第80話 ひ・み・つ・の夜1

 朝食が出来たとテレーゼさんを呼びに来たら、気絶していたでござる。

 警戒して周りを見回したが敵の姿は見えず。一安心。

 だが、選りに選って一番重いのが……

 下手をしたら鎧を入れて0.1tは超えてるんじゃ……


 テレーゼさんを持ち上げてみたら何とかなった。

 実際の重さは秘匿情報だけど、0.1tはいっていないんじゃないかな?


 取り敢えず食事の場所に持って行ったが、当然食べられる状態にはならない訳で……

「タチアナさん、済みませんがテレーゼさんはもう馬車に乗せてしまいましょう」

 馬車の中にスペースを確保してそこにテレーゼさんを押し込んだ。

「やれやれだ」

 テレーゼさんが目覚めるまで3時間弱掛かるから、朝食は皿に取りおいて後で食べてもらおう。

「済みません。新しいスキルを取得したらこんな結果になってしまいました」

「テレーゼさんも仕方のない人ですね。フフフ」

 フワフワオムレツを含む朝食を手早く済ませ、片付け等々を小一時間で行って出発となった。


 馬車で進むこと約一時間半程、馬車の中から騒めきが起こった。

 どうやらテレーゼさんが目覚めたらしい。

 マルケスに頼んで馬車を一旦止めてもらう。

 馬車の中に顔を出し、テレーゼさんに朝食を出しながら話しかける。

「ソニックブレードを何回撃てたか覚えているか?それが君の限界だ。それ以上撃ったら気絶するって覚えておくと良い」

 自分がどれくらいで気絶するのか知っておくのは必要な事だ。

 それが命の危険に繋がる事なら特に……な。


 テレーゼの朝食が遅れたので、昼食の時間を少し遅らせた。

 代わりに軽く食べられるものを提供しておいた。

 あと、フランに頼んでテレーゼに浄化の使い方を教えておいてもらう。

 丁度テレーゼが食べた食事のお皿がある。浄化のいい材料になる。


『浄化』は何を浄化するのか、イメージが大切だから。


 後程、悲しいお知らせがありました。

 お皿が何枚か……お亡くなりになったとの事です。

 目撃者の話ではテレーゼさんの『浄化クレンズ』の声とともに姿をお隠しになったとか。

 関係者一同、小さく首を振る事しかできなかったそうです。

 現場からは以上です。


 そんな悲しい出来事がありながらも行程は順調に進み、明日の昼過ぎにはバリーモアに着けるだろうというところまで無事に到達できた。


 夜、食事をパンと鹿肉のシチュー、サラダとデザートにアイスクリームというメニューで済ますとタチアナさんの成長相談をするために時間を割くことにした。


 ベルナリアさんの世話をフランに依頼してタチアナさんを連れ出す。

 自身の経験値を鑑みるに、恐らく明日の朝までにはレベル20に達する。

 そうするとゲートを使っての移動が可能になる。

 そうなると明日中に王都エタナリアに到着出来てしまう。

 その辺りの話もしておかないといけないだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る