第16話 英雄、注目を集める
「まあ、どうせ次の大会は半年後なんだ。俺たちは地道にダンジョンで経験を積んでいくとしよう」
「わかりましたわ」
「ん」
「……そうですね」
『――こんなことをボクが言うのもなんですけど、実は大会の決勝よりも面白い配信があったんですよ。地下一層の南エリアのボスを倒すってやつなんですけど、これがすごいのなんのって!』
ボードに流れていたのはゴールデンロッドの配信だった。
「あれ、ジニア様ではありませんか?」
「本当ですね」
「シショー、すごい。ゆーめー人!」
「ジニア様は元から有名な方ですわよ」
『見てください。これ、アームドコートの召喚をしないでミノタウロスを倒しているんです。信じられますか?』
ざわり、と。
食堂をそんな雰囲気が支配した。
『このミノタウロスの一撃目をそらしたのはガードアームドのシールドでしょうね。しっかりと斧を防いでいます。仲間のシールドがいい仕事をしてますが次のこれ。拳の一撃。これでミノタウロスの腹に穴が開いてるんですよ! なんですかこの攻撃力。ヘビィアームドの一撃だってもう少し大人しいですよ!』
「たしかにあの一撃はすごかったですわね」
「ドカンて、音した。ドカンて」
そんな音してたか?
「あの実況者もササンクアのシールドがいいってほめてるだろ。もっと自信をもっていいぞ」
「あ、はい。ありがとうございます。でもあの配信の主役はあくまでジニアさんですよ?」
『それからこの足技! なんでぶっといミノタウロスの首があれで落ちるんですか! なんか足に仕込んであったんですか! いやー、すごい。地下一層とはいえこんなあっさりフロアボスを倒す配信なんて初めて見ましたよ!』
「シショー、もっとはやく、配信しとくべき、だったね」
「そうしたら今回の貴族推薦をもらえていたのではないかしら」
「だったら惜しいことをしたかもな」
まさかこんな風に取り上げられるとは思ってなかったなあ。
こうやって注目されれば貴族の目にも入り易いし、配信の頻度を上げることは真面目に考えた方がいいかもしれない。
『そしてね、これがボクにとってもすごーく嬉しいことだったんですが。この配信者があの英雄ジニアだったんです!』
再び食堂がどよめいた。
『既に新しいチームを組んで塔への挑戦を始めていたんですね! ジニアがキャプテンを務める新チームの名前は〈
最後をそう締めてゴールデンロッドの配信は終了した。
「早速、配信が取り上げられるなんてすごいですね」
「要注目のチームだそうですわよ」
「やっぱり、シショー、すごい」
満面の笑みでローゼルが抱き着いてきた。
豊かなものが腕に押し当てられているのだが、そういうのは、その、なんだ……すごく困るんだ。
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