第17話 英雄、古い馴染みに会う
「いよぉ、英雄。あのゴールデンロッドに配信が取り上げられるなんてすごいじゃないか」
コツンと俺の頭を小突いたのは老境に差し掛かったベテラン探索者のスノウボウルだった。
「いきなりなにするんだよ。痛いだろ」
「はんっ。そんなわけあるか。なにしろお主はアームドコートなしでミノタウロスを倒したんじゃろうがい。なにかコツがあるんじゃろ。長い付き合いじゃないか。一つワシにも教えてくれんか」
右の手のひらを向ける。
「なんじゃ」
「レクチャー料」
「しがない老人から金をむしり取ろうというのか。このこうつくばりめっ」
笑いながらまた俺の頭を小突く。
「ご老人とはいえ、先ほどからジニア様に失礼ではありませんのっ」
ティアが目を吊り上げている。
「あ、いや、いいんだ。この人はスノウボウル・マーハーンって探索者で、俺が駆け出しの頃によく世話になった人だ。面倒見がよくてな。この人に基礎を教わらなかったら、どこかで俺の体は星になって塔を登っていたよ」
「なにを言う。お主は最初から筋がよかったわい」
「つまり」
ローゼルが小首をかしげる。
「シショーの、シショー?」
「まあ、そうなるかな」
「ふうん」
不思議なものを見るようにローゼルはスノウボウルを見つめている。
それから手を伸ばしてスノウボウルにぎゅっと抱き着く。
「な、なんじゃ!? ワ、ワシ、この子になんか悪いことでもしたかっ」
「シショーの、シショー、でしょ? だから、スノウは、ローの、シショー」
困り果てた顔をしたスノウボウルが俺を見るが、肩をすくめるしかなかった。
「お嬢ちゃん。そういうのはなんというか、その、困るんじゃ。いや、若い子と触れ合えるのは嬉しいんじゃがの」
優しい声音で諭されると、素直にローゼルはスノウボウルから離れる。
そしてなぜか俺に抱き着く。
「わっはっは。お主は随分と慕われておるようじゃの」
「これ、慕われてるって言うのか」
抱き着いたままのローゼルが俺を見上げる。
「シショー、好き」
「おおう、次は愛の告白か。お主も隅に置けんのぉ」
「わ、わたくしだってジニア様のことはお慕い申し上げておりますわ!」
「これはこれは。まさに両手に花ではないか」
自然、スノウボウルの視線はササンクアへ向けられる。
しかしササンクアはなにも言わずににっこりと微笑むだけだった。
「ははっ。なかなかいい仲間が揃っておるじゃないか」
「そうだろ。半年後にはこのチームで塔に行ってるよ」
「そうか。それは楽しみだ。お嬢ちゃんたち、ジニアをよろしく頼むぞ。落ち着いておるようで、意外に抜けたところもあるからの」
三人は信じられないと言いたげな顔で俺を見る。
「なんだ?」
「シショー、すごいよ?」
「今回はほとんどをジニアさんにしてもらったようなものでしたし」
「ジニア様に欠点なんてあるんですの?」
俺をなんだと思っているんだ。
欠点だらけの人間だぞ。
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