第95話 魚、魚、魚~

 翌朝、コンソールのアラーム機能を使って5時に起きた。

 流石にまだ夢の中にいたフランとルリだったが、俺の身動ぎみじろぎで目が覚めてしまったみたいだ。

「おはよう、準備出来たら出かけるよ」 


 夜の間にレベルが上がっていた牧場の娘、サーシャンに一般魔法を授けてサーシャンに連絡を入れる。

 因みにサーシャンには『浄化、水作成、冷却、乾燥』を習得してもらった。

『サーシャン、無事に一般魔法を使えるようにしたから、使い方は叔父さんに聞くと良いよ』

 朝早くから申し訳ないが、余分に成長させてしまっても申し訳ないので、そう言うと念話を切って、パーティからも抜いた。

 牧場勤務なら早い時間で起きていても不思議はないだろうと思っていたが、『やはり』彼女の朝も早いようだった。

 うまく使って便利に生活して欲しいと思う。


 そうして手早く準備を済ませて3人でギルビットに向かった。


 ギルビットの街の門はまだ閉まっていた。

 フランにお金を出して伝える。

「米などの食料は俺が来てから買う事にするから、ルリと探す事だけを頼む」

 何か欲しい装備があるかを聞いたが特にないとの事で、フランはワンドだけ、ルリは小太刀だけ携えて街の開門を待ってもらった。

 恐らく1時間程度だと思うが2人は街の外で待つことになるだろう。


 2人と別れ漁村に着くと、そこには準備万端で既に仁王立ちしている村長がいた。

「もう準備は出来とるよ~」

 村長さんの後ろに、15m程の帆船が見える。

 マストが1本、縦帆が取り付けられている。


 早速船に乗り込むと村長とその息子さんだろうか、20代後半位の青年が一緒に乗り込んできた。

「お客さん、船をチャーターしてまで魚が欲しいなんて、変わった人だなあ」

 息子さんが話しかけてきた。

「別に珍しくもないだろう?ちょっぴり食に拘りたいだけなんだよ」

 出航して1時間位が経っただろうか、船の先にブイが見えた。

 どうもその下には漁網が仕掛けられているようだ。

 そのまま船はブイに近づいていき、ブイを船に取り込んで網を引き上げ始めた。

 俺も力仕事ならば多少は手伝えるので引き上げるのに手を貸した。

 結構、色々な魚が獲れている。

 鯖、アジ、イワシ、ハマチ、カツオ、イカ、エビやホタテなども入っている。

 カタクチイワシや飛び魚などの出汁の材料も充分底の方に溜まっている。

 早速村長と値段の交渉を始める。

「ヤバい、要らない物が無い。全部でいくらで売ってくださいますか」

「全部ってコレもかい?」

 イカを提示して聞いてくる。

「勿論です」

 早速数え始めた村長と息子さんだったが、ハマチやカツオ、鯛などはしっかり数えていたのだが、イカやカタクチイワシなどは数えない。

 聞いたら普通は売れないからって只のような物なのだそうだ。

 鯖やアジ、イワシ、サンマなどは大雑把に値段が決められていく。

 そうなのか~って話を聞きながら、俺は魚を締めていく。

 ハマチ、カツオ、鯛などは血抜きをして締めないとな。

 エラの付け根の背骨とシッポの付け根にナイフを入れる。

 樽に海水と併せて『氷球アイシーボール』を応用して氷を入れていく。

 これで血抜きもいいだろう。

 血抜きしなくていいような魚なんかには『死の接触ドレインタッチ』を掛けていった。

 こうしないと倉庫に入らないから仕方ない。


 カタクチイワシと飛び魚の半分はその場で樽に入れて海水で煮てしまう。

加熱ヒート

乾燥ドライ

 海水を熱湯にしていい具合に煮えたら乾燥してしまう。

 これでいりことあごが出来た。

 あと半分の飛び魚は焼きあごにしよう。


 また村長と息子さんに魔法を売り込んでいく。

「魚の値段、合計18,000Gとの事ですが、息子さんが一般魔法を使えるようにするってことで払う事も出来ますよ。ここだけの話ですが……」


……


 話はまとまった。

 村長の息子(ガズという名前らしいが)に一般魔法(ヒート、ドライ、クリエイトウォーター、クール)を使えるようにするという契約で魚の代金とした。

 村長は「水じゃなくて、酒が出るようにならねぇのかよ」なんて言っていたが悪ぶっているだけだろう。


 1時間もすれば船は港に到着し、俺は魚を倉庫に詰めて船を降りた。

「ありがとう、いい取引でした。明日には一般魔法が使えるようにしておきますから」

 俺は村長さんとガズさんに手を振って別れた。

 勿論、18,000Gは一旦払って置いた。

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