第32話 薬草採集1

 朝まだ早い時間に目が覚める。

 外で寝ていたのだから当たり前か。

 ちょっと体がバッキバキに固まっている。

 体をほぐしながら立ち上がる。

浄化クレンズ

 服に付いた汚れを落としテントから少し離れる。

 おそらくフランシスさんが目を覚ますまで時間があるだろう。

 スケルトン6体をフランシスさんの護衛に設定する。


 倉庫からクォータースタッフを取り出して体を動かすことにする。

「せいっ!はっ!」

 日課の訓練を行う。

 棒術のスキルは20レベル以上まで上げたがスキルレベルが全てではない。

 その場面において最も適切な行動が選択できるか?

 それはスキルレベルによってサポートされているかもしれない。

 しかし自分で適切な行動が分かればスキルレベルのサポートを受ける前に行動できる。

 そのタイムラグの部分を無くせれば、0.1秒でも早く動ければ……

 それに俺にはこの右腕の事がある。ちょっと我儘な右腕が……


「うらっ!せやっ!どらっ!!」


 んっ?どうやらお姫様が目覚めたらしい。

 スケルトンから反応があった。

 訓練を切り上げて朝食の準備を行う。

 野菜のスープとパン、チーズ。

 あと少し肉でも焼くか?卵でもあればなぁ。


 暫くするとフランシスさんがテントから出てきた。

 きっちりと衣服を整えている。

 切られた部分はそのままだが滲んでいた血は消え去っていた。

 フランシスさんは浄化が使えるようだ。

「おはようございます」

「おはようございます。もう疲れは取れましたか?」

「はい、もう大丈夫です。ありがとうございます」

 うん、肉体的には大丈夫みたいだな。

 精神的な部分には時間が掛かるだろう。

 俺も1年以上かかったし。


「まずは食事にしましょう」

 彼女に食事を渡す。

「ありがとう」

 人から向けられる感謝が俺の心を癒す。

「食べながら聞いてほしい。俺は冒険者をやっているユウキと言います。今は一人で活動中で今回は薬草採集のクエストを受注して、目的地に向かっている途中だ」

 まだ自己紹介もしてなかった。フランシスさんからも自己紹介をされた。

 鑑定を持つと知れてしまうので自己紹介を忘れがち。気を付けないと。


 フランシスさんがめっちゃ見てる。めっちゃこっち見てるよ。

「えっと、今日の午前中に目的地に到着して、採集を行い、明日の内にグリンウェルの街に戻る予定です」

 さてここからだ。

 考えたがこれが正解だと思う。

「良かったら薬草の採集を手伝ってほしい。あなたはウィッチの修業をしたと言っていたので私などよりも薬草に詳しいと思います。どのように採集すると再生が早いのかあなたの力を、知識を貸して欲しい」

 フランシスさんに『あなたは全てを失った訳ではない。あなたの事を力を知識を必要としている人もいる』という意味を込めて話をする。

「……いかがでしょうか?力を貸していただけませんか?」

 届け!という気持ちで返事を待つ。

「……はい。よろしくお願いいたします」

 良かったぁ。取り敢えず乗り越えるきっかけは作ってあげられただろうか。

「こちらこそよろしくお願いします。早速で申し訳ないですが、食事を終えたら出発の準備をしてください。その間スケルトン4体を護衛に付けます。スケルトンには感覚共有はありません。準備が完了したら出発です」

 感覚共有の事、余計な一言だっただろうか?


 テントに向かい中を確認、毛布を収納してテントを畳む。

『水作成』かまどの火を消し、『乾燥』かまど周りを乾かす。

 フランシスさんが使った食器を見ると既に浄化してあった。

 しっかりしただ。

 煉瓦、鉄棒、鍋、お玉、ナイフなどを『浄化』し、収納。

 俺もフランシスさんが向かったのと別の方向にスケルトン4体を引き連れて『お花摘み』、いや俺の場合は『雉撃ち』かな……に向かう。

 撃ち終わったら『浄化』する。

『浄化』が無かったらどうなるんだ?これ?

 トイレットペーパーなんて無いよな?


 俺が野営地に戻って然程さほど待たずにフランシスさんが戻ってきた。

「では行きましょうか。大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫です」

 それでは薬草の群生地に向かって出発。


 歩きながらコンソールを操作してフランシスさんをパーティメンバーに登録する。

 パーティメンバーに登録するとミニマップに青色のマーカーで表示されたり、フレンドリーファイアー防止機能により俺やスケルトンの攻撃がフランシスさんにダメージを与えずに素通りするようになる。

 フランシスさんの攻撃も俺には当たらなくなる。

 他にもパーティマネー自動分配機能やパーティ内自動翻訳機能、転移門に入れるようになったり、HP・MP管理画面表示、経験値の自動分配、『指導』スキルによる成長管理などいろいろなメリットがある。

 相手の同意が必要だけどね。

 因みにパーティ内自動翻訳機能はLAWの神の庇護下にある者は、初めから俺との会話は翻訳されている。

 パーティ内での会話にはこれが必要な場合があるかもしれない。

 もし共通語の解らない亜人デミヒューマンとかがいたら役に立つだろう。


 薬草の群生地に到着までの間、薬草についての知識をフランシス先生のご教授を受ける。

 薬草の植生や正しい刈り取り方、付近で見られる草花、気を付けるべき薬草・毒草等々。

 そんな状態だったので群生地を見付けたのもフランシスさんの方だった。

 別にわざとじゃないんだからね。


 森の中に陽が降り注ぐ小さな空間が見つかった。

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