最終章 完結編
第33話 エンディング・ゼロ
ディーオ達は光の道を進むと、麦畑の平原にたどり着く。
何処までも平和で牧歌的な風景が続く場所。
そして、その先に一軒の家があった。
その道を進み、家の前に来ると…。
家の玄関先で三人の人物が立っていた。
「ようこそ」と微笑む緑髪のエルフ耳の少女。
「待ってましたよ」と青い髪にお下げのミグルド族の娘。
「遅かったわね」と腕を組み少し吊り目の赤い髪の少女。
ディーオ達四人は彼女達を見て唖然とする。
そして、エレナが
「もしかして…どこの世界の…シルフィとロキシーにエリスさんですか?」
そう娘達三人は微笑み、エリスが
「龍神の大賢者ルーデウスの時の三人よ」
と、答えてくれた。
三人の彼女達に導かれて家に入ると、そこには椅子に座って外を見つめる少年がいた。
どことなく、ルーデウスに似ている。
シルフィが
「ルーデウス、お客さんが来たよ」
と、窓の外を見ていた少年のルーデウスを連れてきた。
少年のルーデウスの瞳は、どことなく光がないが
「初めましてルーデウス・グレイラットを申します」
と、挨拶をしていた。
ロキシーが
「ここに座ってルディ」
と、ルーデウスを導くと、ルーデウスは静かに座った。
ディーオ達がそれを見つめていると、隣にエリスが来て
「私達は、神の眼にルーデウスと暮らす事を願ったけど…ダメだったわ。復活したルーデウスに意識がない。いえ…薄いのよ」
シルフィが
「でも、ぼく達は幸せだよ。ルディと一緒に暮らせて」
そう、この少年のルーデウスも、少女や娘達のシルフィやロキシーにエリス達も、あの時、神の眼があった世界で願った事によって生まれた特別なこの場所で暮らしている。
だが、肝心のルーデウスは、意識が薄弱で生ける屍のようだった。
ロキシーが
「ここに皆さん、座ってください」
ディーオ達が座り、リリアが
「ここは…もしかして…」
シルフィ達も対面に座って
「そう、消えたフィアット領、ブエナ村で、ルディの家だよ」
ロキシーが
「消えたルディの故郷を再現した…というより、時空を操作して再構築した、というべきですね」
エリスが
「ここは、私達がルーデウスと暮らす為に誕生した特別な世界なのよ」
ディーオ達は、あの二つ目の世界、封印されたヒトガミの時に見た球体の大地を思い出した。
それがココだ。
ここには、全員がいる。テーブルで、ルーデウスがシルフィ達の方へ座り、その対面にディーオ達が座っている。
シルフィが
「じゃあ、全てを話すね」
ロキシーが
「まず、どうして、色んな事が起こったのか? その理由なんですけど…」
エリスが
「全ては、再生の神子リリアの願いから始まったわ」
シルフィが
「かつて、ここより遙か時空の世界で負けて、滅んだ神人は、滅びて時空の彼方に消えながら、とある声を聞いた」
ロキシーが
「その声が、再生の神子リリアの願いだったんです。大切な人、篠原 秋人と助けたいって…」
ディーオが
「ちょっと待ってください。順序がおかしい。神の眼があったから、それによって繋がりがある平行世界に異常が発生して」
エリスが
「違うわよ。神の眼なんて後からで、全ての始まりは、再生の神子リリアの願い、悲鳴から始まったの」
リリアが驚きで
「そんな、デタラメだ。始まりの順序が…前々バラバラで繋がらないわ」
ダリスも頷き
「その通りよ。それじゃあ、全部が全部…」
エレナも驚きで
「矛盾で、おかしくなる」
シルフィが
「それでも、全ての始まりは、再生の神子リリアだよ」
ディーオが頭を抱えて
「つまり、再生の神子リリアの願いとなるそれがあったから…全てが同じに始まって全てが同時に動いていたのか?」
ロキシーが
「そうですよ。そこから全てが始まった」
エリスが
「そこから、ルーデウスの事も、ヒトガミの事も、世界の事も、何もかも始まったわ」
シルフィが
「遙か次元の高い場所から、世界を見れば、それが始まった原因も、それの終わった結果も同じ場所にある」
ロキシーが
