第81話 ひ・み・つ・の夜2
タチアナさんと馬車から100m程離れて話し声が他の人に聞かれないようにする。
丁度倒木が横たわっていたので2人で座って話をすることにする。
プライバシーとか個人情報とか、勇者やってると鑑定スキルとかチートで簡単に突破できちゃうので、知った内容について口外しないように気を付けるようにしないと。
先ずは明日に王都に着ける事を相談するべきだろう。
「えっ、明日、王都に着く?」
「今夜状況が変わりそうなので、明日王都に行けるようになると思いますが、早く着くと問題がありますか?」
想定される問題は、学校を見学できる日にちが決まっている場合。
滞在日数が長く必要になる。
費用が掛かる。
場合によっては一旦、ノーラタンに帰って出直すことも選択肢に入る。
だが……
「いえ、問題ありません」
「問題、ありませんか?」
「学校の見学は先方には『いつでもお越しください』と言われております」
そうなのか。この世界の学校、門戸が広い。
「滞在先はグリンウェル辺境伯様のお屋敷を、使わせていただける事になっております」
見学期日と滞在費用共に問題なしと……
「それでは明日は朝食の後はそのまま待機でお願いします。私は王都を目指して移動しますので王都のそばでゲートを開きます」
タチアナさんは頷きながら俺の話を素直に聞いている。
こうゆうところが人に好印象を与えるのだろうか?
「おそらくお昼過ぎになるでしょうから、昼食の作成をお願いします」
明日の件はここまででいいだろう。
「タチアナさんのスキルの件ですが、朝申し上げた通り少し余裕が出来ました。まず一般魔法ですが、水作成、浄化の2つでいいですか?」
「回復手段は『
「ポイント効率ですか?」
「はい。ポーションは相手が居なくても作ることが出来ますが、『ポーション作成』と『薬草知識』と『栽培』等関連するスキルがたくさんある。一般魔法も『
「スキル3つと一般魔法2つ……」
「ええ、それと比べると『
「ええっと、アレ、ですか?」
「ええ、アレです」
タチアナさんは実に微妙な顔をしていた。
「MPを使い果たしてしまうと3時間は目覚めません。それこそ首を切り落とされても服を脱がされても起きません。非常に危険な状態になります」
「つまり現状では薬師としては、若干ポイントに不安があるということですね。そして回復術師にはMPにより使用制限があると」
「そうですね、薬師としては低級にしかなれない。だが回復術師としてなら中級になれる。それもまた事実だろう」
タチアナさんは頷きながら聞いている。
そこまでは認識を共有出来ているようだ。
「ただ普段使わないスキルは成長しない。さっきも言ったように回復術師として中級にはなれる。しかしなっただけではそれで終わる。死ぬ時も中級だ。ポーションを普段から作るようにすれば、低級から中級、上級になれるかもしれない。要はどう生きるかだ」
「どう生きるか……」
暫く考えるように俯いて前を見つめていたタチアナさん。
突如、俺の方を決意の籠った目で見つめてくると俺の両手を取った。
「私決めました。回復術師にしてください」
「よろしいのですか?」
「はい、お願いします」
タチアナさんの目を見て問いかけて返答を貰った。なら俺は動くだけだ。
俺はタチアナさんを成長させるためにコンソールに意識を向ける。
パーティ画面のタチアナさんのページの、タグを押すイメージで切り替えていく。
スキル画面で成長ポイントを確認する。16ポイント、間違いない。
横でタチアナさんが身震いでもするかのような気配がする。
一般魔法の水作成と浄化を……と操作に集中していると、隣から『エイッ』と声が上がった。
突然、胸の辺りに圧力が感じられ、俺は横向きに倒れこんだ。
俺は木の幹の上に横たわり、木の幹からずり落ちないように足を幹をまたぐように両側に垂らすようになった。その際、足がタチアナさんの体をすり抜けた気がしたが、今それはあまり関係ない。
問題なのは背後の地面には腕が届かない為に踏ん張りが全く利かない事と、体の上のタチアナさんがガッチリとホールドされていて、振り落とさなければ抜け出せそうにない。
「なっ、何を」
「私にユウキをください。お願いします」
そのユウキが勇気なのか、優樹なのか。多分前者だろう。
コンソールの表示越しのタチアナさんが動く。
ちらりと見えるのはいつの間にかメイド服を
「ちょ、ちょっと、タチアナさん。何してるんですか」
「え?何もしてないわよ。ん~っ」
いつの間にかズボンを降ろされていた。
その後様々な妨害行為にも負けず、何とか無事にスキルの設定を済ませることが出来た。
『
「本当に奇麗になったわ」
「使い方はこれで大丈夫ですね」
「ええ、これで私は自分の運命を握るわ!」
「ちょっとタチアナさん!俺のを握りしめないでください!!」
何か怖くなったので、タチアナさんと俺を範囲に入れて浄化を掛けておいた。
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