第83話 王都2
門からかなり王城に近づいたと思う。
この辺りになると敷地もかなり大きく、建物も同じように大きい。
隣の邸宅の門まで100m以上掛かる。
やはり爵位によって邸宅の位置が決まっているのか、公爵、侯爵ときて辺境伯なので王城に隣接している。
一番東にあるのが領地と一緒なのは偶然か?
グリンウェル辺境伯邸の門の脇には門番の詰所がある。
門から中に声を掛けるとすぐに門番が駆け寄ってきた。
「ここはグリンウェル辺境伯様のお屋敷だ。何用だ?」
俺たちはベルナリアの目的と身の
俺もフランも冒険者タグを提出して護衛任務を確認して証にしてもらう。
「確かに連絡は受けている。ただもう少し後だと聞いていたんだが……」
そんな疑問を持ちながらも、俺たちには否定する材料も矛盾する材料も無い。
ただほんのちょっと早過ぎると言うだけだ。
無事に中に招き入れられた。
この王都のお屋敷の中には家令やメイドだけでなく、辺境伯夫人や公子、公女もいたらしい。
でもそれは俺たちただの護衛には関係のない話だ。
家令に案内されて応接室のような部屋にたどり着いた。
「さてこれで今回の依頼は終了でいいですか?」
「はい、ありがとうございました」
答えたのはタチアナさんだった。
俺は依頼の完了の確認の書類をタチアナさんに頂いた。
「それで帰りの予定は何日後ですか?」
「えっ?引き受けていただけるのですか?」
タチアナさんは意外そうな顔をする。
「実はベルナリアさんの成長をまだ止めていまして……。それをどうするか、まだお返事をいただいていません。ですので帰りの時までに、期限を切らせていただこうと思いまして。どうでしょう?」
「ベルナリアお嬢様、いかがですか?」
ベルナリアに視線が集中する。
ベルナリアがコクンと首を上下させる。
「分かりました。それでは5日後に出発したいと思いますのでよろしくお願いします」
「こちらこそ、お願いします。冒険者ギルドに指名依頼で依頼を出しておいてください」
「分かりました」
帰りの依頼を取り付けてこのお屋敷を辞する。
「ベルナリア、よく考えて決めるんだ。決まっていなかったら俺が勝手に決めちゃうぞ。そうだなぁ、テレーゼみたいなドジっ子騎士なんてどうだ?」
ベルナリアはテレーゼをチラリと見て、
「それは遠慮しておきます」
キッパリと断った。
俺はベルナリアを除いて、タチアナとテレーゼ、マルケスの3人をパーティから外した。
俺はお屋敷を出て、貴族門を外に出る前に人通りの少なそうな場所にゲートの出口を設定する。何かの時に役に立つかもしれない。
貴族門を出るときにチェックを受けるが、特に時間が経っているわけでもなく、門番の先程の人がそのままいたので問題なく通される。
通過するときに冒険者ギルドの位置を聞いたら、やはり他の街と同じように街の中央の広場に面しているらしい。
冒険者ギルドってどんだけ儲かっているんだよ。一等地じゃねえか。
門番の人に教えてもらった通りに冒険者ギルドに向かうと
玄関を開けて入ると広いホールがあって、正面側に受付カウンターがいくつか並んでいる。
空いているカウンターを選んで声を掛ける。
「ギルドマスター宛の書類を運んで来たのですが?」
「はい、少々お待ちください」
受付に座っていた女性は奥に引っ込むと暫くして、白髭を蓄えた細身の男性を連れてきた。
「わし宛の書類とか聞いたが?」
白髭の男性を指さして受付の女性を見たらコクンと頷いて見せた。
「そうじゃ、わしがこの王都のギルドマスター、王国の総ギルドマスターじゃ」
まぁそれがわかれば問題ない。
「それじゃあこれをよろしく。依頼完了の書類をお願いします」
「う、うむ(何かあっさりじゃな)」
別にギルドマスター本人に荷物の受取人という以外の用事は無いのだ。
本人の確認さえ取れればそれでいい。
依頼の完了の書類を護衛の物と一緒に提出してお金と貢献ポイントをタグに記載してもらう。
受付に明日か明後日位に指名依頼が入るかもしれない事を伝えておく。
受ける予定なので聞いておいて欲しいと伝えておく。
ついでに王都のいい宿の紹介と奴隷商の紹介をお願いする。
「奴隷商ですか?」
まあ当たり前だが、ギルド行きつけの奴隷商とかは無いとの事だ。
その代わり商業ギルドの場所を教えてもらった。
ギルドで聞いたお勧めの宿は『エタナリアのリンゴ亭』
ギルドのあるブロックのちょっと裏にある宿だ。
ちなみに別にエタナリアの名物がリンゴという訳ではない。
ここで言う『リンゴ』は知恵の実としての意味だという。
昔、この宿屋の主人が冒険者をしていたころ、どうもダンジョンで難しいリドルを解いたとか解かなかったとか。
俺なら解かなかったのかよ!!と言ってしまうがどうなんだろうか?
「済みませんが、宿に空きはありますか?取り敢えず5泊で今は2人、途中から人数が増えるかもしれません」
宿のロビーにいた女性に話しかける。
「途中で増えて……では、4人部屋でよろしいですか?食事は朝、晩ついて一人800Gです」
俺はフランの顔をチラッと見て特に問題なさそうだったのでOKを出した。
取り敢えず2人分、8,000G払っておいた。
宿屋の飯は値段が少し高い分うまかった。
宿の主人が言っていた。
肉などの材料がギルドからお手頃価格で手に入るのだそうだ。
これって天下り?
夜、護衛の任を解かれた俺は、今、この世界で守る唯一つの物をこの腕に抱いていた。
「俺、考えたんだ。明日奴隷商に行こうと思う」
先日、言われた言葉が心の中でだんだん大きくなる。
一人で無理だというのなら、二人なら……
「君に負担を強いるつもりは無いんだ。だから改善できるところは早急に……」
何だろう。自分の声が、言葉が虚しく響く。
これは俺の方が受益が多い事に対して、申し訳なさが出てしまっているのだろうか?
「これからも頼ってほしいの。でもあなたのが凄すぎるの」
「分かってるよ。フランも来る?一緒に」
少し考えて小さく首を振るフラン。
「性格や人物に問題が無い人なら、私は大丈夫だから」
くそ~、可愛い事言いよって。
張り切りすぎてしまいました。
『
『
ゆっくり休んでね。
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