第7話 英雄、新チームでダンジョンに挑戦する

「ここがダンジョンなのですのね」


「なんだか、明るい?」


「でも重苦しい雰囲気があるようですね。それに肌寒いような気がします」


「地上に比べると地下一層の気温は低くなっているんだ。もっともノービススーツがあればこのぐらいの気温変化は問題ない。それよりも緊張し過ぎているとすぐにへばるぞ。緊張感は必要だが、過剰なのはよくないからな」


「おじい様の本にもありましたわ。『塔では緊張感を持たない者は死ぬ。持ちすぎる者も死ぬ』と」


 階段からフロアに出る前にストレージにしまっておいたフェアリーアイを取り出す。


「生配信をするのですか?」


「いや、今回は録画だけだ。あとで見直して個人の動きや連携に修正を加えるのは効率がいいからな」


「そういえばジニア様の配信を見かけたことがございませんわね」


「復帰してからはチームメイトの訓練に付き合ってダンジョンに潜ってたからな。今回みたいな内輪で見る用の録画しかしてなかったんだ。練習しているところの配信なんて誰も興味を持たないだろ」


「でも配信をしなければ貴族の目にとまることもありません。塔への推薦を受けるのならなるべく配信をした方がいいと思います」


「そうだな。たまには生配信もするか」


 ペースが遅くなりがちな三人に歩調を合わせる。


「ジニアさん。アームドコートはいつ召喚すればいいのでしょうか?」


「ノービススーツと違ってアームドコートの維持はもって60分ってところだろ。だから必要に応じて適宜でいい。不意打ちされた時にも咄嗟に召喚できるようになっておいてくれ」


「ちょ、ちょっとお待ちくださいな。60分も連続してアームドコートの召喚を維持できるものなのですの?」


「俺がダンジョンに潜っていた頃はそんなものだったぞ。そこまで長い時間維持し続けることは滅多になかったけどな」


 ティアは大口を開けて俺を見ている。


「規格外すぎますわ……おじい様の本にもそんな長時間にわたってアームドコートを維持していた記述なんてありませんわよ」


「だから必要に応じて素早く召喚できることが大切なんだって。魔物と遭遇して戦闘しなければならないとか、崩れた場所を掘り返す時とかなんかに召喚するんだよ。アームドコートはあくまで道具だ。そこを忘れるな」


 地下一層は広大だが、ほとんどのフロアは踏破済みになっている。

 ベテラン探索者なら目をつむってでも次の階段までたどり着けることができるほどだ。


 ダンジョンに初めて足を踏み入れた三人にとってはなにもかもが初めてだった。

 目に入るものすべてが真新しく、ちょっとした物音にビクついている。

 音がするたびにアームドコートを召喚しているが、油断をして全く反応がないよりはいいだろう。


「今回は中央近くにある部屋まで行ってみよう。安全エリアになっているんだ」


 緊張のためか三人とも顔が白くなっていた。


 慎重に通路を進んでいく。

 この先を左に曲がると目的の部屋がある。


「止まれ」


 俺の指示に三人が身構えた。

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