第51話 ステージの、終わりに!
「何だ?僕に、用があるのか?」
「きゃっ…」
「そんなに、驚くなよ。僕を、つけていたんだろう?」
「ええ…」
「どこの誰だか知らないけれど、きれいな人だねえ」
「…」
「こちらに、きてくれないか?せっかくだ。あの方のもとに、連れていってあげても良いぜ?」
「あの方…?」
男の子によって、美女が、主人の元に呼ばれた。
母親も、一緒だった。
男の子の仕えていた主人は、イヌの着ぐるみをまとっていた人だった。イヌ人間の身体のどこかから、冷たい声と風が、吹いてきた。
「何だ…?」
港に着いた彼の前に、光の風が、近付いてきた。木陰から飛び出た、二足歩行の、目のパッチリと開いたかわいらしい動物だった。
「ネコの、着ぐるみ…?」
光あるフラグが、たくましく、迫ってきたわけだ。
「おお、何だ?ネコ人間か、ははは。ここは、テーマパークだったのかなあ?すまない。俺は、急いでいるんだよね。新卒は、忙しいんだものな。ネコ人間の相手をしている暇は、ないんだよね」
静かに、近付いてきた。
少しだけ、よろよろと、していた。高齢者に近い歩みを、思わせていた。
「疲れた着ぐるみ、だよな?誰が、入っているんだ?」
ゆっくりと、近付いてきた。
「…ねえ?何?ネコ人間さん?俺はもう、このボートに乗って、遠くに出かけなくっちゃ、ならないんだ。君の相手は、していられないよ。このボート…。へえ、アパオシャ号って、書いてある。ねえ?ネコ人間さん?聞いているのかい?」
ネコ人間は、何も、言わなかった。
「お母さん、お母さん!ネコ人間さんが、お母さんに、見えてきたぞ!お母さん!また一緒に、テーマパークに、いこうね!俺、そこで何を食べたら良いかなあ?僕はもう、来年には、就社だ。最高の遊びを、しようよ」
ネコ人間は、静かなままだった。
「…暑いなあ。クーラーとかは、ないの?あっ!」
ネコ人間の出てきた木陰に、少しくたびれかけた、1台の縦置き型扇風機が置かれていたのがわかった。
「使い込んでる、っぽい?それ、誰の扇風機なの?」
何も、返答がなかった。
「ねえ?ねえったら!それって、誰の、何の扇風機なんだい?」
ネコ人間の弱い歩みに、強い意志が、感じられた。
「アタルちゃん?これまでの冒険で、いくつもの真相が、わかってきたわねえ。お母さん、うれしかったわ…。これで、ゲームのクリアを、宣言しましょうか…」
だらんと下げられたその手には、一丁のピストルが、握られていた。
そのとき、そのネコ人間の背後には、ある集団が迫っていた。
「…あ!さとり警察だ!」
ネコ人間に伝えてあげようとしたが、できなかった。
ネコ人間もさとり警察も、自分にとって友達であり話しかけて良い相手だったのかが、判断できなかったからだ。
光の風を復活させ、夫を倒そうとした妻が、逮捕されました。 @maetaka @maetaka1998
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