プロローグ② 〜ソキウスの産声〜
―――パチッ、とソウマは目を開いた。
目を閉じて深呼吸をした後、そのまますぐ目を開けた様な、すごく長い時間眠っていた様な
「って、あれ?」
気が付けば見た事のない部屋のソファに座っていた、目の前にはもう一つ同じソファがありそこには少年が座っていた。
「初めまして、ソウマ・ヒイラギさん、僕の名前はアルバート・ペイルです。来てくれて本当に嬉しいです!ありがとうございます!」
アルバート・ペイルと名乗ったその少年は、とても嬉しそうに笑った。
「あ、えーっと…どうもこんにちわ…?」
「ふふ、気分的にはおはよう…かしら?」
クスクスと笑って後ろからソシアが飲み物やお菓子らしき物を乗せたワゴンを押してやってくる。
「ああ、いたいたソシアさん!…確かに目覚めがバッチリの寝起きみたいな感じだな…」
「アハハ!ゴメンゴメン、いきなり知らない子供が目の前にいたら戸惑うよね」
「実はソシアさんの本当の姿なのかなと…」
「あら、想像力も柔軟でいいわね、これから説明するけど、良かったらこれどうぞ」
ソシアはワゴンのお菓子や飲み物を目の前に置こうとする、そこにはまるで初めからあったようにテーブルが現れる。
「おお…これも魔法…?」
「これは魔法じゃないよっ!と」
何処にいたのか、ユヴィがソシアの肩の上に飛び乗った。
「そうですね…一から全て説明するよりもまず…ソウマさん」
アルバートは真剣な面持ちで話を始める。
「あ、はい!」
見た目の若さに反した落ち着き、そして意志の強さを感じさせる眼差しに、どうにも緊張してピシッと姿勢を正してしまう
「ソウマさんが狙われた理由は、ソウマさんには稀有な素質があるからです。それを間違った方向に理由しようと狙ってきた者がいるわけです。」
「それが…あの怪獣?」
「そうね、正しくはあの怪獣を
「えーと、リアライズって事は現実化…?パラディーゾ…なんか聞いた事ある様な…」
「楽園…だね、さっきソシアはソウマさんをここに連れて来る時、あくまでソウマさんの同意を得たよね」
ユヴィがここが肝心だぞといった感じで確認をする。
「うんうん、それは間違いない」
ソウマは大きく頷く
「奴等はそうではなく、貴方を絶望させて、生きる事を諦めれせて無理矢理連れて行くつもりだったの」
「なるほど…それで…怪獣をけしかけて…って事か」
あの迫力で殺そうとしてた訳では無かったのかと、実際殺すつもりで来られていたらどうなっていたかと身震いする。
「そして、ソウマさんを助け出す為に、ソシアがソウマさんの世界へとユニバースシフトした。」
「ユニバースシフト、そうだそうだ、別の世界って言ってたんだ、じゃあここはソシアさんの世界?」
「いいえ、ここはどこでもない
「ソシアの世界とは僕が常に繋がってるけどね!」
ユヴィは得意そうに耳をパタパタさせる。
「し、しんぎゅら…うーーーーん!情報が多い!」
「一気に覚えるのはなかなか大変だね、とりあえずそこも含めてソウマさんにお伺いしたい事あります。」
「伺いたい事…?」
アルバートはより真剣な眼差しで、ソウマを見つめる。
するとそれだけで何故かソウマの鼓動は高鳴り、身体が熱を帯び、ジワリと汗をかく―――――
「今日ソシアがソウマさんを助けた様に、ソウマさんにも同じく誰かを助ける力があるとするなら…どうしますか?」
《―――ドクンッ―――》と鼓動が、いや魂がその問いかけに応じた気がした。
魂が自分を呼んで欲しいと叫んだ気がした。
身体中の毛穴が広がり、何かとてつもない力が自分の中に入ってくる感覚がした。
「そうか…そうだよな…やっぱ心のどっかで、こういう展開を期待するもんな…」
震えが止まらない―――
これが武者震いという奴なのか、魂が歓喜で打ち震えているのがわかる。
「やっぱり、貴方大物になりそうね」
クスクスとソシアが嬉しそうに笑う
「アルバートさん…」
「アルでいいよ」
「そうか…じゃあアル…」
胸の中心辺りをガッっと掴みながら、ソウマは嬉しそうに笑って言う
「それこそ、俺が何よりも望んでいた事だ!」
アルバートもニッコリと笑い返す。
「ソウマさんは、きっとそう言ってくれると思ったよ」
「俺の事もソウマと呼んでくれ」
「わかった…ソウマ――――君の魂に問う」
そう言ってアルバートはソウマの胸に手をかざす。
「君が、絶望に負けそうな人を救う時、希望を掲げる時」
「絶望に負けそうな人を救う時…希望を掲げる時…」
ソウマの胸の中心から透明水の様な球体が現れる
「君の魂は、どんな力で絶望を打ち払う?どうやって人に希望を与える?」
「俺の…俺の魂は…!」
子供の頃から…ずっと憧れていた…
今も、今でもずっと…ずっと…
―――――――俺は!!
