第11話 英雄、ミノタウロスの首を落とす
俺たちの周囲をフェアリーアイが飛び回っている。
せっかくなのでボス戦闘は生配信してみることにしてみた。
南エリアのボスは牛頭に巨躯を持つミノタウロスだ。
巨大な斧は俺たちの背丈ぐらいある。
それをやたら振り回すのでティアたちは迂闊に近づけないようだった。
いくらササンクアのシールドがあるとはいえ不安なのだろう。
自前のアームドコートもあるとはいえ、あの巨斧を前にして怖気づいている。
「ササンクア。俺にもシールドをくれ」
「はい!」
触れなければわからない不可視の盾が俺の周囲に展開される。
「二人とも下がっているんだ。ササンクアのシールドがどれだけすごいか見せてやるからな」
無造作にミノタウロスへ近づいていく。
「シショー!?」
「危ないですわよ!」
鼻息の荒いミノタウロスが上段から斧を振り下ろす。
それをあえてシールドで受けつつ、自分の体は半身にして軌道からは外れておく。
まるで金属同士がぶつかり合うような歪んだ音。
しっかりと大斧を防いでくれていた。
だがシールドも無事ではないようだった。
もう一撃止めるのは難しいだろう。
そのまま足を進めてミノタウロスの上体を押し込んでいく。
『ブモモモモオ――!』
一歩下がって斧を構える。
勢いをつけて振り下ろすつもりなのだろう。
「甘いな」
下がった分、俺が前へ出る。
踏み込みと同時に放った拳がミノタウロスの分厚い腹筋を突き破った。
『ギュウウウ!?』
奇妙な呻き声をあげながら両膝をつく。
それでもまだ見上げなければミノタウロスの頭は視界に入らない。
「よっと」
軽く垂直に飛び、前回りの回転をしつつ踵落としを放つ。
スパンと小気味よい音と共に首を落とした。
首から大量の体液をぶちまけながら仰向けに倒れるミノタウロスの体。
頭は着地した俺の足元にあった。
「ま、こんなものか。以上、地下一層南エリアのボス戦の生配信は終了だ」
フェアリーアイに配信を停止するように指示する。
「ササンクアはもっと自信を持っていいぞ。シールドの硬さだけなら中級どころか上級レベルに達してると思う」
「それはその……ありがとうございます」
「ティアとローゼルは腰が引けてたな。相手がでかいから仕方なかったかもしれないが、前衛は常にプレッシャーに打ち勝つ必要がある。でも自棄になって特攻しなかったのはよかった。自制心も大切だからな」
「ちょ、ちょっと待ってくださいな!」
「なんだ?」
「今の動きは……なにをしたんですの?」
「なにって、踵落とし」
「踵落としであのミノタウロスの太い首が落ちるってどういうことなんですの? ジニア様はアームドコートの召喚をしていらっしゃらないのに……はっ。実はあれがノービススーツの本当の能力なのでは!?」
「ノービススーツにそんな効果はないぞ。身体能力の増強はしてくれるけどな」
だから純粋に俺の肉体だけで成し遂げたことだ。
アームドコートの召喚ができればもっと楽に倒せるんだがな。
「それより魔核の回収をしよう。やり方を教えるぞ」
そろそろと近寄ってきた三人にナイフを渡して魔核の回収作業を教える。
「うん。初めてにしてはまあまあだ」
「血まみれになってしまいました……」
「あんなに血が噴き出るなんて思ってもいませんでしたわ……」
「ベトベト」
「服は仕方ないけどノービススーツを着ていると直接肌に触れないから後処理が楽なんだ」
地下二層みたいに大量の水があれば体を洗い流すこともできるが、基本、ダンジョンや塔で水を確保するのは難しいんだぞ。
「さて、いよいよお楽しみといこうか」
俺が指差す先に宝箱があった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます