第85話 英雄、三人を評価する
スクラップバーのストックは十分にあるので、ローゼルがグレーパックのみを回収した。
室温や湿度は一定に保たれていたようだし、中身はダメになっていないだろう。最悪、レプリケーターの材料にしてしまえば問題ない。
「ジニア様。わたくしたちの行動はいかがでしたでしょうか?」
「まず全体の評価からだが――」
三人は緊張の面持ちで俺の言葉を待っている。
「合格だ」
「やりましたわ!」
「ほっ」
「ありがとうございます」
「しっかりと状況の確認をしながら先に進められていた。全員の意識を一致させておくことは大切だからな」
「それはジニア様が教えてくださったことですわ」
大切なのは、教えられて覚えたことをきちんと実行できているかどうかだ。
今回はそれがちゃんとできていた。だから評価されるのだ。
「事前に情報を確認してから罠を解除したことや、それぞれの役割を確認してから実行に移したところは特によかったな。基本だが、だからこそ疎かにされることが多い。そういう意識をこれからも忘れないようにしてくれ」
これだけやれるようなら俺がいなくても探索者として活躍できるだろう。
「シショー」
ローゼルが俺の上着を掴んでいる。
「なんだ?」
「どこか、いったら、やだ」
「俺はどこにも行かないぞ?」
見上げるローゼルの大きな目に俺の顔が映っている。
「ほんと?」
「ああ。まだまだ教えなければならないことがたくさんあるんだからな。追い出すって言われても断固拒否するって前にも言わなかったか?」
「よかった」
両手を広げたローゼルが正面から抱き着いた。
心なしか前よりも大きくなったような柔らかいものが俺の胸に押し付けられている。
「ジニア様と一緒に塔へ登ると約束をしたのです。それはわたくしたちにとって努力し続けなければ達成できない困難な目標ですわ。ですから、わたくしたちはジニア様に見捨てられないように自分を磨いていきませんと」
「安心してくれ。三人とも成長が早い。知識も技術も、まるで乾いた砂が水を吸収するみたいだ。これが若さってやつかもしれないな」
言ってから俺も歳を取ったなと思ってしまった。
恥ずかしい。今の発言はなかったことにしてもらいたい。
「ジニアさんも十分お若いと思いますよ」
「そのフォローはありがたく受け取っておくよ」
ササンクアから見れば俺は10も年上だからな。
いらぬ気を使わせてしまった気がする。
「とはいえ、こんなところで満足して貰ったら困るからな。俺たちの目標はティアの言うように塔へ行くことなんだ。それには経験が圧倒的に足りていない。そこを焦らずに、しっかりと積み重ねていこう」
俺の言葉に三人が頷いた。
「じゃあ、この調子で北西外縁部の未踏破エリアを潰していくぞ」
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