「ソウマ・ヒイラギの魂に眠る
球体の形がどんどん変化していき、そして光の粒子になって弾ける―――――――
「ソウマ!!やっと会えた!!」
中から現れたのは…フェレットだった。
そのフェレットはソウマの肩に駆け登り、嬉しそうに飛び跳ねる。
「ああ…!そうだな、メリル、やっと会えたなぁ…!そうか…ずっと一緒にいたんだな…」
ソウマは何故か泣いていた、そのフェレットの名前もわかっていた、詳しい事はわからない、しかし涙が止まらなかった、こんなに歓喜の涙を流した事は生まれて初めてであった。
「おめでとうソウマ」
「おめでとう、ソウマ」
アルバートとソシアも涙ぐんている。
「ソウマ、これで
まだ詳しい説明はされていないがアルバートは涙を拭ってそう言った。
「そうか…これは…不思議な感覚だな、メリルを通じてアルと繋がっているのか…?」
「正確にはアルの
メリルがそう教えてくれる。
「なるほど…そしてメリルと俺の魂が繋がってるんだな」
ソウマは少し思案するとアルバートの知識の中にある必要な情報を認識する。
「これは…ああ、なんでもかんでもダダ漏れって訳では無いんだな、なるほど…」
「そうね、ちゃんとプライバシーは守られるわよ」
クスクスとソシアが笑う
ソウマのソキウス『メリル』はアルバートのソキウス『イーバ』と魂の繋がりを得ている。
それはアルバートの
そしてソキウスは魂から産まれた為、その宿主の記憶を全て蓄えており、その中で本人が深層心理で知られたくない思っている情報以外は共有する事が可能なのである。
「
「そうだね、出来るのはもうわかるよね?」
「そうだな…今はまだまだ
「その辺はソキウスが管理してくれるわ」
「任せて!しっかりサポートするよ!」
胸を張ってメリルが言う…器用な格好だな…
「あとは経験を積むしか
アルバートはもうわかっているよね、といった表情でソウマを見る。
「俺たちは奴等と比べて圧倒的に経験が不足する…か」
「そうだね、奴等はオーウォーがいる世界で無くとも無作為にシフトし、力を乱用するからね」
「最初は私とトレーニングに出る予定だけど、奴等はアル以上にアニマサーチに長けている者がいるみたいなの」
「トレーニング中に襲って来るのも珍しく無いんだな」
目覚めたばかりの力、慣れないまま本格戦闘となると危うさしか無い
「私は普段、
「今はソシア以外の三人が今出てるけどね〜」
やはり基本は猫なのか、ユヴィは後脚で耳…翼?の辺りを掻きながら言う
「あと三人仲間がいるのか」
と、ソウマの脳裏に三人のシルエットが思い浮かぶ
「プライバシーがあるから、詳しい事は実際に会ってからだよ」
「ああ、それは確かにそうだな」
アルバートの言葉に、パチンッ!と指を鳴らしソウマは納得する。
「わ!なんか変わった事するね!」
ユヴィは目を輝かせる。
「ん?これが珍しいのか?」
パチンパチンとソウマは指を鳴らす。
「うん!面白いね!!何の為にやってるの!?」
パタパタと…
「な、何の為に!?いや…そんな大層な理由は無いんだけど…」
苦笑いを浮かべソウマは答える。
「アハハ!…さて、ソウマ、ミッションに出る前に、これだけは言っておくけど、絶対無事に戻ってくる事、これは何よりも優先される事だよ。」
アルバートは真剣な眼差しで言う
「…ああ、わかった」
ソウマは強く頷く
「ソウマ、今日はとりあえず一度戻る?」
メリルがソウマに告げる
「お、そういえばそうだな…そういや学校帰りだわ」
「僕はいつもここにいるから、いつ来ても大丈夫だよ」
「
「うっす!ソシアさんよろしくお願いします!じゃあ、アルまたな!」
ソウマはアルバートとソシアに手を振る。
「じゃあ戻るよ、アジャストタキオン展開、
そういうとメリルの身体は光の球になり大きさを増してソウマの身体を覆う、ソウマ身体が透明な水の様に透け、収縮していく―――――
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―――パチリ、とソウマは目を開いた。
目を閉じて深呼吸をした後、そのまますぐ目を開けた様な、すごく長い時間眠っていた様な…
「えーと、ここは…」
ソウマは少しだけ夢現な頭を振り、自分が砂浜に立っている事に気付き、足元に落ちていた鞄を拾う
「さて…とりあえず帰りますか」
ソウマは駅へと歩き出す。
その胸元には先程まで身に付けていなかった変わった意匠のネックレスがあった。
そのネックレスに一つ付いている宝玉がクスリと笑う様にキラリと光った―――――
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