異世界はリアル

@kozzi

第1話 人生上手くはいかない


わかってくれはしないだろうが、目の前に盗賊なるものがいる。あぁ、あの盗賊だ。


なんでだ、俺は駅にいたはず。こんなグンマーもビックリな平原みたいな場所にいる覚えはない。

ドッキリか…いや、そんなの物理的に無理だ。


「あぁ〜あれか、異世界転移ってやつか!?」


盗賊が何か言っている。だが、何を言っているかわからん!こういう時は俺に何かしら力があるに違いない!


『さすが俺、頭の回転早いぃ!』


右手に力を込めて盗賊に向かって手を振るった。


・・・・・・


案の定何も起きない。



「まぁ、うまくはいかないわな。」


盗賊のナイフが太陽に照らされ綺麗に輝いている。やがてそれは俺の胸を目掛けてやってきた。


最近、転生もの漫画やアニメが流行っているようだが、あんな物事はうまくいかない。神様が特殊能力をくれるわけでもなく、美少女が側にいてくれるわけでもない。


「実際はこんなもんだ、クソったれ。」


ある日、突然異世界に飛ばされ俺は死んだ。





俺の名前は「足立 蓮花」。

まぁよくある自己紹介から物語は始まるもんだろ。

今日は大学の友人と駅で待ち合わせをしている。

まったく、誰に説明してるのやら。


「暑い…」


(本日の天気は・・・)

たわいもない街頭モニターから天気予報が流れている。モニターに目を向けようとすると、目が痛い。今日は天気が良すぎる。


行先に目を戻すと、人の群れ。足はくねくね揺れている。


分かってくれ、陽炎と言いたいのだ。


「さておき、今日暑すぎないか、」


ジリジリと肌を焼く太陽に恨みを持ちつつも集合場所に着いた。


バックからスマホを取り、友人に『着いた』と連絡をする。そして、再びバックにしまった。


目を周りにやるとやけにボヤけている。


「陽炎ってこんな近くにできるものか?」


次の瞬間、体を火炙りにあっているような痛みと吐きそうなほどの頭痛に襲われ、意識が途切れる。


「熱中症ってこんな感じかよ」


相変わらず、理解力いいなァ俺・・・


そうつぶやき意識を失った。




それで、転移したと思えば盗賊に襲われ即リタイア。


おかしいだろ!こういうのって特殊能力とか最強の相棒がいるとか美少女が傍にいるとかだろ!


「あの漫画やアニメはフィクションか!」


自分で言っててバカみたいだ・・・当たり前だ、異世界転移=最強になれるという訳でもない。

俺はハズレくじを引いたんだ。


『あれ?異世界で死んだらどうなるんだ?』


ふと当然のような疑問が脳裏を過ぎる。

考えることが出来るということはGAME OVERではないと思う。


「おーい、誰かいるか」


声は出る。だが、人のいる気配は感じないので、呼ぶのは1回で辞めた。


『さて、どうする?こういう時は神様的な何かが来てくれるもんだと思うのだけど、』


その瞬間、目の前に大きな光の玉が現れ、破裂するように周りの闇を払った。あまりの光の強さに目を瞑った。


『お、来たか!ここは定番通りなんだな、』



目を開けると、目の前に女の子?小学生くらい?がこちらを凝視している。


髪がとても長く床に着きそうなほどに長い。

ここまで長い髪を見るのは初めてだ。

目はくりくりしていてエメラルドグリーンの綺麗な瞳をしている。

服装はレースを巻いているだけのような奇抜なファッションをしている。


何より、オタクたちが喜ぶ展開だな。無論私もオタクなのでこの展開は嬉しい。


「えーと」


何から話すか考えながら、声を出すと・・・


<黙れ。>


「えっ?」


待って、今、黙れって言った?言ったよね!?この子見た目によらず、ドライなんだな。


「今なんて言った?」


少しの期待を持ちながら、高確率で帰ってくる返答を頭に浮かべながら聞いてみた。


<黙れ>


やっぱり、分かってましたよ。いやぁ分かっていても傷つくな。今会ったばかりの子に罵倒・・・いや、悪くないかも!?


・・・いかん、いかん間違った道に進むところだった。


なんであろうと、初対面の人に暴言を吐くことはいい事ではない。大人である私が教えてあげなければ。


『お嬢さん、いくら初対面でも黙れなんて言っ』


と言いかけた瞬間

目の前が傾き、次の瞬間には俺の体が見える。







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