第105話 英雄、魔獣を見る
ゴーレムが集まっている部屋の入口まで移動して、中の様子を確認する。
「数が多いですわね」
全部で30体はいるだろうか。
現在は動きを止めて扉の前に鎮座しているだけだ。
「出入口、いっぱいある。追加の、ゴーレムくる?」
六角形の部屋はかなり広い。一番遠い壁から壁まで30メートルはあるだろうか。
大量の敵と広い部屋で相対する場合は相手に囲まれないよう立ち回りに気をつけなければならない。
「可能性は高いだろうな。地下三層で見かける円筒状のゴーレムに形状は似ているが細部と大きさが違うのが気になる」
あのゴーレムより一回り以上大きく、頭部にあたる場所に筒状の物が取り付けられている。
「だが対象を追い込んでそこから出てくるのを待つという行動パターンは同じに見える」
「あのタイプであればいくら数を揃えようと問題ではない。いざとなれば癒やしの力を持つミルフォイルがいる」
頭に布を巻いたミルフォイルが任せてほしいとばかりに頷く。
「だから私の心配は無用だ。任務に集中してくれ。そちらの全員にもミルフォイルのシールドを付与させておく。気休めにはなるだろう」
「助かる。じゃあ、俺たちはシクモアたちに遅れて部屋に入り、扉まで走る。タンジーたちと合流できるまで時間を稼いでほしい」
「ついでにここからの脱出方法も見つけておいてくれると助かるのだがな」
「努力しよう」
ニヤリと笑ったシクモアは両腕を組み、足を開いて叫ぶ。
「
彼女の肢体をアームドコートが覆う。
段の位にあるシクモアのアームドコートは上半身をすっかりカバーし、さらに下半身にも展開されている。
さすがの装腕率だった。
彼女に続いて三人もアームドコートの召喚を済ませると部屋の中に踊り込んでいく。
ライトアームドを纏うシクモアの足は速い。
わずか数歩でゴーレムの後方へ取りつく。
「少しは楽しませろ!」
武装化した腕をひと薙ぎしただけでいくつものゴーレムが弾き飛ばされていた。
ゴーレムはシクモアたちを認識すると揃って向きを変えて戦闘モードとなる。
「壁沿いに走るぞ。遅れるな!」
「はいっ」
三人ともすでにアームドコートの召喚を済ませている。
シクモアたちの戦闘が始まり、ゴーレムたちの意識がすっかりそちらへ向いているのを確認してから部屋に入り、壁沿いに扉へ向かって走る。
派手な音がしたと思うと、再び複数のゴーレムが宙を舞っていた。
どうやら行動不動になるように戦っているようだ。
これなら仲間を呼ばれるまで時間を稼ぐことができるだろう。
シクモアたちをターゲットに定めたようで扉の前にゴーレムは一体もいない。
「スイッチ、ある?」
壁にスイッチらしきものを確認した。
「これだな。開けるぞ。中に入る準備をしろ」
壁の一角が左右に開いていく。
「タンジー! 無事か!」
無暗に飛び込まず、外から声をかける。
だが返事はない。
顔を出して様子を見ると、そこには想像もしていない光景が広がっていた。
「こ、こいつは……」
目の前は闘技場のような円形の広場になっていた。
アーチ状の観客席がぐるりと広場を取り囲んでいる。
俺たちがいる場所は闘技場の広場に繋がる出入口の一つだ。
「ジニア様! あそこを!」
壁際に人影がある。
一人が横たわっており、もう一人がその傍に座り込んでいるようだった。
「ニモフィラ!」
「ジニア!?」
座っている方が頭を上げて振り返ると白銀色の髪が流れた。
ニモフィラは倒れた人物の手を握り締めている。
「シハン! いた!」
ニモフィラたちのいる場所の反対側で戦っているのはヘビィアームドを召喚したタンジーだった。
「あれは……まさか……」
タンジーが巨大な四足獣と戦っている。
体高はヘビィアームドを召喚して立つタンジーよりも高いから見下ろされていた。
頭はたてがみをたなびかせるライオンのもの。
胴体は長い毛に覆われたヤギのもの。
そして尻尾はヘビの姿をしていた。
「キマイラがなんでこんな場所にいるんだ……」
それはまさに魔獣と呼ぶに相応しいキマイラの姿だった。
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