第18話 クエストの報告

 ギルドの入口をくぐるとカウンターに向かう。

 受付には残念な方が座っていた。

「あらユウキさん、今日はクエスト?」

「あぁ、今朝受けたクエストの終了の報告にね。後、外に置いてあるんだが毛皮だけでも買い取れないかなと思ってね」

 パシリアさんは一瞬『ん?外?』みたいな顔をしたが、

「外ね。確認するわ」

 と言うと後ろに向かって目配せして他のスタッフを確認に行かせた。

「クエストは……モンスターの死体4体ね。練兵場の隅にでも置いてもらおうかしら」

 俺の持っている物を確認してサイズに想像がついたのだろう。

 ついてきなさいとばかりにカウンターを出て、奥の通路から訓練場へと向かった。

 俺に異論は無かったので素直についていった。


「ここにお願いするわ」

 訓練場の片隅に来るとそこを指し示す。

 その姿が実に様になっていた。

 左手を腰に当てて右手を斜め下方に向けて指を指す。

 まるで『そこでお座り!』と言わんばかりの姿だ。

 やはりドSなんだろう。


 俺はリュックサックを背中から下ろすと、リュックの口を開け逆さまにした瞬間にその下に倉庫から狼の死体4体を取り出した。

浄化クレンズ

 リュックを綺麗にしたというポーズを忘れない。

 死体を分かりやすく並べて4体ある事を確認してもらった。

「確かに4体ありますね。ではクエストはこれで完了です。カウンターへお越しください」

 パシリアさんは俺に背を向けるとカウンターに向かって歩き出した。


 カウンターに着くとパシリアさんは『クエスト発注中』の箱の中から1枚の羊皮紙を探して取り出すと『完了済』の判を押してサインをしていた。

 その羊皮紙を会計係?に持って行きお金を受け取って持って来た。

 仕事が速いなぁ。

 カウンターの席に着くと、

「タグを出していただけますか」と催促した。


 促されるままに首からタグを外してカウンターに置くと、パシリアさんはそれを受け取って例の石板に置いた。

 石板の上をパシリアさんの指が走ったと思ったら、

「クエストの報酬、2000Gです。タグの記録も完了しました。お疲れさまでした」

 美人なんだけどなぁ。

 惜しいよなぁ。

 ドSでさえなかったら……

 俺はお金とタグを受け取った。


 パシリアさんが入口を見ている。

『遅いなあ』と言う顔をしている。

 そうしていると奥からギルド長が慌てた様子でやって来た。

「搬入口に『アレ』を置いたのはお前か?」

「アレというのが狼なら俺ですが……」

 ギルド長はちょっと困った顔で、

「どうやって運んだんだ?」と、本当に聞きたいこととは違うことを聞いてきた。

 聞くのが怖い事ってあるもんね。

「荷馬車を依頼しました。街までは偶然通りかかった馬車に手伝ってもらいました」

 時空間倉庫を隠すために噓をつく。

「そうか……でだ、あれは何か言ってなかったか?ガルダスとか名乗っていなかったか?」

 聞きたかったのはこっちだな。

「あぁ、ガルダスって言っていたな。他は聞き取れなかったけど」

「やっぱりか。間違いなさそうだな」

「知っているのか、グリシェルド」

「うむ。奴は狼王ガルダス。獣王四天王の一人で素早さでは四天王の中でも一番と言われている。最近、南西の草原に住み着いたという話で昨日警戒情報と討伐依頼を出したところだったんだ」

 エマーリアさん、どういう事?

「そんなことがあったのか。でもアレがガルダスで間違いないか?よく似た別のやつとか?」

「あんなに大きい狼が他にいるわけがない。それに……」

「それに?」

「それに奴の付けていた首輪のプレートに『がるだす』って記されていたからな」

 首輪ってめっちゃ飼い馴らされてるじゃねえか。

 首輪なんか着けていたのか、毛に埋もれて気付かなかった。

「討伐依頼は取り下げるとして、問題はお前さんをどうするかだな」

 何だ?何か悪い事をしたか?

「何が問題なんだ?」

「討伐依頼はAランクのクエストだったんだ。ニュービーが受けるランクじゃなかったんだ」

 良かった。

 大した問題じゃなさそうだ。

「倒しちまったもんは仕方ないだろう?」

「まぁそうだな。よし報酬はそのまま払おう。貢献ポイントは大部分余らせちまうが、ギルドランクはEに昇進ってことにしよう」


 ギルド長はパシリアさんに指示を出すと、俺を見てニヤリと笑った。

「さて、生贄も届いたみたいだし今日こそ見せてもらおうかな」

 俺はパシリアさんにもう一回タグを渡しながら、ぐったりとした気分になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る