第3章 優樹、直立不動
第119話 報告
報告をと言っても大して報告をすることも無いんだが。
ただ、どこまで話してもいいかという制限をつけねばいけない。
ゲートと倉庫を時空間魔法として説明することにした。
だが、話は俺の予想を超えてきた。
「テサーラの冒険者ギルドから言伝が?」
「ああ、冒険者ギルドに顔を出すように、そしてグリンウェル辺境伯様のお屋敷にもな」
「まあ、今夜はここに泊まって明日の朝出発すると良い」
結局何も聞かれなかっただと?
一応、タチアナさんとベルナリア、テレーゼにはゲートと倉庫の事は言っても可能という事は話をした。
しかし、ギルドの方は予想は出来るが、辺境伯の話は予想がつかない。
取り敢えず明日の朝にギルドに行って、その後辺境伯の邸宅に行けばいいかな。
その夜は素直に寝た。
次の朝、ゲートを使ってテサーラのギルドに行く。
そこで盗賊退治の報酬を受け取ったのだが……
(報酬 20万G、雑収入 15万G、貢献P 30PT、雑収入とは盗賊が集めたお宝分です)
「お前達何やったんだ?」
「ギルド長は何も聞いていないんですか?」
「何も聞いてないぞ」
ギルド長は後片付けを押し付けた腹いせかニヤニヤと笑みを浮かべる。
ここにもヒントは落ちていなかった。
やはり辺境伯邸に行くしかわからないか……
俺はギルド長に辺境伯様への紹介状を書いてもらった。
自分の中での決心がついたら早かった。
午前中にギルドの用事を済ませると、午後にはゲートでグリンウェルへ。
昼過ぎには辺境伯邸の門を叩いていました。
門番からの誰何の声に冒険者のユウキと申しますと答えを返していた。
「辺境伯様からお呼び出しを頂いたと聞きました。これがテサーラのギルド長の紹介状です」
門番は少し待てと言って中に……しばらくすると戻ってきた。
「応接室にて待てとの指示だ。案内しよう」
玄関へ入ったところがホールになっている。
ホールは1、2階が続きの吹き抜けで階段が正面に設置されている。
正面の階段の踊り場には知らない人の肖像画が飾られている。
だが、肖像画に近づくことは無くことなく1階の奥にある応接室に通されました。
応接室は50畳を超えるくらいの部屋だ。
王都の辺境伯邸の応接室よりも広い。
調度品もこちらの方が明らかに良い。
そんな中で事態の変化を待っていると、辺境伯はこの人だろうという貫禄のある人物が応接室に入ってきた。
背の高さは俺と変わらないくらい。
思わずソファーから腰を浮かしかけた俺を制して俺の真向かいに座ると話し始めた。
「君は冒険者のユウキ君だったかな」
「はい、そうですが……」
「テサーラのギルド長に聞いたんだが……」
どうやらギルド長から色々な情報を聞いていたらしい。
だが、この会談は何だ?って疑問が抜けなかった。
しばらくすると部屋の扉がノックされる音が……
(コンコン)
「エリザベータか?入りなさい」
辺境伯が答えると静々と女性が入ってきた。
その女性は金髪蒼眼で長い髪をシニヨンにまとめ上げていた。
それよりどこかで見かけたような……
「あの、この方は?」
との俺の質問に意外な返答があった。
「これは君が盗賊から助けた内の一人で……」
……最後の一言が衝撃的だった。
「……私の娘だった」
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