第9話


他のメイドさんたちの掛け声に合わせてあたしたちはステージの下で並んだ。

ステージの上にはもちろんえいなちゃんが立っている。


「次の人どうぞ」


えいなちゃんがどんどん並んでる人に合わせて手招きした。

次はあたしの番。

ドキドキと手汗が止まらないのがわかる。


「次の人ー」


とうとうあたしの番が来た。


「あっ天使ちゃん!」


あたしの姿を見てえいなちゃんはニコニコしながら両手を広げた。

あー!可愛すぎる。

あたしはえいなちゃんの隣に立ちどんなポーズで撮るか聞かれた。


「じゃ...う、ウインクしながらぎゅーしてください」


この日のためにいろいろ考えたポーズ。

えいなちゃんはウインクがとても上手だ。

えいなちゃんを初めて見たコミコミのときの写真がまさにウインクだった。

あたしがえいなちゃんにお願いすると笑顔ではーいと言ってくれた。


「じゃ、目線ください」


メイドさんがカメラを握りレンズ越しで声をかけあたしたちはぎゅーと抱きついた。

するとえいなちゃんはただ抱き付くだけでなくあたしのほっぺに。


ぺたー


「え?」


あたしはびっくりしてそのまま写真を撮られてしまった。


「ハハハ、天使さんの顔うけますね」


「ぷっ、せっかくのツーショットチェキでこれは...すみません!笑ったらダメですね」


ひなさんとれんさんがあたしのチェキを見てクスクスと笑ってた。

あまりのびっくりで、ものすごく変な顔をしてたからだ。


「みなさんそれでは先ほどの席に戻ってください」


全員のチェキを撮り終えあたしたちは席に戻った。

きっとこれからえいなちゃんがSNSで言ってた重大発表のことを話すのだろう。

ずっと気になっていたことだからみんなが一斉に静かになった。


「みなさん、今日は集まってくれてありがとう!たくさんの人に会えて嬉しいです。わたし事ではありますがここでみなさんに報告があります」


少し沈黙したがえいなちゃんが大きく息を吸い吐いた。


「去年の冬わたしはコミコミに参加して知らない間にネットにあげられそれが拡散されいろんな人と出会い今こうしてコスプレをお仕事にさせてもらってます」


えいなちゃんがコミコミに参加していなきゃあたしは今のえいなちゃんに出会うことが出来なかった。

そんなことを思いながら話を聞く。


「楽しいことが本当にたくさんでみなさんの笑顔を見れるのが今のわたしの幸せです」


ここでえいなちゃんはまた沈黙した。


「えいなちゃんあたしもえいなちゃんに会えて幸せだよ」


あたしは少しうつ向いていたえいなちゃんに声をかけてあげた。


「天使ちゃんありがとう!あたしも天使ちゃんに会えて幸せ」


えいなちゃんが笑顔であたしの方を向いて言ってくれた。


「わたしはまだ未成年で実家に住んでいます!お仕事があるときに毎回東京に来てて。学業のことを考えるとなかなか...」


みんなえいなちゃんの話を真剣に聞いた。


「なのであと1年で引退しようと思ってます!」


えいなちゃんの重大発表にあたしは呆然とした。



※今回の推しあるある


重大発表があるとそわそわする


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