第36話 テサーラへの出発
翌朝、勇者スキル『コンソール』の便利機能のアラームによって目覚めた俺は,
眠れぬ夜ではあったがそれでも2時間程は眠れた事に安堵した。
一睡もできていなかったらきっと見た目にもひどい状態なのを隠せなかっただろう。
「おはようございます」
フランはもう目覚めていたようだ。
ベッドの上で体を起こしながら挨拶をしてきた。
「おはよう。良く寝られたかい?」
自分の事はさて置いてそんなことを言う俺。
「はい。ぐっすり」
あ~、それはようござんした。
俺はそんな親父くさいことを思っているなんて事はおくびにも出さずに、
「それは良かった」
なんて言って見せる。
体裁を繕うのも大変だ。
桶に水作成で水を張り、顔を洗うとフランに先に食堂に行くことを告げて部屋を出た。
食堂で朝食を2人前注文してテーブルを確保すると今日の予定を確認する。
とは言え今日はエルガライズ商会に行って護衛としてテサーラの街に出発する。
決まっているのはそれだけである。
待ってる間が手持ち無沙汰なので昨夜相談したスキルの取得でもやるか。
『コンソール』は20レベルまで上げてしまう。
勇者スキルはどれも便利なので最終的には全部20レベル推奨とサーナリアさんは言っていた。
あとパーティを組んだのなら『指導』のスキルを上げる事を推奨された。
実は勇者以外の人は自分でスキルやステータスを上げることができないと言う。
スタータスやスキルは良く使ったスタータスやスキルを考慮しながらもランダムで何が上がるか決まってしまうそうなのだ。
だが『指導』スキルのレベルを上げたらその『指導』のスキルレベルまでパーティメンバーのスキルレベルを上げることができるようになるそうだ。
『コンソール』の能力によってパーティメンバーのステータス・スキルが表示できるようになったのでフランのスキルを見ると最高のスキルレベルが『薬草知識』『ポーション作成』『一般魔法』と雷系魔法の『スタン』で5レベルだった。
そこで『指導』を20レベルに上げた。
あと召喚術師のスキルに召喚するモンスター等の数の上限を増やせるスキルがあるとの情報があった。
それはありがたい。
注文してから約10分、宿屋の親父さんが朝食を運んで来た頃にほぼ同時にフランが食堂に下りてきた。
一緒に朝食を取りながら今日の予定を話す。
「テサーラの街には行った事があるかい?」
「そちらも何度か薬草の買い付けや商品の納入で行きました」
フランの住んでいた村の1番近い大きな街はこのグリンウェルだが2番目がテサーラなのであっても不思議では無いと思っていた。
「今回は商隊の護衛でテサーラまで向かう。このクエストはフランに会う前に受けることを約束していた物なのでフランに相談せずに決めてしまったけど、次のクエストからは相談してどのクエストにするか決めよう」
「はい、分かりました」
その後の準備を終えると宿を出てエルガライズ商会に向かう。
エルガライズ商会に着くと馭者のハンス他商人と支配人の指示の下荷物の積み込みを行う人足達が忙しく働いていた。
「おはようございます。本日からまたよろしくお願いします」
元気よく挨拶する。
フランシスも横に並んで挨拶を始める。
「初めまして。フランシスと申します。訳有ってユウキとパーティを組む事になりました。よろしくお願いします」
フラン、思った以上に注目を浴びて照れ臭そうだ。
そうだよな。数日前にはパーティメンバーが増えるなんてそんな素振りも無かったもんな。
皆が好奇の目で見ているのを見とがめて支配人が作業に戻るように声を上げていた。
取り敢えずはこの程度で済んだけど、たぶん野営の時に根掘り葉掘り質問を受けるだろう。
う~ん、フランの前であまり話していい話題じゃないんだよな。
野営の前に事情を話しておいた方がいいだろうな。
しばらくすると積荷の積み込みも終わり出発となる。
報酬について前回と同じであることを確認すると先頭の馬車の荷台後方に2人分のスペースを確保する。
方法はそこにあった荷物を『時空間倉庫』に入れてしまうのである。
倉庫から毛布を出して荷台に敷くとフランを先に乗せてしまってから自分も向き合う位置に乗り込む。
商隊の馬車は順調に進み西門での検査を終え西に向かう街道を行く。
しばらくして街から離れた所で倉庫からスケルトンを展開する。
途中の牧場で馬車を先行させて牛乳とチーズを買う。
馬車での移動速度は通常はそんなに速くはない。
現代と違って街の中は石畳になっているが街道は良くて砂利道。
土が剥き出しになっている部分がほとんどだ。
そんな状態なので馬車が出せるスピードは人が歩くより少し速い程度だ。
10分程度で買い物を済ませて走れば10~15分程で追いついてしまう。
一番後ろの馬車に追いついた時、後ろの馬車の馭者にフランの事情を掻い摘んで話してパーティに加入した事情を話題に乗せない様に釘を刺しておく。
後ろから3台の馬車の馭者は同じようにする。
先頭の馬車は休憩の時にでも話しておくとする。
先頭の馬車に戻ってフランに『ただいま』をするとしばらくは暇になる。
弓スケルトンに狩りの獲物を見付けたら攻撃を指示しておく。
射た獲物はノーマルスケルトンに取って来てもらう。
ちょっとした食材の補助にはそれで充分だ。
因みに今日は鹿1頭とウサギが1羽が獲れた。
1日目の今日は何のトラブルもなく野営地に到着。
フランのパーティ加入の話も阻止することができたので良い一日だった。
明日からが本格的な護衛任務の行程になるだろう。
フランがコボルトに追われていた場所も明日通る。
昨夜が寝不足だったので早めに寝ることにする。
そうそう、スケルトンはテントを中心に護衛させる。
寝返りで動かないようにね。
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