第15話 妻のストレス、どこへいく?
マツダのようなオンリーワン世代だと、面倒だ。ある意味では、定年退職世代のおじさんたち以上に面倒だったのかも、しれなかった。
オンリーワン世代は、手加減がわからなかったからだ。
若い学校の先生が、児童生徒に暴力を振るい、骨折をさせたり、気絶させてしまうことがあった。
これは、加減がわからないためだと言われる。
「まさか、死ぬとは思わなかったんです。まさか、あれで骨折するなんて、思わなかったんです。まさか、あれで…」
世界に1つだけの世代の、恐怖だ。
「兄妹が少なく、そもそもがまわりに子どもが少なかった環境で育てられたから、他人の痛みが想像できなかったんです」
少子化の社会的事情もあったようだが、とにかく、人と触れ合う機会が少なくなってしまった以上は、加減がわからなくなったようだ。
「子どもの頃は、良く、ケンカをしたものだ」
そう、経験談を語れるくらいになれば、手加減ができた。
「どこを殴れば苦しむかが、わかる。だから、そこは、殴ってはならない。力を入れすぎれば、死ぬことだってある」
ケンカ慣れしていた人は、そう言った。
それによって、危険が減らせた。
これは、良いことだった。
事前に影響が予測できたケンカには、希望があったということだ。裕福すぎた。
しかしこれも、オンリーワン思想で育てられた今の若い世代夫婦になればなるほど、まずいことになるという。
人権侵害にもなる言葉を平気で吐き、相手を、泣かせる。
学校などでも、そうだ。
「お母さんにサインをもらってくださいって、言いましたよね?君は、なぜ、先生に言われたように、してこなかったんだい?」
こういうことを、平気で言う教員がいる。
母親のいない子の悲しみが、想像できないのだ。
こういう人が担任教師に配属されれば、成長への貴重な1年が、傷付く。若い世代の教員には、絶対的に、注意すべきだ。
人権侵害にもつながるような罵詈雑言の争いは、夫婦のどちらかが倒れるまで、続けられる。
優しい女性は、これに、泣いてしまう。
その様子を見て、喜ぶ夫がいる。
「勝った!」
こういう夫をもってしまった人は、気の毒だ。
他にも、夫婦ケンカのタイプには、別物があるという。
「何も、言い争わない」
口論が手加減知らずに発展すれば無慈悲な結末になるだけだと知っているために、最初から、何も言い争わないのだ。
が、言いたいことも言えないような状況では、ストレスが溜まる一方だ。
それに、着ぐるみかぶりのやり方だ。
仲良しという、見せかけの着ぐるみを被っているだけだ。
ケンカを避け、無慈悲な結果になるのを避け、遠回しな話を続ける。他人からは、仲良しな夫婦に見えることだって、あるだろう。
しかしそれは、あくまで、着ぐるみの姿。
ケンカを避けてくねくねと進んでいく話では、互いに、伝わりあえない。
「本当のことは、後で言うよ」
「あら、そうなの?」
これでは、問題解決には、ならない。
夫婦の話とは、何なのか?
「結局、何?」
「何が、問題なんだっけ?」
そんな基本的な謎に堂々巡りをしていくように、なりそうだ。
言いたいことも言えない口論になってしまうたびに、妻というものは、ストレスを抱え込み、なお我慢し、またストレスを抱え込み続けていく。
そのストレスが暴走し、ピストルでも握って、夫の胸に照準を合わせるようなことだけは、勘弁してもらいたいものだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます