第10話 冷蔵庫と電子レンジ!
かつての自分に従っていた人間達のことを思い浮かべながら思案していたとき、シレンは服の裾を引っ張られた。冬樹の仕業だ。
「ん? どうかしたか?」
「お腹すいたんだけど、一緒に食べない?」
「食べる? ああ、夕飯か」
「うん! 冷蔵庫にまだあるの」
「冷蔵庫?」
シレンは聞きなれない単語を聞いて首を傾げる。冷蔵庫なるものを知らなかったのだ。人間が食材を保管する場所など知りもしないからだ。
「何だそれは? 見せてみろ」
「そこにあるのがそうだよ」
冬樹は台所を指差した。そこには白くて縦長い「箱」があった。気になったシレンは取っ手を掴んで開いてみた。すると、
「むう。これは冷気? 冷やしているのか。なるほど、保存するにはうってつけだな。これなら長期保存が可能だ」
「なんの話してるの?」
「ほう、食糧にも保存に工夫されているのだな。これは………」
「ねえ、なんの話してるのってば!」
「いや、すまんな。気になったものでな。夕飯にしようか」
「うん!」
二人は冷蔵庫にあるレトルト食品を取り出した。夕飯はハンバーグとご飯に決まった。
実はシレンには食事をしなくても生きていられる。ここで冬樹の貴重な食糧を口にしなくてもよかったのだが、今の時代の人間ーー正確には冬樹がどんな食事をするのか気になったのだ。
(これから利用していくのだ。知っていて損はあるまい。今の時代の人間の文化にもちょっと興味あるしな)
夕飯も人手間かかった。シレンが電子レンジに興味を持ったり、冬樹が使い方を分かりにくい説明をしたりして、冷蔵庫に触れてから一時間に夕飯をとるはめになった。
「………やっと食事ができる」
「ごめんなさい。遅くなって………」
「全くだ! 不敬だぞ!」
夕飯が遅くなったことにシレンは不満で仕方がなかった。しかし、その不満はハンバーグを一口食べただけで吹き飛んだ。
「………むむ、これはうまい!」
「美味しいでしょ」
「ああ、神の神殿の食事よりも美味ではないか!」
「そんなに?」
「そうだ!」
シレンは初めて食べたハンバーグの美味さに驚き、何より大満足した。大した食べ物ではないと思っていたのだ。それだけに衝撃を受けた。
(こ、こんな美味な食べ物がこんな場所で食べられるとは………っ! 肉の臭みがなく肉汁が溢れて味わい深い。おお、なんということだ。ナイフとフォークが止まらないではないか!)
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