第54話 英雄、ゴーレムを語る
「地下三層に入る前に休憩をしておこう」
生配信していたフェアリーアイを止める。
「ここまではいいペースで来ていますわね。体力、魔力、道具。いずれも消耗はほとんどなしですわ。ですが順調な時ほど気を付けませんと。『油断とは慣れていると思った時に起きるものだ』とおじい様も本に書いていましたわ」
「私も消耗はありません。過信はよくありませんが、順調なのはいいことですね」
「ローは、おなかすいた。シショー、ごはん」
「わかったわかった」
レプリケーターを取り出して食事の準備を始める。
ダンジョンでの長期滞在を想定して極力魔物を避けるルートを選んで進んでいた。
最短ルートに比べると時間がかかるものの体力と魔力を温存できる。
時間は限られているが、無理なプランを立ててゴリ押しなどしたら自分たちの命が危険にさらされてしまう。
まずは生き延びること。そして目的を達成すること。
それが探索者たちの心得だ。
レプリケーターで生成された温かなスープを配る。
「食事をしながらでいいから聞いてくれ。過去にスクリーンが見つかったのはこの場所だ」
ブレスレットの地図を表示して複数の場所に印を記入する。
ローゼルは俺がなにも言わなくても自分のブレスレットを同期させていた。
「今までのように一カ所で複数のアーティファクトが見つかるとは思わないでくれ。罠や魔物を考慮して巡回するルートはこうだ」
「地下三層の魔物はこれまでとは異なると聞きましたけど」
「そこはちゃんと調べておきましたわ! 地下三層にはたくさんのゴーレムがいるんですの」
「ゴーレムとはどのような魔物なんですか?」
「ササンクア様は〈
「大会の決勝に進まれたチームですよね。キャプテンがどなたかまではわかりませんけど……皆さん、筋骨隆々でしたね」
「ベアスキン様はその中でも一番体格のよい方なのですわ。肩や胸の筋肉がこんなになっていて、とても紳士的で素晴らしい方なのですわよ。まっすぐで熱血漢なところを評価している探索者もたくさんいらっしゃると聞きますわ。わたくしも塔へ行った英雄として尊敬していますの」
腰に手を当てて胸を張るティアの格好は、マグノリアのキメポーズだった。
体格の違いはあれど、姿勢はよく似ている。
「ゴーレムはそのベアスキン様よりもずっとずっと大きな、見上げるような体をしているそうですわ! そしてその体は金属でできているんですの!」
冗談だと思ったのか、ササンクアが俺を見る。
「事実だ」
「……金属なんですよね?」
「種類にもよるが、ほとんどが金属だな」
「金属なのに動けるんですか?」
「魔物だからな」
巨大な人型のゴーレムもいれば、小さくて人型ではないゴーレムもいる。
出現場所は行動を観察する限り、それぞれに与えられている命令は異なるのではないかとされている。
なお、命令を与えた者が誰なのかは明らかになっていない。ダンジョンにおいても謎の魔物の一つとされていた。
「ローでも、かてる?」
「ああ。ゴーレムは動作の鈍いヤツがほとんどだからな。今のローゼルなら簡単に攻撃を当てられるし、勝てるさ」
地下二層のディープアリゲーターの硬い鱗をぶち抜くことができるローゼルの拳なら十分に通用する。
「だができる限り戦闘は避けるつもりだ。むしろゴーレムは戦うと仲間を呼んで厄介なことになるからな」
どうやらゴーレム同士がなんらかの方法で連絡を取り合っているらしく、気がついたら囲まれていたなんてことがよくある。
特に人型ゴーレムはその連携が優れているので注意が必要だった。
「わかりました。危険は冒さないで済めばそれに越したことはないですからね」
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