第6話 脱出!

(思えば、どのような神でも力を取り戻す方法を探したことなどなかったな。当然と言えば当然か)


「?」


 基本的に神は努力が嫌いだ。特に何かを探すなど神にとって面倒臭いこと極まりない、と常識的に考える。力を取り戻すことはできないと考え続けられたのは、そういう努力をしなかった結果なのかもしれない。


「ふっ、何という幸運か。私にこのような機会が巡ってくるとはな。おい、少年」


「なに?」


「喜べ。お前のおかげで私は希望を見いだしたぞ」


「そうなんだ、よかったあ」


「お前にも希望をやろう。この森から出してやる」


「本当に!?」


「ああ」


 女神はニヤリと笑った。本当に少年を森から出してやるつもりだが、彼女は見返りを求めている。


「その代わり、条件がある。この私を匿うがいい。世話もしてくれ。私が万全な状態になるまでな」


「? いいよ」


 少年は喜んで承諾した。女神は心の中で嘲笑った。


(よしよし。それでいい。こいつを利用して私は人間から隠れる。その間に完全に力を取り戻すのだ。………長い時間をかけてな)


「それでは、この森から出ようではないか。二人でな」


「うん!」


 自由に動けるようになった女神は、神の力………ではなく普通の魔法を使った。不用意に神の力を使う訳にはいかない。何故なら、その力を感知でもされればどうなるか分かっているからだ。


(こんな状態では確実に負けてしまう。完全復活までの辛抱だ)


「よし。こっちだ」


「うん!」


 女神が出口に向かうと知って、少年は一緒についていった。






 女神と少年は、森の外に出た。少年ははしゃいだ。


「わーい、やったー! でれたでれた!」


「当たり前だ。私を誰だと思っている」


「神だよね。本当にありがとう!」


「ふん! 崇めたてるがよい」


 少年は大喜びだが、女神は仏頂面だった。ただ、女神は顔に出さないだけで内心は嬉しかった。


(ああ、やっとこの森から抜けられたのだな。いつまでも、こんな場所にいたら気が狂いそうだったものだ。本当によかった、それはこっちのセリフだ)


 女神は少年に指示を出す。


「それでは約束を果たしてもらおう。お前の家に案内せよ」


「うん!」


 今度は少年の後を女神がついて行く。

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