第16話 草原の主

 テサーラの街の西の街門から街の外に出るとしばらくは麦畑が続いていたが、1時間程過ぎると突然途切れて草原になった。

 そろそろ大丈夫かな?と思い倉庫からスケルトンズを取り出す。

 12体のスケルトンズが俺の周囲を警戒しながら固めている。


 実は召喚したスケルトンとの間には、そんなに強くはないが意思の疎通ができている。

 平穏や警戒感、危機感といった感情が返ってくる。

 それを受けてフォーメーションを変えたりする。

 今はまだ細かい位置の指定はできていないが、今後スキルの取得により可能になっていく予定である。(本人はまだ知らない)


 エマーリアさんに聞いた南西の草原地帯に到着した。

 草原の中へ分け入ってみると思ったより草の丈が高い。

 腰くらいの高さまでが草に埋もれてしまう。

 グー〇ル先生によると一般的なワイルドウルフの大きさは体高で約50cmである。

 ほとんど草に隠れて見えない。


 状況はかなり悪い。

 風でも吹けば草の下で何かが動いていても分らないだろう。

 ウルフは匂いとかを嗅ぎ分ける能力とか強そうだし。

 一層の事、燃やすか?

 ん~、消すのも大変か。

 環境問題とかもあるし。

 山火事とかになってしまうと大事だし。


 う~ん、正攻法しかないか。

 倉庫からクォータースタッフを取り出し、街道から離れて草原の中央の方に向かって踏み入った。

 しばらく歩いて行くと警戒なのだろうか?

 ワイルドウルフの物と思われる遠吠えが聞こえだした。

 効果があるか分からないが一応やっておくか。

消臭デオドライズ

 身だしなみのつもりで取得したのだが効果があるのだろうか?

 もう事前にできることはなさそうなので遠吠えがしたと思われる方向に歩き出した。

 

 少し歩いてちょっとした丘の上に登った。

望遠テレスコープ

 高いところに登って見渡せば敵が見つかるかもしれないと思ったら、間違いではなかったようだ。

 少し離れた場所にひときわ大きなオオカミが一体、鎮座していた。

 おそらく3m程もある巨体は草では隠せなかったのであろう。

 どうやら向こうも俺たちに気付いたようだ。

 300m位はまだ距離があるのだが流石と言うしかない。


 こちらに攻めてきてくれるなら丘の上で防衛するのがいいだろう。

 スケルトンで2重の輪を作るように配置し待ち構える。

 先程見た敵に近い方から接敵すると思っていたら、ウルフ達は風下からやって来た。

 やっぱこいつら油断ならねえわ。

 ウルフ達は丘の坂を駆け上ってくる勢いのまま跳びかかってきた。

 待ち構えるスケルトン達はその攻撃を盾で防いだり、躱しざまシミターで切りつけたりしていたが、スケルトンの何体かは噛みつかれていた。

火矢ファイヤーアロー

『コンソール』の機能を使って俺のパーティに組み込んでいたり、スケルトン等の従僕には同じパーティ、従僕の攻撃がダメージを与えないように守られている。

 所謂、フレンドリーファイアは起こらないのである。

 俺の放った火箭は敵のウルフを的確に打ち抜いていった。


 敵の4体を倒したところでファンファーレが……うるさい。

 それどころではない。


 その時噛みつかれた3体のスケルトンから意思の伝達が来たが、何だこれ?

 困惑?の意思が届いた。

 何で?と思って見てみたがウルフが足や腕に噛みついているように見える。

 見えるんだが、ん~んん?

 こいつら尋常じゃない量の唾液をまき散らしてやがる。

 スケルトンの顔を見ると何か言いたそうだ。

 なになに?こ・い・つ・ら・す・ご・く・しゃ・ぶっ・て・く・る。

 ……

 ワイルドウルフなんて言っているが、お前ら飼い馴らされているんじゃないだろうな?

 俺の経験則から言うと自分でワイルドだろ~って言う奴は全然ワイルドじゃない。


 もういい。

 サッサと片付けちゃおう。


 俺はファイヤーアローを連発し、時に俺自身に襲い掛かってくるウルフをクォータースタッフで突いたり払ったりして、12体いたワイルドウルフの8体を倒した所に奴が来た。

 近くで見るとやっぱでけぇ。

 しかも威厳?威圧感?みたいなものも纏ってやがる。

 こいつはかなりやる奴だ。

 オーラを感じる。


「dfghjkぃうytrfgghn!」(とうとう儂を引っ張り出しちまったな!)

 何か言ってるみたいだが分らん。

 こいつがLAWの神の加護を受けていないのだろう。

「fdふytれsdいg、fhsfgガルダスhjんbvc!」(儂は獣王四天王の一人、狼王のガルダス様よ!)

 まだ何かいってるな。

 ちょうどいい、今の内にスキルのレベルアップしてやろう。

 12体いたウルフの4体目を倒した時に更にレベルアップしてレベル6になっていた俺は、スケルトンを強化するべく『アンデッド強化』のスキルレベルを20まで上げていった。


「……drtfjkjhgf!……jbん?……jygr!、jygr!、djkhtrf!?」(……は獣王の中でも最強!……うん?……おい!おい!聞いているのか?)


 スケルトンは強化のスキルレベルが上がる度に、骨太になったり装備が錆びていたのが新しい装備を地中から取り出していったり、見るからに強くなったり……何か牙や角まで生えてきた。

 すげーーーーーーーっ!!

 何か話が終わる前に他のウルフ全部倒しちゃった。

 ファンファーレも鳴ったし。


「dg?rくいkfdsvhjほhgjgfhc?」(あれ?儂の部下どもはどこに行ったんだ?)

「何言ってるか分かんねぇんだよ。どうでもいいからお前も逝っとけ!」

 スケルトンに攻撃を指示。

 襲い掛かる凶悪な姿になったスケルトン12体。

 3分持たなかったな。


「ふふふ、djhvbんきkjhgfsfvg!dtgdfhjhんbdfvbhh……」(フフフ、他の四天王がお前に襲い掛かっていくぞ!首を洗って待っているがいぃ……)

「だから、分らんて」

 大きい狼を倒した俺は周りの惨状を見て、比較的キレイそうな4体をクエスト用に残して、大きいのは素材用になるかな?とそれらを倉庫にしまった。

 倉庫を見ると大きいのの落としたレアアイテムが入ったみたいでちょっと嬉しい。

 残った8体はスケルトンにした。

 これでちょうど20体になった。

 そうそう、召喚するときに弓兵みたいなスケルトンをイメージしたらスケルトンアーチャーが召喚できた。

 で、バリエーションとして大きなシールドだけを持った『ガーダー』2体と『アーチャー』2体とグレートソードを持った『グラディエーター』を4体召喚した。


 戦いが終わった時点で昼を過ぎていたので軽く買ってあったパンに肉串の謎肉を挟んで食べた。

 謎果物も皮を剥いて食べた。

 少し酸味があるがうまかった。


 ちょっと食休みしたらいい時間になったのでテサーラに向かって帰路についた。

 途中ワイルドウルフが4体、敵討ちのつもりか襲い掛かってきたがスケルトンズの敵では無かった。

 4体の死体は倉庫行きになった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る