第14話 布団!
(今思えば、神が初めて滅ぼされた時の危機感が足りなかったな。知り合いの神が滅ぼされたと知った時に気づけばよかった。侮り続けた結果が………今の私か)
シレンが初めて危機感を漏ったのは、神々の人数が七人になった時だった。だが、他の四人の神はまとめて倒されてしまったせいでシレンには、自分だけで戦うしかなかった。
(そして、負けた。運良く逃げきれたが全ての力を失った。数年後に人間に助けられるとは皮肉だな。おかげで僅かに力を取り戻したが、本当に僅かな力でしかない)
今のシレンの状態を例えるなら、大きな星から路傍の石ころにまで弱体化している。これでは神らしいことなどできない。人間一人殺めることすら難しい。
(こんなことなら、いっそあのときに………)
「ねえ! もう僕もお風呂入っていいー?」
「! あ、ああ、もういいぞ!」
ネガティブな思いがよぎった時に、タイミングがいいのか悪いのか冬樹の声が聞こえてきた。ハッとしたシレンは大声で答えた。すると、裸の少年が風呂場に現れた。シレンのこめかみに青筋が浮かぶ。
「……無礼な。私は女神だぞ。もう少し節度を持たんか」
「せつど?」
分からない、という顔を見せられてシレンは呆れていしまうが、相手が幼い少年だということを思い出して不問にすることにした。
「いや、何でもない。先にあの貧しい寝室で待っている」
「うん!」
女神の前で子供とはいえ男が裸で現れる。神の前ではとても許しがたい行為だった。ただ、シレンは冬樹に今日一日で結構世話になっていたため、その辺を含めてある程度の無礼は許すことにした。相手は幼子でもあるし、それでもいいと考えたのだ。
◇
寝室に入ったシレンは思わずため息をついた。用意されているのがベッドではなく、敷布団に枕に掛け布団なのだ。シレンはまたガッカリする。
「……寝所も発達してほしかったな。床に布を敷いて寝所にするとは……」
シレンは我慢して布団に入って見た。すると、寝所に対して落胆するほどの悪い評価が一変した。
「思ったよりふかふかだな。寝心地もいい。毛布もあるし、掛け布団の中に羽毛が入っている。温かい。これも感心できるな」
この時シレンは気付いていなかったが、敷布団の下にマットレスが敷かれてあった。翌日にマットレスの存在を知って朝っぱらから驚くことになる。
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