第4話 憤怒!

「うーん? 特に考えてないよ」


「………どういう意味だ?」


「決めてないの」


「はあ!? 何故だ!」


「何でもいいからすごそうなものを見つけたかったんだ」


 女神は少年の答えの意味を理解した。要するに考えなしに探検に出ただけだったのだ。女神は更に苛々する。


「くっ、これだからガキは嫌いなんだ! 無知で愚かな人間のガキは!」


「おねえさん、怒ってるの?」


「ああ、そうだ! 貴様は神の怒りに触れたのだ!」


「かみ?」


「……ああ、しまった!」


 女神はやってしまったと思った。自分が神と言えば人間が黙っているはずがないのだ。この子供の口から自分の所在地がバレたら大変なことになってしまう。


「まずい、どうにかしないと………」


「ええー! かみって、おねえさんは神なの? すごいすごい!」


「え? 何?」


「やったー! なんかすごいの見つけた! ばんざーい!」


「な、何を言ってるんだ?」


 女神は少年の反応に戸惑った。一瞬、自分の存在を公表するのかと思ったが、次の言葉で呆れた。


「探検して宝物とか見つけようとしてたんだけど、迷子になったのに、すごい! 神様だって!」


「………はあ!? 迷子? 何だそれは?」


「ぼくね、探検してたら迷子になっちゃたの。もうお弁当もなくなちゃってね。もうお腹ペコペコで死にそうなの」


「………」


「それでね、もう死んじゃうと思ってたけどね、おねえさんに会ったんだ。そしたら神だって。何もできなかったわけじゃなくてよかったと思ったんだ」


「………お前、神は人間たちの中でどういう扱いになっているんだ?」


 女神は気になった。五年前の通りなら、人間の子供といえど神は敵のはずだ。それだけに目の前の少年の反応がおかしく見える。五年前と今では違っているのか気になってしまう。


「すっごく悪い人たちだって」


「………何?」


「昔は偉かったのに途中で悪くなったんだって。おねえさんもそうなの?」


「何い! 悪い人だと!?」


 女神は怒りに震えた。神々が悪い人。つまり、人として扱われていたのだ。恐れ多くも神を人と同じ枠に入れるなど耐え難い屈辱だった。


「私たちをそこまで軽んずるか! 人間どもめ、許さん! 死にたいなどと思った私も愚かだった!」


「あれれ? おねえさん? 大丈夫? 飲み物ならあるよ?」


 女神は怒りのあまり死にたいなどと思わなくなった。その代わりに復讐心が混み上がってきた。

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