第4話
煙い、臭い。なんで煙草なんて吸うのかしら。
加代子はコチラに流れてくる煙草の煙にうんざりしながら男を見た。
丁度その時店内から一人の男が同じように煙草を吸いに出てきた。
あ! 鈴木君だ。見覚えがある。
鈴木は先に煙草を吸っている男を一瞥したのちコチラを見たが何も反応しなかった。
え? まさか気づいていない?
加代子はやはりという思いがあった。名前を思い出せとは言わない。だがせめて、
「あれ? 誰だったかな? 同じクラスだったよね?」
程度の言葉は期待していた。
期待は見事に打ち砕かれた。
やっぱり帰ろうかな……
この件が決定的になった。
男は帰るタイミングを計りながら2本目の煙草をパッケージから取り出し火を付けようとした時だった。
先程の鈴木とは別の男女4名程が席を立ちコチラの入り口に向かって歩いてくるのが見えた。
まさか? 煙草吸いにくるの? 4人で?
男はそう思い反射的にまだ火を付けていない煙草を灰皿に捨て思わず店の看板裏に身を隠した。
先程の鈴木に気付かれなかった事でもう皆の前には顔を出せない事が彼の中で決定したからだ。
看板裏から煙草を吸いながら談笑している男女の様子を覗おうと顔を出した。
あれ? 先程一人で立っていた女性が……
いた! 彼と同じように反対側に立つ生ビールののぼり旗の裏に身を隠している。
俺と同じ行動しているな……
男はいよいよ彼女も自分と同じ境遇なのではないかと疑い始めた。
4人が煙草を吸い終え店の中に消えていく。すると先程看板裏に身を隠した男がまた現れた。
この人も私と同じ様に隠れたの?
加代子は思った。
でもなぜだろう? 私には隠れる理由がある。もう私の事を誰も覚えていないだろう。そんな所に私が混ざっても気まずい雰囲気になるのは目に見えていた。
しかし、この男はなぜだ……私の様な人がもう一人いるなんて考えられない。
加代子はそう思いつつも、
でも同じ境遇だったらちょっと親近感だな……
と都合良くも思った。
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