第40話 一夜の過ち?1

 街を出てノーラタンに続く街道を2人はゆく。


 ノーラタンはグリンウェルに向かう街道を途中で南に曲がった所にある人口1万人ほどの小規模な街だ。

 そう言えば先日この辺りで金髪縦ロールとくっコロ女騎士と出会ったんだがアレがノーラタンの領主の娘って言ってたんじゃぁと今更ながらに気付く。

 依頼主はアレの親父か……。

 どんな親父なんだろう?

 いい人ならいいんだが。


 結局、今日は陽が沈むまで進んで少し開けた場所があったのでテントを設置して休む事にした。

 新しい仕事をすぐに受けてしまったので忙しない一日にしてしまった。

 フランには申し訳ない事をしてしまったのではないだろうか。

 スケルトンを2人の護衛と野営地の守備とに振り分けて、俺とフランにそれぞれ6体野営地を中心に残りを配置した。


 その日はそのまま人々の様々な想いを宵闇に包み込んだまま更けるものだと思われた。

 手早く夕食を作り明日に備えて早く休もうとお互いのテントに潜り込んで暫く、俺が疲れから横になってウトウトし始めた頃にそれは起こった。

『あ・る・じ・こ・う・げ・き・う・け・た。は・ん・げ・き・す・る?』


 俺は慌ててテントを出たがおかしい。

 テントの周りには攻撃を受けている様子が無かった。

 フランのテントを見るがこっちもやはり攻撃を受けている様子が無い。

 えっ?って言うかフランの護衛のスケルトンがテントの周りにいない。

 視界の隅に表示されているミニマップを確認すると、フランのマークが野営地から150m程離れた場所に表示されている。

「なっ、なんでや?」

 フランの表示の周りにはスケルトンを表すマークが6個、それを囲むように20程の数の敵を表す表示がある。

 かなり良くない状況のようだ。

『俺が駆け付けるまでフランを中心に守りに徹しろ』

 スケルトンにそう指示を出してフランに念話で、

『今すぐ行くからそこから動かずに!』

 どこかで聞いたことがある歌のようなセリフを言って駆け出した。

 フランが居るのは街道から離れる方向。

 緩やかな下り斜面を転がるように駆けると直ぐに木々の間から魔法で作り出した明かりに照らされて小川の煌きの中に白い影が見え隠れしていた。

 小川のへりにたどり着いた時には2m程下の水面に太腿付近まで水に漬かりながら20体程のゴブリンに囲まれているフランとスケルトンズが……フランの体の何ヶ所かからは血が滲んで体を赤く染めていた。

 フランの向こう側からは今にも襲い掛からんと錆び付いたショートソードを振り上げて跳びかかるゴブリンが……

 俺は2m程高い所にいるという地の利を生かしてその場からの跳び蹴りを敢行、ゴブリンの顔を蹴り飛ばしフランを守る事には成功しつつも水の中の石にバランスを失いそのまま後ろ向きに倒れこんだ。

(髪の毛が茶色だと下も……)

……何か色々見えちゃいけない物を見てしまったような気がするが今はそんな場合ではない。

 緊急避難的状況であることを盾に無実を主張することを脳内で閣議決定して、目の前の状況をまず何とかするべきだと理性的判断をする俺に逆らう俺の体……

 俺の護衛のスケルトンが2mの崖を下りてきて12体になったのでスケルトンを順次攻撃表示に変更。

 更にスケルトン2体を生贄に青い目の俺を召喚。

 俺の理性をバーストストリーム……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る