第38話 王都への旅立ち1

 次の日、やや寝不足の者もいたが大した問題では無かった。


 そのままテサーラへの商隊は4日後の午前に到着し、エルガライズ商会からは依頼の完了の承認をもらった。

 ハンスに別れを告げてフランとギルドに向かった。

 クエストの報酬を受け取ってフランに分け前を渡す。

 フランにパーティ資金からの持ち出しを返却してもらってもフランのお金が22,980G残った。

「そんなに急いで返さなくてもいいんだよ?」

「何となく落ち着かなくって……」

 その気持ちも分かるので素直に返してもらった。


「次にやりたいクエストとかあるかい?」

 クエストの貼り出されたボードを見ながら訪ねたが、返ってきたのは少し内に籠ったような返答だった。

「今はできることを少しづつでも増やさないと……」

 フランも俺と同じだった。

 俺と同じで全てを失ったんだった。

 家族同然に暮らしていた人も、住む家も、仕事も全部捨てて逃げることしかできなかったと慟哭したのはつい先日の事だ。


 俺はあっちの世界でどれ程親父に守られていたんだろうかと思い知った。

 俺が立ち直るのにどれだけの時間が掛かったか。

 その間、俺は守られていただけだった。


 次は俺が守る番だろう。

 そうするべきだと思った。

 そうしたいんだと言える程には、まだ男になれてはいなかった。


 そう言えば思い出した。

 ここのギルドでやっておく事があった。

 あ~、一応ギルド長に話しておく方がいいか。

「エマーリアさんはっと……受付業務中か。(チッ仕方が無いか)パシリアさん、ギルド長はいますか?ちょっと話が……」

「どんな話でしょうか?」

 そりゃそうだ。何の話かしなきゃ判断もできないよな。

「それじゃあちょっと目立たない場所へ来ていただけますか?」

 パシリアさんちょっと怯えたような目で、

「私に変な事するつもりじゃないでしょうね?」

 えっ、何言い出すんだこの人。

「さっきの目、獲物を狙う狩人の目をしてたわ」

 うわっ、めんどくせぇ。

 あっ、エマーリアさんも手が空いたみたいだ。

「エマーリアさんも一緒でいいですから。こっちにはフランも居ますし」

「でも貴方スケルトンを何十体も使うんでしょ。3人ぐらいの人間の雌なんてどうとでもできるじゃない」

 この人は俺を性犯罪者だとでも思っているんだろうか?

 まだ何もやっていないと言うのに。

「でも見ていただくのが一番だと思うのですが?」

「私に何を見せつけようと……はっ、まさかそのローブの下の物を……?」

 この人は……

「そうはいかないわよ。その手には乗らあいたっ!」

 いつの間にかパシリアさんの後ろにギルド長その人が立っていた。

 パシリアさんにチョップをかました格好で。

「お前はこのギルドを性犯罪者の伏魔殿だとでも思っているのか?」

 助かった。そろそろフランからの視線が痛かったんだ。


「で、どうしたんだ?」

「狩った獲物を見ていただこうと……」

 ギルド長は何かを察したのか、

「もしかしてまたか?」

 そう言って奥の方をクイッと指と顎で指し示すと自分も歩き出した。

 俺とフランはそれに付いていった。

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