第60話 私がこの身を汚せばいいのかしら?(白濁)
時間は少し遡る。
今日の昼過ぎ、馬車の中。
……
思えばユウキと出会ってから今日が14日目。
このお人好しのユウキと出会えたことは私にとっての僥倖だった。
単にコボルトから救われたってだけじゃない。
ユウキは得体が知れない。
とんでもない量を仕舞ったり出したりできる『時空間倉庫』
遠くの場所まで一瞬で行くことが出来る『転移門』
沢山のスケルトンを支配して、聞いた事も無い美味しい料理を作って見せる。
私やこの世界の人の知識の埒外に住んでいるような人。
冒険者なのに殆ど役立たずの私をパーティに引き込んで、そんな私に自分と報酬を折半にすると言う、どうしようもない程のお人好し。
本当にバカなんじゃないかと疑った事も一度や二度じゃない。
でも本当に強い。
水浴びして見せたあの時以外では危険を感じたことなど無かったわ。
私にはユウキの力が必要なの。
私の伯母や恋人、同じ村の人の仇を取るまで……
血に
その為なら何でもするわ。
スーシャン伯母さん、ヤシガン、助けられなかった私を許してね。
必ずあの獅子王ライダラムの首を杭に吊るしてあげるから。
……
獅子王ライダラムの討伐クエストはAランクになるだろう。
もしかしたらSランクと判断されるかも……
ユウキの今のランクはD、どんなにユウキが強いといってもDからAランク任務が受けられるBまで上がるには3年、Sが受けられるAまでは8年は掛かる。
それまで一緒に行動できる保証は無いわ。
私じゃどんなに頑張ってもユウキと同等に強くなるなんて不可能だという事は分かっている。
見放されるまでに何とかユウキにとって別れられない様になるにはどうすれば……
その時、私は気付いてしまった。
馬車の中で何故かユウキのアレが自己主張を強めたことに。
そう言えばユウキには親しくしている女性は私が行動を共にした14日間もの間を見る限りいないようだった。
少なくとも今、同じ場所には。
これならできるかもしれないと思った。
これしかないと思った。
このお人好しのユウキと一緒に居られるかもしれない。
私がユウキに抱かれれば……
ユウキの都合のいい女になれれば離れようとは思わないんじゃないか。
私がユウキを束縛したりせずに捨てたいと思われない様にすれば……
後はいつチャンスが訪れるか?
どうすれば落とせるか?
必ずやって見せるわ。
見てて、ヤシガン、スーシャン伯母さん。
……
ユウキが馬車を出ていく時それが見えた。
いえ、これは見せつけられたのかしら?
これは覚悟が必要なようね。
(ごくり)
でもあんなの私に入るのかしら?本当に?
……
この音に目が覚めたのは偶然かしら?
それとも天啓?
夜中に衣擦れの様な音に目が覚めた。
続いて外からはザッザッという足音が離れていく。
足音は一人、護衛のスケルトンの音はしなかったからユウキの足音ね。
私はツイているわ。
私はユウキに気付かれない様に後を追った。
ユウキは『発光』の水晶玉を持っているようで見失う心配は無かった。
茂みに踏み込んでしばらく歩くとちょうど野営地が見えなくなった辺りで大きな木にもたれ掛ったユウキを見付けた。
ユウキは自分のアレを右手で強くアレしており、顔をやや上方に向け目をつむっている。
ユウキのアレは荒々しくアレしており、右手によってリズミカルにアレされて今にもアレしそうに見える。
(今よ)
私はユウキが最早引き返せない状態になっていると見て、このタイミングで決行することにした。
私は足元の下生えを音を立ててかき分けた。
ガサリと私の立てた音に驚いてユウキは凍った様に立ち尽くしていたが、急に背を向けて逃げ出そうとした。
どうしてそこで逃げるのよ。面倒くさい男ねぇ。
この状況でどうして私が姿を見せたか、それぐらい察しなさいよ。
心の中で悪態をつくも、それをおくびにも出さないでユウキに声を掛ける。
「待って、逃げないで!」
背を向けたまま立ち止まったユウキに背後から身を寄せ、左右から腕を廻すとユウキのアレを両手で包み込んだ。
私の意思を知ってもらうために。
ユウキの背中がビクンと震える。
「逃げないでください。恩を返させてください」
手を緩やかに動かしながら言葉を紡いでいく。
「あなたはコボルトからもゴブリンからも助けていただきました。私はあなたが居なければ生きてはいない女なんです」
言葉でもって心理的なハードルを下げていく。
「私を求めてください。2度も命を助けられて恋に落ちない女だと思いますか?」
そう言うと私はユウキの気持ちが冷めないようにとユウキの体から手を離さない様に、這わせる様に動かしユウキの正面に廻った。
ユウキの顔は私の顔より上方にあり、ユウキの目に見上げる私の顔はどう映っているかしら?
ギリギリまで下まぶたに溜まった涙はどう?
溜まった涙を流した後、ゆっくりとユウキから体を離して1枚ずつ自分の衣装を外していく。
「もう我慢なさらないでください。お辛い時には私におっしゃっていただければ……」
衣装を全部取り払って私はユウキの右手を両手で取り、私の左胸に導いた。
「私にだって欲はあるんです、惚れた男に抱かれたいという欲が……それ以上は求めません」
私は心の中でひっそりとほくそ笑んだ。
しかし私に余裕があったのはここまでだった。
ユウキは私の想像をはるかに超えた存在だった。
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