁ぎ先は伯爵家へ行くことになっていた。
しかし、今回の事でその伯爵家の嫁の座は、15歳を迎えた同腹の妹に譲られることになった。
で、浮いてしまったエリザベータさんの将来なのだが……
「自分に何が出来るのかわからなくなってしまって……」
「なんでもできるよ、フランはポーション作成で店を持つのが夢だし、ルリはどうなりたい?」
俺は自分の左に座ったルリに尋ねた。
「ユウキは稲を育てるんでしょう?私も稲作と醤油と味噌を作るわ」
俺はエリザベータさんに向きなおると、
「ここにはいないんだが、もう一人婚約者が居る。君で4人目だ」
「4人目……」
エリザベータさんはそう呟くように漏らすと、
「貴方は1晩で4人も相手に出来るのですか?」
ビックリしたようにそう尋ねた。
「今までほとんどの相手が気を失ってしまったので確かな事は分かりませんが、大丈夫だと思うのですが……」
「……」
「その辺りの事は彼女達に聞いていただいた方が……ちょっと待って」
俺はエリザベータさんを一時パーティに入れた。
もちろん、ルリと話せるようにだ。
「……」
エリザベータさんは俺の前では聞きにくいのか躊躇っているようだった。
「あぁ、済まない。俺はチョット席を外すから。それとエリザベータさんをパーティに入れるから、ルリも遠慮なく話をするといい」
そう言い残すと部屋をでた。
「辺境伯は騎士隊員の訓練を見るって言ってたよな……」
俺は辺境伯を探して騎士団の訓練所まで足を延ばす。
あぁ、居た居た。
騎士団の訓練が見えるように練兵場の隅で邪魔にならないように立っていた。
「娘との話は終わったのか?」
「私がいると話しにくい話をしたいようなので席を外したのです」
そう話をしていると騎士団の練習を見ていた辺境伯から、
「君も訓練に参加するかい?」
そう言われては参加するのを断るいわれはない。
魔属領との国境を守る騎士団だ。
弱いはずが無い。
俺は普段ではクオータースタッフなので、ここでの武器として棍を使う。
「ほう、棍か」
「はい、私はマジックユーザーなので……シールドは持てません」
俺は自分のクラスまでは明かしてはいないが、この場では魔法を封印することを言って置く。
だが棍だ。
打撃武器なので木製になっても打撃力が減るだけで軽くなるので逆に扱いやすくなるだろうが……
訓練でも手加減しないと駄目だろう……
実際に使用すると棍で木人を破壊できてしまった。
正面から突くこと鎧もちょっと凹ませることができた。
充分な手加減を加えれば剣で戦うより訓練では有利に戦えるだろう。
軽く汗を流して体が温まってから辺境伯から声がかかる。
「誰か相手をさせようか?」
「そうですね、お願いします」
辺境伯は少し考えると、
「おい、クラウス。ちょっと相手をしてやってくれ」
「え?私がですか?」
「そうだ、相手は冒険者だそうだ。多少のケガはポーションで回復するぞ」
そ言われるとクラウスと呼ばれた若者はニヤリと笑った。
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