第19話 倉庫?

ーー半年前ーー



 シレンと冬樹は一部屋分の大きさがある倉庫の前に立っていた。


「ここか、例の物があるのは」


「うん、そうだよ」


 例の物。それは冬樹が初めてシレンに出会った時に飲ませた回復薬のことだ。シレンはそれを飲んだことで僅かな力を取り戻して、歩けるまで回復し、冬樹と暮らせるようになったのだ。


「ふむ、特別な何かを感じることはないが………?」


「でも、確かにここなんだよ」


「そうか、入ってみてだな。では、開けてみてくれ」


「うん」


 冬樹は倉庫を開いたが、また扉が表れた。二重の扉になっていたらしく結構厳重にされていた。そこでシレンは驚くべきことに気付いた。


(二重という厳重さにも驚いたが、真に重要なのはそこではない! かすかに魔力を感じる!)


 魔力とは、魔法などの特別な力を放つために消費する生命力から作る資源のようなものだ。そんなものが感じられるということは、目の前の倉庫には大きな秘密があるに違いない。シレンの身に緊張が走る。


「冬樹! ここからは気を付けて開けるのだ!」


「え? うん」


(前にも開いたんだけど、何もなかったのに?)


 冬樹はゆっくりと内側の扉を開いた。そして、開かれた先にあったのは、シレンの予想した通りだった。たくさんの箱が保管されてあったのだ。


「………やはり魔法薬の類いであったか」


 二重の扉を全て開いたことで、倉庫の内部から、いくつもの微弱な魔力が感じられる。その微弱な魔力はたくさんある箱から感じ取れるのだ。


(これは慎重に扱う方がいいな。下手なことはしないようにしなければ)


 シレンは倉庫の中に入って、箱を一つ一つ慎重に調べていく。


「ふむ、なかなか手に入りにくい魔法薬の類いばかりか。面白いな」


 箱に保管されてあったのは魔法薬だった。それぞれ効能が違うようで、かなり貴重な物まであった。シレンは興味が深まる。


「魔法薬? それって何なの?」


「簡単に言えば、特別な薬みたいなものだ。おそらく、お前の祖父は魔法薬のコレクターだったようだな」


「これくたー?」


「収集家。集めるのが好きな人間だったということだ」

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