第2章 優樹、ビンビンに立つ

第84話 奴隷商1

 朝、目が覚める。

 腕に重さと温もりを感じる。

 目の前に一糸纏わぬフランシスがいる。

 どうやら抱き枕にしていたようだ。


 俺の身動みじろぎを感じたのか、フランが目を覚ます。

「おはよう」

「おはようございます」

 丁寧な口調で挨拶が返ってくる。

 こういう所だよな、距離を感じる所。


「まだ寝ててもいいよ?」

「ん?大丈夫」

 そう言うと、ベッドを裸のまま抜け出し椅子に載せられていた下着を着け始める。

 そう聞くととてもセクシィな想像が思い浮かぶと思う。

 期待を裏切って済まない。

 この世界の下着はまだかぼちゃパンツなんだ。

 ブラジャーに関しては存在していないんだ。


 誰か頼む。セクシィな下着の開発をしてくれ。

 俺はこの異世界に来て、ファッション界に革命をもたらすつもりは無いんだ。


 PLZプリーズ……


 朝食を済ませると暫くはフランと別行動する事になる。

 買い物に行くフランにお金を渡して、俺は商業ギルドに行くことにした。

 商業ギルドは冒険者ギルドのすぐ近く、中央広場を挟んで対角の位置にあった。

 こちらも流石は王都の商業ギルド、荘厳な建物が建てられている。


 中に入ると一気に喧騒に包まれた。

 見回すと昨日の冒険者ギルドよりも全然人が多い。

 受付を見てもいている担当者は無さそうだ。

 適当に並んで聞いてしまって問題無いだろう。

 美人揃いの受付嬢の中でも一番好みのタイプの女性の前に並んで奴隷商について聞いてみた。

 王都に店を構えているのが5件。その内、男性専用をうたっている1件と亜人専用を謳っている1件を除いた3件の場所を聞き商業ギルドを出た。


 1件目、王都でも最大手との話だったので最初に寄ってみた。

 店構えも立派な、まさにザ大店おおだな

 予算を話したら値段順にずらっと並べられた女性たち。

 美人も一杯、選り取り見取り……なんだが、何かしっくりこない。

 どうしてもこの店で選ばなければいけないとなったら彼女かな、と言う目星だけ付けて、礼を言って店を出る。


 2件目、店のランクとしては中の上だろうか?

 こちらでも予算を告げると、並ばせられる女性たち。

 う~ん、あまりいい扱いを受けて無いようだ。

 先程の店の女性たちより、何か薄汚れている。

「済まないが浄化をかけても構わないか?」

 一応、店の許可を取って浄化する。

浄化クレンズ

 おはようからおやすみまで。暮らしを見つめる……じゃあストーカーだ。

 洗濯、体の垢すりから歯のホワイトニングまでと言う、万能な浄化で奇麗にする。

『優良物件だ!』とばかりに必死にアピールしてくるが、ピンと来ない。

 俺の基準はまだ美樹なのかなと、ちょっと凹む。

 このお店の女性たちよりは先程のお店の彼女の方が……と思い、店員に詫びて店を出る。


 このお店で駄目なら1件目に戻るか……という3件目。

 店のランクは中の下か下の上かという所だろう。

 こちらの店でも予算を告げ、準備をお願いする。


「おい、彼女にも準備させろ」

「えっ、彼女もですか?しかし、彼女はもっと……」

「いいから、準備させろ」

「はい、解りました」


 とんでもない女性まで並べられてた。

 どう見ても一般人じゃない。

 凋落した貴族の娘だろうか?

 紫がかったプラチナブロンドで同色の瞳をしていた。

 肌は透き通ったように白い。

 手足はたおやかに伸び、胸や腰は大き過ぎずしっとりと衣服に包まれていた。

 思わず喉がゴクリと鳴った。

「どうして彼女が……」

 俺のその言葉をどう受け取ったのか……

「彼女は今ではネーラと名乗っております。所謂いわゆる貴族の深窓の令嬢だったのですが、悪い男に目を付けられて政争に敗れ、私どもの所に流れて参ったのです」

 彼女を鑑定する。

 名前ネーラ(イスタリテ=シュテンヴル)、種族人間、年齢16、職業クラスノーブル、レベル16、礼儀作法、手芸、洋裁……戦闘に使えるスキルや魔法は習得していない。

 鑑定結果を見て俺は思わず首を振る。

 レベル16まで上がっているって事はパワーレベリングをしたのだろう。

 護衛たちで固めてダンジョンに入ったのだろう。

 だがこれではっきりした。

 彼女に冒険者をさせるのは無理だ。

 耐えられるものじゃない。

 彼女は買えない。

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