V.C.T ザ・リアライザー
@syokinuto
プロローグ 〜柊 想真〜
いつも通り学校行って、いつも通り授業受けて、いつも通り帰る、ただそれだけだったはずなんだけどなぁ…
―――なんでこんな事になってんだ?
竜巻が唸りをあげ、雷鳴が轟き、吹雪が視界を遮断する、今目の前はこれまさしく天変地異だった。
「おおおおおおおおいいいいいいおいおいおいおいマジかマジかマジかああああああ!!!!!」
今自分が立っている場所は砂浜―――逃げ場などいや身を隠す場所すらありはしない、であるのに何故まだ自分が生きているのか、それどころか擦り傷一つ負っていないのか…
「ねぇ、少年、お名前は?」
「え!?あ、柊 想真…です…あ!」
どう見ても天変地異を起こしている本人であろうその空を飛ぶ女性から自分の名前を聞かれるとは思わず馬鹿正直に答えてしまって良かったのか戸惑う―――
「とりあえず一般的に見れば、わたしが貴方を助けようとしてるのはわかると思うけれど、どうかしら?」
「ま、まぁそれは…確かに…」
そして目の前に
しかし、ソウマはもちろんその女性にも全く熱線は届いていない、それは女性の目の前に展開されている魔法陣のような物から放たれているとてつもない勢いの水流と相殺しあっているからだ。
「もしかして俺をここに連れてきたのもお姉さんが…?」
「大正解、ここなら被害も少なくてすむでしょ?」
駅で電車待ちをしていたはずが、気が付けば砂浜にいたわけがこれで…いや待て待て、そもそもこんな一瞬でどうやって砂浜まで来たのか…
「それを言うなら飛んだり雷出したりしてる時点で普通じゃないしな…」
色々現実離れし過ぎて最早一周回って何故か妙に冷静になってくる。
「さて、このサイズなら連続では
「うす!もう一生付いて行きます!!」
「この状況なのになんでそんな余裕あるの貴方…大物になるのかしら…」
女性はクスリと微笑し、そして真剣な表情で怪獣に向き直る。
「ユヴィ、一気に決めるわよ」
誰かに話しかけた女性、その足元から透明な水の様な何かが空間を歪め、そして光の粒子となって弾けると、白と緑、二本のトンファーのような物体が出現、そのグリップを握り、先端らしく物を前に突き出して手を合わせる。
「凍てつく白氷、吹き荒ぶ緑風…」
白と緑のその物体それぞれが輝きを放つ、怪獣も熱線らしき物を吐き出す予兆を見せる。
「時まで凍れ―――【
女性の少し前方、トンファーらしき物の先にそれぞれ一つずつ魔法陣、さらにその先に出現した三つの魔法陣から真っ白な波動、その周りには鮮やか極光が渦巻きながら怪獣へと向けて放たれる―――
「うおおぉぉぉぉおぉぉぉおぉぉやべぇぇえぇえぇえぇぇ!!!」
ソウマに衝撃などは来ていないが、その超弩級の迫力に思わず叫ぶ―――
<ーーーーーーー>
――――――――――――――無音
まるで時が止まったかの様に無音だった。
<ゴクッ>
「あ…」
ソウマは、自分が唾を飲み込む音が聞こえた途端にまるで世界が色を取り戻した様に動き出した錯覚を覚える。
そして―――――
「もうビビる事なんか無いと思ったけど、こりゃあ…」
目の前に凍りついたと表現するにはあまりに真っ白な怪獣だった物が立っていた。
「撃退完了よ」
振り向きウィンクをする女性、同時に怪獣だった氷像が現れた時と同じ様に透明の歪んだ空間になっていく
「あ、また…」
そしてその空間が一瞬崩れた様に見えると、フワッと光の粒子になり霧散して消えていった。
「消え…た?終わったのか…?」
「ええ、そうよ、ようやく落ち着いて話が出来るわね」
「はああああああ…ビビり疲れた…って、あー!そうだ!助けてくれてありがとうございました!」
慌ててお礼をするソウマ
「いいのいいの、私は貴方を助ける為に来たんだもの」
「俺を助けに…そういえば俺の名前知ってましたね?どこかでお会いしましたっけ…?」
「その事も含めて話があるのだけど、まずは自己紹介、私の名前はソシア、ソシア・ティベリアよ」
「ソシアさん…やっぱ外国の方か…」
ソシアの外見、絹の様なロングヘアーの金髪に宝石と見間違いそうなエメラルドグリーンの眼、トップモデルの様な抜群のスタイル、どう見ても自分と同じ国の人とは思えない容姿であり、知り合いにも心当たりがあるはずも無い、本来ならそこは予想通りと言えたのだろうが…
「外国という表現は正しく無いわね、私はこの世界の人間では無いのよ」
「この世界…この世界?って事は…宇宙から…?いや、別の世界なら違うのか…?」
「貴方本当に冷静なのね…そんな反応する人会った事ないわ…」
逆に驚かされるソシア
「冷静…っていうかなんだろ、興味が勝っちゃって」
ソウマは苦笑いして答える。
「ソシア、これなら単刀直入にお願いして大丈夫じゃない?」
「おわっ!なんだ…?猫…?じゃないな…」
どこから現れたのかソシアの肩に黒猫に似た、尻尾が三つ、耳が翼の謎の生物がいた。
「あら、この子にはまだ驚いてくれるのね、この子はユヴィ、私の相棒…ソキウスよ」
「ソキウス…」
「あら、行けない、そろそろ隔絶の魔法が保たないわ」
「隔絶の…魔法?」
「そ、今私達の周りで起きていた事に、何も騒動が起きてないでしょ?」
「そう言えば警察も野次馬も勝てないな…」
「これは誰にでも出来るわけじゃないんだ、ソシアが偉大な魔法使いだから出来るんだよ」
エッヘン!と聞こえてきそうな得意顔でユヴィが言う
「と言うわけだから、ソウマ君、その魔法が切れる前に少し私と一緒に来てもらいたい所があるの、貴方の身の安全は絶対に保証するわ」
「偉大な魔法使い…そうか…魔法使いなのか…」
「厳密に言うと魔法使いってわけでも無いし、
「僕がいるからただの人間でも無いけどね」
「あー…ちょっと情報が複雑になってきたな…」
「あ、ごめんなさい、やっぱり詳しく聞いてからがいいかしら、それならとりあえず場所を変えて…」
「ん、大丈夫、着いて行きますよ」
「お、潔いね!」
ユヴィに褒められて、喜んでいい事なのか少し複雑な気持ちになり苦笑い
「ここまで来て夢オチって事も無いだろうし…それなら何が起こってるか知りたいから」
「ふふ…
ソウマは言われた通りに目を瞑り深く深呼吸する。
「ふぅーーーーー……」
「ユヴィ、オーウォーサルヴァ」
「了解、オーウォー確認…サルヴァ」
オーウォー?サルヴァ?聞き慣れない単語が聞こえたと思った所でソウマの意識は途切れた――――
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