第24話 領都グリンウェルへの旅路2~3日目
朝、身体の痛みに目が覚める。
やはりちゃんとしたベッドで寝たわけでは無いので身体の節々が痛む。
夜から朝までは特に襲撃も無かったようだ。
西の空が明るくなりかけている。
どこかから鳥の鳴き声が聞こえる。
馬車の中からもごそごそ音がし始める。どうやら皆も目を覚ましたようだ。
人間の洗顔用に桶に水作成で水を入れる。
馬にも水作成で水を与えてこよう。
朝食はやはり軽めであった。
これはもう仕方が無いのかもしれない。
朝の大きな雉撃ちが済んだら出発だ。
……
出発して正午を少し過ぎたころある変化が起こったのだが……
2日前、出発前に番頭さんと話していた時にこんな話題になった。
「盗賊に襲われる事は考えなくてもいいでしょう。どうしてもこの積荷を奪いたいのでなければスケルトンに集られた馬車など狙いません。まぁ人間に攻撃される事があるとしたらスケルトンに襲われていると勘違いした騎士達にでしょうか」
……まさか本当にでるとは……
商隊の後ろのスケルトンから、
『な・に・か・く・る。こ・う・げ・き・う・け・た』
相手は1体のみだという。
取り敢えず『無力化・拘束』を指示して商隊を停めて後ろに駆け付けた。
拘束されていたのは緑の髪をひっつめにした女騎士さんでした。
俺を見て『くっコロ』とか言うのは止めてください。
不本意です。
「どうして俺たちの商隊を襲うのですか?」
そう尋ねると驚いていました。
スケルトンに襲われていたとでも思ったのだろう。
もう抵抗の恐れは無いだろうと判断し、拘束を解いて話を聞く。
女騎士はこの近辺の街の領主に仕える騎士の一人で、女騎士の名前はテレーゼ、お嬢様のベルナリア様の護衛役をしているとのこと。
で、そのお嬢様は?って言うと、あぁ来た来た。
後方から箱馬車が近づいて来た。
「テレーゼ?スケルトンは退治できたの?」
金髪縦ロールキタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!
「お嬢様、それがどうやら襲われていた訳では無いようなのです」
お嬢様を交えて詳しい話……はできないので適当に話をした。
「なるほど、ネクロマンサーとは珍しい。今度暇な時にでも屋敷に尋ねておいでなさい」
そう言い残して金髪縦ロールは去っていった。
まぁ、そんな機会が然う然うあるとは思えないがね。
2日目はそのまま平穏の内に夜の帳が降りて行った。
「ほりゃっ!どりょ!うりょ!!」
翌朝どこかから奇声が聞こえたとかどうとか言う話があったようだが。
……某所。
「どうやら奴はやられたらしい。奴の部下が報告に来た」
薄闇に中から声がする。
どうやらこの者らはこのほの暗いところでも周りが見えるようだ。
「ほう、奴を倒す程の者がまだ人間におったと申すか」
ひときわ大きな体をした者から底冷えのする声が上がる。
「しかし奴は我ら四天王の中でも最弱」
「人間如きにやられるとは獣王のツラ汚しよ」
「しかしどんな奴なんだ?最弱とは言え我らの一角を落とすとは」
「油断しておったのではないか。不甲斐ない奴よ」
「しばらく調査が終わるまでテサーラの付近には近寄らぬ方がいいのでは?」
「何をぬるいことを言っておるのだ。そのような者叩き潰せばいいだけの事」
「我ら三人衆、力を合わせれば鬼に金棒、転ばぬ先の杖よ」
……最後のはちょっと違う気がするが。
3日目の朝はどんよりとした雲に覆われてやってきた。
今日は雨が降るのを誰もが予想していた。
そして昼がくる前にそれは現実に変わった。
酷い雨だった。
街道はぬかるみ、馬車の車輪は轍にはまり空転した。
馬も人も馬車も勿論、スケルトンですら泥にまみれた。
その日は予定していた行程の半分程度しか進む事ができずに、陽が落ちる時間になって見付けた洞窟に潜り込んだ。
洞窟と言っても少し窪んでいるというだけの話だ。
別に奥の方まで続いていると言う訳では無い。
それでも人間9人と馬8頭が雨露を防ぐことができるスペースがあるというのだから充分広い。
スケルトンには少し濡れてもらうことになるのだが、当のスケルトン達はあまり気にしていないようだ。
今日は修練は自重した。
実際、俺を含めてみんな疲れていた。
誰も声を出さないくらいには。
そして運命の4日目がやってくる。
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