第23話 領都グリンウェルへの旅路1日目

 エルガライズ商会を出た俺達であったが、最初のポイントは東の街門。

 ここで荷物のチェックを受ける。

 積荷の内容に間違いが無いかの確認を受けるのだ。

 このチェックは目的地である領都グリンウェルで、街に入る時にチェックを受けて税金を払う時に使われる。

 行商人の税金の支払い方法である。


 因みに街商人は店の大きさによって税金を収める。

 じゃあ冒険者は?って言うと冒険者ギルドに貼りだされる依頼は報酬の税金支払い後の金額が表記されている。

 例えば街の領主から狼王を倒せと依頼が入る。

 報酬は150万G。

 税金で10%、ギルドが10%で30万G引かれて、冒険者には120万G。

 収集物の買取も税引き後の金額が払われる。

 農民は農地の広さで支払うし、他の職業は家の大きさで払う。


 街や村に住んでいない人は?

 実は払っていない。

 その代わり誰も守ってくれない。

 モンスターのいるこの世界では誰からも守られずに生きるのは簡単ではない。


 今回、俺や馭者の人たちは商人からの依頼という事で街を出て領都に入る。

 商人はテサーラの街を出る時にはチェックだけで、領都に入る時に税金を払う。

 帰りは逆になるだろう。


 俺は冒険者のタグを見せて街の外に出た。

 個人的にちょっとやりたいことがあった。

 街の外で『転移門ゲート』の出口の設定をする。


 別の場所でゲートを開くと以前設定した出口の一ヶ所を選んで転移できる。

 そのままゲートを維持すればゲートを開いた場所に戻ることもできる。

 ゲートを往復するとゲートは消えてしまう。

 転移できるのは俺のパーティに設定されているメンバーのみ。


 転移門の出口は最初に異世界に来たあの丘の上の木の所がいいだろう。

 ここが始まった場所だからな。


 2台目の荷台に潜り込んで街から少し離れた時に倉庫からスケルトンを出した。

 とりあえず『ノーマル』12体、『ガーダー』4体。

 一番前に『ノーマル』2体、各馬車の両サイドに1体ずつ、殿に2体。

 ガーダーは各馬車の前に1体ずつ。

 取り敢えずこれで行く。

 次の休憩で馬車の上に『アーチャー』が乗せられないか試してみよう。


 退屈凌ぎと言ってはあれだがこれまで貯めてきた未鑑定品。

 これを処理していく。

 全てが魔法がかかった装備品だがめぼしい物は……


 ・『破壊不能』の付いたナイフ

 ・『HP増加+30』の付いたベルト

 ・『雷ダメージ+80』『雷耐性+50』『知力+27』セットアイテム【虎皮のビキニアーマー】1/3

 ……最後のヤバい奴じゃないか?

 鑑定で製作者を調べる。

 製作者:ルーミック=ハイブリッジ……激ヤバじゃねえか。

 備考:脱がせた異性を好きになる呪いがあると言われている。

 ……封印。

 ナイフはメンテナンスフリーの包丁代わりに、ベルトはそのまま装備品になりました。


 途中で何回か『雉撃ち』をしたり、馬を休ませたりしながら今日の旅路を終えた。

 夕方に見付けた野営地跡をそのまま野営地とする。

 馬車を4台円形に並べて襲撃を受けた際の盾にする。

 スケルトンは馬車の外で警戒させる。


 桶を用意してもらって『水作成クリエイトウォーター』する。

 馬への水やりである。

 それ以外にも水がいるようならクリエイトした。


 俺はスケルトン1体と林に入って木を切ってもらう。

 疲労が無いってのは便利だよね。

 切ってもらった木を『乾燥ドライ』で乾燥させる。

 それを薪にするために更に斧で割る。

 出来た薪は倉庫に放り込む。

 これでしばらく薪は大丈夫だろう。


発光ライト

 陽が落ちて暗くなってきたので明かりを灯した。

 馬車に囲まれた中で軽く食事を取る。

 本当に軽くだった。 

 黒パン、塩漬け肉と野菜のスープ、チーズ。


 食事が終わるとそれぞれがやりたい事をして過ごす。

 楽器を弾き始める者、歌を唄う者、お酒を飲む者、昔を語り出す者……

 俺はと言うと……

「はっ!ふん!やーっ!!」

 昨日初めて手にした鉄のクォータースタッフを早くモノにするべく修練を始める。

 相手はスケルトンが担当してくれる。

 俺は右手にハンディがある分少し動きがぎこちなくなってしまうところがある。

 そこを克服するために少しでも体を動かして通常に動作できるようにする。

 そのために可能な限り修練を課している。

 玄人プロはどんな時でも最高のパフォーマンスを出せるように修練を欠かさない物だ。

 よぉ~し、乗ってきた。

「はりゃーっ!のりゃ!ほいっ!!」

「はにゃ!とりょ!ほいさーっ!!」

 ……


 一通り修練を終えて戻るとみんなもう休むという。

 希望者に浄化、水作成で水をあげると喜ばれた。

「一般魔法でも使えれば便利だねぇ」

 本当にそう。マジで便利。

「そういえばみんなはどこで寝るんですか?」

 みんな馬車の荷台で寝るらしい。

 俺は?他の冒険者はどうしてるんですか?

 聞くとテントを建てたり、天気に問題が無い時には馬車に囲まれたスペースで毛布に包まったりらしい。

 出来れば中央に明かりが欲しいとの要望を受け入れ、中央で毛布に包まる。

 ライトの点いた水晶球はそばに地面に刺した小さなY字型の枝に引っ掛けた。


 これで準備はいいかな。

 では、おやすみなさい。


 今夜も、月が綺麗ですね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る