鳩居鵲巣
独立都市デバンドを形成する十二の街の中で唯一外部から頂上へ通じる交通網が無い街、ワグサムーーーーー
デバンドの最奥に位置し、外周に列車用では無く対空装甲列車の線路に囲まれ、その外周もデバンド鉱の発電する特性及び再結晶化するデバニウムの特性を応用して開発された、最新型デバニウムリアクターによる電磁フィールドで頂上ワグサム家の敷地まで完全に守られている、またワグサム家の敷地は総司令部も担っている為、非常時には屋敷ごと最下層部のシェルターまで移動可能である。
この防衛システム、及び最新型のデバニウム兵器を保有するデバンド防衛軍の軍事力はこの世界で随一を誇る。いつの日か世界中の人々からは要塞街ワグサムと呼ばれるようになった。
その内部は一般の住民はおらず、全て防衛軍の施設及び一部高官の居住区となっている。
その要塞街の入り口の前にはノクトゲートと呼ばれる砦が構えており正規の軍による検問を通過なければならずら何人も侵入する事は出来ないと言われている。
ーーーーーこれは防衛軍から宣戦布告が出される二時間ほど前の事である。
「ナウラ閣下、ここがこの都市の軍隊で御座います。」
「ほう、これはなかなか立派な軍備ではないか」
要塞街の防衛設備、ノクトゲートに配備されている軍隊の統制などを遠目から観察して、肩に大きめの梟もどきを乗せた濃紺色の軍服の男が言った。
「この世界の文明レベルから考えると一時代先を行っております。」
「ふむ…バキアよ、一方的なゲームはつまらんぞ?」
「なれば
「なるほど、武の理と数の理の勝負と言うわけか…確かにこの軍備でどこまでやれるか…なかなか血湧き肉躍るゲームが出来そうだな…」
「ご同意頂き、ありがとうございます、まずはこの街に宣戦布告をし、
「バキアが感知しきれんとは…よほど成り立てか、宿主の本質か…」
「恐らくその両方でございます。まずこの都市を封鎖して、逃亡できない様にした後、感知範囲を絞っていきたいと考えます。」
「良かろう、では行くぞ」
「ご随意に」
軍服の男ナウラは厳重の警備体制が敷かれた砦に向かって堂々と歩を進めていく…
だが、ゲートの監視室にあるモニターにはその姿は映っていなかった。
デバンド防衛軍で支給されている軍服は黄土色である、遠目から見てデザインまでは見えなくとも、明らかにナウラの軍服は異色である。
ゲートの百メートルほど手前まで歩みを進めたナウラを姿を発見した軍人がギョッとした顔をして周りに何かを必死に伝え、ナウラの元に警備中の軍人達が続々と集まる。
「アシマ総司令に敬舞!!!」
「「「我ら!デバンドの守護神なり!!」」」
集まった軍人達はナウラをアシマとして認識し、乱れ一つ無い統制の取れた小銃の型を披露し、敬意を表す。
「うむ」
ナウラはさも当然の様にそれを受け入れてゲートをくぐる。
バキアも自らを
そしてこの中では階級の高そうな男がナウラに質問をする。
「アシマ総司令、ランドシップはどうなさいましたか?」
「ふむ、ランドシップ…それは乗り物か?答えろ」
「ハッ!ランドシップとは、モスト重工が開発した、地上用機動艦であります!」
「なるほど、用意しろ」
「ハッ!承知致しました!!」
この軍において当たり前であろう知識を知らないナウラに対しても、なんの疑問も抱かず説明をするその男はすぐさまノクトゲートに配備されているランドシップを部下に用意させた。
「ほう、これはまた面白い艦だな」
ナウラの元に四トントラック程の大きさで、電磁力によってわずかに浮遊しながら流線型の装甲艦が到着した。
「アシマ総司令!お待たせ致しました!!こちらへどうぞ!!」
先程の軍人がランドシップの側面から降りてきて、ナウラを案内する。
「基地内どこで乗り捨てて頂いても回収致しますので、御自由にお使い下さい!運転は総司令がなさるのでしょうか?」
「ほぉらこれはなかなか快適だな、貴様名はなんだ?」
「私はトッシュ・メンデス曹長であります!!」
トッシュ曹長は一層引き締まり、光栄に肌を泡立たせて名乗る。
「ではトッシュ、貴様が運転だ、司令部まで連れて行ってくれ」
「!!?も、申し訳ございませんアシマ総司令!私には司令部エリアに立ち入る権限を所持しておりません!!」
「構わん、吾輩が許可する」
「な、なんと…!ハッ!光栄の極みで御座います!!!!」
総司令に名乗る栄誉、そして名を呼ばれる栄誉に加えて、本来であれば佐官クラスで無ければ頂上階層に立ち入る事すら出来ない総司令部への帯同許可、トッシュ曹長は本来であればあり得ない事が立て続けに起こり、人目さえなければ感激に咽び泣く所であった。
「では、出してくれ」
「承知致しました!!!」
トッシュ曹長はこれを機に高官に取り立てて貰えるかもしれない妄想を噛み殺しつつ、要塞街内部にあるエレベーターへと向けてランドシップの操縦桿を握った。
要塞街内部ではそこかしこにランドシップもさることながら、その他のデバニウム兵器も多数格納されており、中央のエレベーター前は更に厳重な警備が敷かれている。
「アシマ総司令、このまま重機エレベーターで司令部まで向かわれますか?」
「いや、降りて行く」
「承知致しました!ではドックにランドシップを格納致します!」
「ああ、わかった」
ナウラはランドシップ毎頂上まで移動可能な重機エレベーターを使用せずに、歩行者用のエレベーターを使用することにした。
「トッシュ曹長、頂上まで直通のエレベーターはあるか?」
「申し訳ございません!直通のエレベーターが存在するか否かは私は存じ上げておりません!」
「ふむ、では曹長の知るエレベーターで行けるのか?」
「ハッ!アシマ総司令、私の使用するエレベーターは上層で検問を通れば頂上まで移動可能です!」
「なるほど、わかった行くぞ」
「ハッ!」
ナウラはトッシュ曹長に質問をした後、エレベーター前の検問へと歩を進めた。
トッシュは駆け足で検問へと向かう、検問警備の軍人が駆け足で近づいて来るトッシュに気付き敬礼をする。
「俺に敬礼はいい、それよりも今すぐ警備任務の者全員集合、整列だ!」
「ハッ!<プァーーーーン!!>警備任務中の全隊員!即時集合!!」
その者が笛を鳴らし集合をかけると、警備に当たっていた者達がまた統制の取れた動きで集合、整列する。
「うむ、こちらも見事な練度だ、司令官の質の高さが伺える」
「アシマ総司令に!敬礼!」
トッシュ曹長の号令に合わせて全員が敬礼をする。
ーーーーーいや、全員では無かった、ただ一人敬礼をしていない者がいた。
敬礼では無く形礼、形だけの礼をしながら困惑していた。
「何だ…?みんな…何を…?」
その者の名は「サモア・ワグサム」ワグサム家の三男であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます