第25話 領都グリンウェルへの旅路4日目
4日目の朝が明けた。
昨日の天気が嘘のように晴れ渡っていた。
地面に残ったぬかるみも、それ程経たずに乾いてくるだろうと思われる。
昨日の遅れを取り戻すべく出発を少しでも早めるため準備も急いで行った。
道路には所々に水たまりが残っていたが、馬車は水たまりを避けて進んでいく。
馬車の列は順調に進んでいた。
昼の時間に近づいていた頃、街道の前方の左側に木々が集まって森の様相を見せ始めた。
その木々が騒めいたと思った途端、馬車に向かって何かが飛びついてきた。
棍棒を持った猿の様だった。
猿に遠慮は必要ない。スケルトンに攻撃を指示、自身も
馭者と商人には当初の打ち合わせ通りに馬の間に入ってもらい、一人一頭の馬を暴れないように抑えてもらい、ガーダーで馬の頭をガードしてもらう。
視認出来た範囲では十数体の猿が攻撃してきていることが分かったが、『鑑定』したところこいつら『ワイルドモンキー』って言う名前みたい。
悪い予感しかしねぇ。
大体、武器を持った時点でワイルドじゃねぇし。
『ワイルドモンキー』は1体1体で見ればそんなに強いモンスターって事もない。
冷静に1体ずつ仕留めていけば……
怖いのは上の方向からの飛びつき、複数体での一斉攻撃だが、今回はスケルトンの方が数が多い。
『戦いは数だよ兄貴』と偉い人も言っているように、相手より有利な数を集められなかった時点で戦略的には負けているのだよ。
半数位を倒したところで左の森からひと際大きな影がこっちに向かって飛び込んできた。
咄嗟に大きく飛び退きながら見ると大きな影は3mを超えるゴリラの姿をしていた。
「rfhjfhsfgbvghんmきpkkわ?」(お前が狼王を倒したって人間か?)
うん、何言ってるかわからん。
前と同じパターンだがしゃべっている内にやっておしまいと『一斉攻撃』を指示する。
現在の状況がほぼ3対1になっているので、ワイルドモンキーに対して飽和攻撃を仕掛けて一気に殲滅を狙う。
「dtくmhrボリバルいk、hgfdwzysえいdzqふxぃk!」(俺は猿王ボリバル様だ、あんな奴でも仲間だったんでな仇は取らせてもらうぜ!)
あと少しでワイルドモンキーを全部倒せるのでちょっと時間稼ぎでもするか。
「クックックッ、ハッハッハッ!ハァーッハァーッハァー!!愚かな!あまりにも愚かだぞエテ公!!」
「jhdr?てょうytれsぁxchfkjhgfdせrt!」(何?何を言っているのか分らんではないか!)
レベルアップのファンファーレも鳴ったし、そろそろモンキーは全滅かな?
じゃあ次に行こう。
「あれを見よ!お前の最後の部下がもう倒れてしまうぞ。助けなくていいのか?」
卑怯かなと思いつつ、攻撃を続ける。
勿論スケルトンにも攻撃を続けさせる。
「えfひ!lkbrtyぎおp;。、じゃsqwdf」(馬鹿な!俺はこんな所でやられる訳にはいかないんだ)
「悲しいけど、これ戦争なのよね」
逃げ出そうとするエテ公に最後に放った火矢が吸い込まれる。
エテ公の背面で小さな爆発が起こった。
「ユニバーーーーース!!」
ちゅどーーーーーん!!
多分クリティカルなんだろう。
エテ公……いと哀れなり。
周囲に動く者が無いのを確認してから警戒を解く。
エテ公を倉庫に収納し、スケルトンが2体倒されていたのでモンキーの死体から2体を召喚。
他の13体のモンキーの死体も倉庫に入れておく。
MPをたくさん使ったのでちょうどワイルドモンキーのドロップにMP回復ポーション(小)の青い液体の入ったポーションがあったので飲んでみる。
栓を開けると『キュポンッ』といういい音がした。
ビンに口を付けて一気にあおる。
『ジュワッ』
「ウグッ!エホッ!ゲホッ!」
喉に溢れる刺激が襲う。
ビンの中に残ってた液体がシュワシュワしている。
何だこれ?何で炭酸入っているんだ?
まだ喉をエホンゴホンさせながら、意味不明な液体を見ている。
しかも甘い。
ラムネ味の炭酸飲料がMP回復ポーションってなんだよ?
半分以上吹いちゃったじゃないかよ。
もしかしたら他のも?と思って調べたらHP回復ポーションは赤い色でアセロラ味の炭酸飲料、HPMP両方回復するポーションは紫色でグレープ味、解毒ポーションは黒っぽい色でコーラ味、他にも色々ポーションがあるが全部炭酸飲料になっている。
なんでも、炭酸が抜けていると効果が無くなるそうだ。
カロリーも高いらしく『駆け出しの魔法使いは太る』と言われる原因になっている。
安くは無いから『子供たちの間で解毒ポーションが人気』とはなっていないみたい。
はぁ、もういいや。
馭者さんと商人さんに被害状況を聞いて、特に無いと聞いて出発する。
まだ今日は半分以上移動しないといけないからね。
その後、イノシシがうろついていたので『
9人では食べきれなかったので明日の晩にも登場予定だ。
猪骨は貰っておいた。
良い出汁が出るかな。
夜、空を見上げる。
赤い方の月が大きさが結構変化する。
今夜の月は5日前よりも大きく見える。
月のことについて『異世界知識』は何も答えを返さない。
この世界の人々は天文学について大きな考え違いをしている。
この大地が平面だと思っているのかな?
寝ている間に夢を見た。
3年前美樹と夏祭りに2人で出かけた時の風景だろう。
まだ2人が当たり前に同じ時間を過ごしていた。
ずっと続いていくことを望んでいた。
終わりがあるなんて事、考えたことも無かった。
夢の中、2人で見上げた空にはいつまで経っても花火は咲かなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます