第11話 食事!

 シレンは無我夢中でハンバーグを食べ続ける。口に運ぶ度に味を楽しみ、飲み込むと同時に更にハンバーグを口にする。


 そんなシレンに冬樹が注意をかける。どうやら、シレンがハンバーグしか食べていないのが気になったのだ。


「………ねえ、ご飯も食べようよ」


「モグモグ………ん? なんだと? ご飯?」


「おかずとご飯。交互に食べるのが普通だよ」


「な、なにい!? そうだったのか、何故だ?」


「僕もよく分からないけど、そんな風に聞いたんだよ。その方が美味しいんじゃないかな?」


「な、なんと………!」


 驚いたシレンは、冬樹の言う「ご飯」を口にしてみた。すると新たな衝撃を感じてしまった。


「うまい! うまいぞ! これは美味だ!」


(ハンバーグとはまったく違った味だが、これはこれでうまい! ほのかな甘味を感じる。ハンバーグと相性もいい。交互に食べてみると確かに最高だ!)


 冬樹の言う通りに食べるシレン。彼女は30分もしないうちに夕食をたいらげてしまった。冬樹の視点から見ると、その顔はとても幸せそうだった。


「ああ、美味かった~。こんな気分は久しぶりだ」


「すごく美味しそうに食べてたね。今まで何を食べてきたの?」


「え! 今までか? えーと………」


 シレンは思い返すが、冬樹に出会う前までの食べ物のことは頭に浮かんでこなかった。当然だ。今まで食事の必要などなかったのだから。


(………な、なんて言おうか。今更、実は食事など必要なかったと言えないな。そもそも、食事そのものが数百年ぶりだし………)


 シレンは悩んだ末に、情けないことを口にした。


「じ、実は、人間の食べ物と比べると神々の食事は味気無いものなのだ。味が薄くてな、私もそれで少食だったんだ」


「ふうん、そうなんだ………」


「そ、そうなのだ!」


「神様って、可哀想なんだね」


「ああ、可哀想………んなっ!?」


 シレンは可哀想と言われて衝撃を受けた。神の身分ゆえに人間を「哀れ」と思ったことはある。だが、人間に「可哀想」と思われたことはこれまでなかったのだ。その事実にシレンは悲しくなった。

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