第12話 英雄、スクラップバーを得る

「初めてのダンジョン探索でこれだけ引きがいいなんてついてるぞ」


 なんと欲しかったマルチブレスレットが一発で出た。


 鑑定機能のあるメガネで確認してみたところ地図機能しかついていなかったが、ブレスレットはブレスレットだ。


 おまけに地下一層では滅多にお目にかかれないストレージも出てくれたのだから幸運なんてレベルのお話ではないだろう。


 もっとも、それ以外には大量のスクラップバーしかなかったんだが。

 俺的にはそれはそれでよしだ。


「これ、ローのブレスレット。シショーと、いっしょ」


 早速ブレスレットを付けたローゼルはご機嫌だった。


「わたくしがストレージをいただいてしまったもよろしいのかしら」


「私は鏡会から支給されたものがありますから、フォーサイティアさんが使ってください」


「そいつは小型だが荷物を分散して持てるっていうのはチームとしてメリットになる。遠慮せず受け取っておけ」


「わかりましたわ。ありがとうございます」


「悪いな。ササンクアの分がなにもなくて。この棒クズでよければ持っていくか」


「そもそもそれはどういう物なのですか?」


 スクラップバー。通称、棒クズは薄いフィルムに包まれている10センチほどの長方形の物体だ。

 その名の通り外れアイテムとして認識されている。


「一応、食えるぞ。食うか?」


「それはちょっと……」


 そうだろうな。

 大量の棒クズを自身のストレージに放り込んでおく。


「それを持ち帰るんですか?」


「ああ。さっき使ったレプリケーターの材料になるからな」


「……え?」


「さっきは塔で拾ったやつを使ったんだが、お前たちが飲んだシチューの素なんだよ、これ」


 そのまま食べても美味しくない棒クズがレプリケーターを介せばあの美味い料理になるのだからありがたい限りだ。


 しかも棒クズは外れアイテムと認識されているから持ち帰る奴はまずいない。


「どうかされたのですか、ササンクア様。顔色がよろしくないですけれど」


「い、いえ……その…………すみません」


 真っ青な顔をしたササンクアが部屋の隅に駆けていく。


「げえぇっ……ぐうぅ。げええぇぇえっぇ……」


 壁に手を当て、背中を震わせていた。


「大丈夫か?」


「は、はい……ちょっと気分が悪くなってしまいまして。もう大丈夫です」


「そうか」


 ササンクアは大丈夫だと言うが、小さく震える指先や引きつった表情を見れば体調が悪いのは疑いようがない。


 ティアやローゼルも初めてのダンジョン挑戦ということでこれ以上の無理はできないだろう。


「よし。少し休んだら今日は帰ろう」

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