第30話 レッツ、工作!単三電池で、単一電池の働きをさせてみましょう!

 「これは、失礼いたしました」

 「…」

 「お客様は、生まれたときから、何不自由なく、暮らせましたよね。生まれたときから、携帯電話がありました。パソコンも、普及しておりました。他人との連絡をとっても、苦労した世代の子は、大変でしたよ。駅の伝言板で、何とかしのいだものでした。あなた、駅の伝言板なんて、知らないでしょう?TV番組を見逃したら、終わり。録画機能がない時代は、泣きを見ました。懐かしい話、ですねえ。それでも当時の子は、負けませんでした」

 「…」

 知らない人に怒られるこの気配が、嫌でならなかった。

 「あの子たちは、努力をしました。何とかして生活を便利にしようと、自ら風を生み出そうと考える生活を送れました。苦しいながらも、勉強が、できたわけです。それが叶って、様々な製品が、生み出されたものです」

 「…」

 「扇風機もまた、その努力で生み出されたものでしょう」

 「俺たちが、うらやましいのか?」

 「…そう、返してきますか」

 敵は、強かった。

 「俺たちは、生まれたときには、便利な物ばかり、手にしていた。だから、想像力もなくなったって、言いたいのか?仕方が、ないじゃないか。それが、俺たちの社会なんじゃないか!」

 「でましたね。オンリーワン世代特有の、言い訳論法」

 「…言ってくれるじゃないか」

 「あなた方の世代は、その努力をした人たちから手当をもらって生活しました。それでいて感謝もせずに、その人たちから、就職のチャンスまで奪いとりました。なんという、強いステージを踏んだことでしょうか」

 「俺たち世代のための手当は、政府が決めたことじゃないか!就職のチャンスを、奪いとった?だって、そういう決まりになっていたんだから、仕方がないじゃないか!」

 「…ほら。また、言い訳論法」

 「あの世代は、運が、なかったんだよ!」

 「そうですか。運の善し悪しで、社会から見放されてあなた方と、定年退職世代のおじさんたちだけは甘い蜜を吸っても良いっていうことになったのでしょうか?」

 「それは…」

 知らない人に怒られるこの気配が、嫌でならなかった。

 「あの子たちは、努力をしました。何とかして生活を便利にしようと、自ら風を生み出そうと考える生活を送れました。苦しいながらも、勉強が、できたわけです。それが叶って、様々な製品が、生み出されたものです」

 「…」

 「扇風機もまた、その努力で生み出されたものでしょう」

 「俺たちが、うらやましいのか?」

 「…そう、返してきますか」

 敵は、強かった。

 「俺たちは、生まれたときには、便利な物ばかり、手にしていた。だから、想像力もなくなったって、言いたいのか?仕方が、ないじゃないか。それが、俺たちの社会なんじゃないか!」

 「でましたね。オンリーワン世代特有の、言い訳論法」

 「…言ってくれるじゃないか」

 「あなた方の世代は、その努力をした人たちから金をもらって生活し、それでいて感謝もせずに、その人たちから、就職のチャンスまで、奪いとりました」

 「俺たち世代のための手当は、政府が決めたことじゃないか!就職のチャンスを、奪いとった?だって、そういう決まりになっていたんだから、仕方がないじゃないか!」

 「…ほら。また、言い訳論法」

 「あの世代は、運が、なかったんだよ!」

 「そうですか。運の善し悪しで、社会から見放されてあなた方と、定年退職世代のおじさんたちだけは甘い蜜を吸っても良いっていうことになったのでしょうか?」

 「それは…」

 「さらには、天下りで逃げる。役人と、ほぼほぼ、同じレベル。あの扇風機事件で延焼した役所の中で死んだ職員の怨念は、さぞや、妬む手となって、さまよっていたことでしょうねえ。なにせ、あなた方の世代と、やっていたことは変わらないのですからねえ」

 「何?なぜあの事件のことを、知っているんだ!」

  「ほう…。考えられる力が、おありでしたか」

 彼があの事件に関わっていたことは、警察と本人以外、知り得ないと思われた。

 「それを、この男は、なぜ、知っていたのか?この男は、何者なのか?」

 疑問に思えたのは、その点だった。

 現実は、甘くなかった。

 男が、警察に賄賂を渡して情報を得たに、違いなかった。

 「あんたは、かわいそうな男だな」

 「何を、おっしゃいますか。かわいそうなのはお客様の世代であって、さらに言ってしまえば…」

 男は、身動き1つしなかった。

 その時間が、無情に、流れていった。

 彼の目を、きつく見定めた。

 「な、何だよ?」

 「お客様?」

 「な、何だ」

 すると男は、決定的なことを言ってきた。

 「お客様は、先ほど、私に向かって、かわいそうな男だとおっしゃいました。それは、お間違いないですよね?」

 「ああ」

 「でしたよね?」

 「そうだったな」

 「しかし…」

 男は、大きく、息を吸った。

 「しかし、本当にかわいそうなのは、あなた方だ!人の気持ちもわからない些末な発想しかできないあなた方は、かわいそうな世代ですよ!それに、そのあなた方にチャンスを奪われた、努力をした世代も、かわいそうですよ!かわいそうどころではない!かわいそうどころの話では、ないんですよ!」

 「…」

 彼の心臓は、じわじわと、握りつぶされそうになっていった。

 「あなた方の心の奥底に吹く風は、何なのか?お客様の奥様が商店街の家電センターでお当てになった最新の縦置き扇風機の風、なのでしょうかねえ?」

 男は、くじ引きでのことも、知っていたようだ。

 「…お客様?良いことを、教えてあげましょうか?」

 「…なんだよ」

 声は、確実に、か細くなっていた。

 暑かった…。

 「単一電池があれば、救われますよ?」

 「電池?」

 「ボートを動かす電力を、まかなえるからですよ」

 「そっか…」

 「ただし」

 「ただし?」

 「あいにく、今私の持っている、このボートに接続できる乾電池は、単三電池なのですよ」

 「…じゃあ、ダメじゃないか」

 「おやおや。ダメでは、ございませんよ?単三電池で、単一電池を演じれば良いのでは、ないでしょうか?」

 「ここで、そんなことを、演じさせるのか?」

 「演じるのは、あなたの得意分野だったのでは、ないですか?」

 「…」

 「あなたは、何のために、ステージに立ってきたんです?」

 「…」

 「何のために、演じてきたんですか?」

 「…わかったよ」

 「それではまた、どこかで、会いましょう!」

 そこで、男の気配は、途切れた。

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