第111話 フランの事情
この数日様子がおかしいフランにベッドの上で問いかける。
「この数っ日、何っかかんっがえ事っしてるっけど、なっやみでっもあっるのか?」
ユウキは激しい運動をしながらでもなんとか声を発する。
ユウキの横でフランが答える。
「気づいてたの?いつから?」
「ギルビットでかっい物っした日っの夜っかな」
「ほぼ最初っからじゃない、そんなに解りやすかった?」
「あれっだけわっかりっ易かったらな」
俺がそう言うとあきらめたように、フランはぽつりぽつりと話し始めた。
「あの日、ルリとギルビットですれ違った男たちから噂話を耳に挟んだのよ」
俺が目を向けて話を促すとフランは話をつづけた。
「この国の東の方に盗賊が居て、その副首領が体のでかいやつでヤシガンとか言ったって」
フランが懐かしさをにじませながら話す。
「私の婚約者だった人の事だと思う」
「……」
「あっあっあっ」
「コボルト達が襲ってきた日、生き残ったんだと思った」
「いやっ、そうじゃっない」
「え?」
「あんっ、いやっ、あぁん♡」
「そいつっは人間っであるっのをっ止めったんだ」
「あんっ、何か来ちゃう」
「んんっ、いくっ」
「すんごいの来ちゃう~」
……
「盗賊になるってそういう事だ」
「……」
「なぁ、フラン?フランは食べるものが無くなったら人を殺して奪うか?」
「……」
フランは首を振って答える。
俺はそれが正しいと言う意味で頷く。
「普通はそんなことはしない。それは人の考えじゃない。それは化け物の思考だ」
体が大きな丈夫な男だったんだろう?
そいつは犯罪者だったのか?
犯罪者じゃ無ければテサーラに行って荷運びでもやろうとしたら何とかなったんじゃないか?
村での生活を考えると誰でも2~3日分の備蓄は残しながら生活しているだろう。
コボルトに食料を奪われても隣の村に行って頼めば生きていける方法は他にもあったはずだ。
だがそいつはそれをやらなかった。
どんな理由があったかは知らないが、俺がしてやれることはもはや一つ、皆が納得する落とし前をつけるだけだ。
「そいつは確かにモンスターに襲われたかもしれない。でもそいつは人間であることをやめちまったんだ。人と言うモンスターになったんだ」
俺はそれでいいか?とフランを見つめた。
フランは小さく頷いた。
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