第10話
あの日から何日立っただろうか?
えいなちゃんの引退宣言からもう少しで一年が経とうとしていた。
そして今年もとうとう冬コミコミの季節がやって来た。
「天使さん?聞いてます?」
ベッドの中であたしはひなさんと電話をしていた。
「すみません!なんでしたっけ?」
「えいなちゃんの最後のコミコミ行きますよねって話ですよ!落ち込む気持ちはわかりますがこれを逃すといつ会えるかわかりませんよ」
"最後のコミコミ"その言葉を聞くだけであたしは胸が痛くなる。
でもひなさんの言うとおりこのチャンスを逃したらいつ会えるかわからない。
「ひなさん!あたしえいなちゃんに会いたい」
「そうこなくっちゃ!れんさんには自分から話しときますね」
ひなさんは笑いながら電話を切った。
きっとみんながえいなちゃんの引退を悲しんでるはずなのにひなさんもれんさんもえいなちゃんのSNSで楽しく絡んでいる。
えいなちゃんとの時間を精一杯過ごしているんだ。
「あたしもコミコミでえいなちゃんに会ったらたくさん伝えたいことやプレゼントとかいろいろしたいことあるしいつまでも落ち込んでいられないぞ」
そこからあっという間に月が立ちコミコミの日がやってきた。
ひなさん、れんさんと待ち合わせをし会場へ。
「この一年半いろいろありましたね。えいなちゃんのお陰で自分達は出会えたんですよね」
ひなさんが開催前の並んでるときにボソッと言った。
ひなさん、れんさんとは夏コミコミのとき。
元々SNSで絡んではいたが初めて出会ったのは一年半になるのか。
二年前の冬えいなちゃんをネットで見てあたしは衝撃を受けた。
この世にこんなに可愛い子がいるんだと。
生で会ってみたいと思って直接会いに行った。
そしたら天使が実際に存在してたんだ。
あのときのことを思い出して涙が出そうになった。
「今年最後のコミコミ始まりますね」
ひなさんの言葉にまわりが丁度拍手し冬コミコミが始まった。
あたしたちはまっすぐえいなちゃんのいるサークルに向かった。
「なんか夏よりもえいなちゃんのところ人多いですね」
「冬コミコミは夏よりも多いのは毎年のことですがえいなちゃんは今一番注目されてたコスプレイヤーそりゃみんな今年最後なの知ってるから集まりますよね!さぁ我々も並びましょう」
れんさんの豆知識を聞きあたしたちはえいなちゃんの長い列に並んだ。
一時間半近く並んでようやくえいなちゃんの姿が見えた。
あたしの姿に気付いたのか笑顔で手を振ってくれた。
「えいなちゃん...今日も神..」
あたしも全力でえいなちゃんに手を振り替えした。
どんどんと自分の番が近付きひなさんの番になった。
「次の人どうぞー」
スタッフの声にあたしはえいなちゃんのところに行く。
「え、えいなちゃん!つまつまつま...つまらないものだけどよかったら」
緊張するあたしにえいなちゃんは笑顔でありがとうと言いあたしのプレゼントを受け取った。
「天使ちゃん今回も会いに来てくれて本当にありがとう!天使ちゃんがいつもSNSでコメントくれたりわたしが緊張して上手く話せないときに天使ちゃんが励ましてくれたから頑張れたんだよ!」
えいなちゃんはあたしの手を握りながらお礼を言ってくれた。
違うよえいなちゃん。
あたしがいつもえいなちゃんに助けられてどんなときにもえいなちゃんはあたしを幸せにしてくれて...。
いろんな思いが溢れてきた。
「えいなちゃんがいたからあたしの人生は薔薇色でした。毎日が幸せでこのドキドキはえいなちゃんのせいだよ!だから...」
引退しないで!と言いかけたがこの言葉はあたしの中に深く置いといた。
「だからえいなちゃん!いつでも帰って来てね!あたしたちはえいなちゃんをいつでも待ってるから!」
えいなちゃんの写真集を買って次の日えいなちゃんのコスプレ写真をたくさん撮って無事に冬コミコミは幕を閉じた。
※今回の推しあるある
推しの意見は尊重する
推しのために笑顔でいる
推しに会えて幸せ
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