「原因と結果は、時間的に見れば、同じ場所にあるんです」
エリスが
「時間ってのは、原因と結果が密集した可能性の領域を生命が通過する事で生じているの」
シルフィが
「過去と未来ってのは、その原因と結果の通過と収束によって成り立っている」
ロキシーが
「時間は、無限に平行して存在する幅を持っています。その無限の時間の幅の中を通過する事で、時間の経過が生まれて、生命が経過を蓄積する事で過去が生まれて行く」
エリスが
「でも、私達は願う未来へ行けるとは限らない」
シルフィが
「自身以外の多くの人達がいる。その分、多くの違った過去と未来へが蓄積して。願った通りの未来に行ける事は無い」
ロキシーが
「それが人に生命に無限の可能性を与える。そういう事です」
エリスが
「時間の勉強は、ここまで良い?」
ディーオ達は頷き「はい」と答えた。
シルフィが
「難しく考えないで良いよ。前に進んでいけばいい。そういう事だよ」
ロキシーが
「話を戻しますね。再生の神子リリアの願いを聞き届けた滅んだ神人は、その全ての力を持ってリリアの望む事をした」
エリスが
「その結果、六面世界という閉じられた世界と、ヒトガミという存在も出来て、そして…私達も生まれた」
シルフィが
「ヒトガミの能力である未来視は、未来を見る力じゃあない。ループの力なんだよ。自分が滅ぶ未来から、過去の自分への記憶だけの転送」
ロキシーが
「それは、龍神オルステッドも同じだった」
エリスが
「篠原 秋人も、リリアも同じ」
シルフィが
「篠原 秋人が幸せになる未来の為に、何度も時間を世界のループを繰り返して」
ロキシーが
「外れた時間軸の世界だけを切り捨てていた」
エリスが
「その切り捨てた時間軸達の反発が来た。それがアナタ達の世界と、私達の世界だった」
シルフィが
「最初は、二つの世界で回してループをさせる事で、世界をリリアの望んだ通りに操作したけど」
ロキシーが
「ひずみと反発が起こってしまった」
エリスが
「矛盾を矛盾で解消する為に、もっと大きな矛盾を作るしかなくなった。まさにワガママね」
シルフィが
「だから、その結果が襲いかかった」
ロキシーが
「世界達が衝突しようした事です」
エリスが
「このまま続けると、また、切り捨てた時間軸達の反発が貯まって…」
シルフィが
「君達が何とかしなければ、ならない事態が起こり、更に」
ロキシーが
「対処し続けて、更に大きな時間軸達の反発が蓄積して」
エリスが
「その結果、対応できなくなる程の力になるわ」
ディーオが青ざめ
「そうなったら、近い平行世界や、他の隣接する時空も巻き込んだ、タイム・ディストラクション…時空大崩壊が発生する」
シルフィとロキシーにエリスの三人が頷き
「その通りよ」
と、三人が答えた。
リリアが
「でも、それを解消、つまり…再生の神子リリアを解放したら、アナタ達はどうなるのですか?」
シルフィが微笑み
「ぼく達も消える」
エレナが
「良いんですか?」
ロキシーが微笑み
「良いんです。所詮、これは偽りの幸せ」
ダリスが
「せっかく、一緒にいられるのに…?」
エリスが胸を張り
「いいの。何時か何処かでルーデウスに出会ったら、今度こそ、互いが隣にいる未来を作るから」
ディーオ達は互いに視線を合わせて頷き、ディーオが
「分かりました。必ず…再生の神子リリアを解放します」
シルフィが
「君達しか出来ない。リリアが望んだ未来を構築できない存在が出現した場合、その存在がいた時間軸ごと、その場から切り離されてしまう」
ロキシーが
「最後のヒトガミを倒した時に、篠原 秋人が消えたのは、その篠原 秋人がリリアの望みでない時間軸となったから、リリアが篠原 秋人を強制ループさせたの」
エリスが
「アンタ達は、違う世界時間軸でありがながら、リリアの時間軸と繋がっている。だから出来るのよ。それも、もう…時間がないわ」
轟音が響く。
外にあの時空戦艦ラグナロクが降りて来る。
それを操縦するのはエピオンとルビードラゴンだ。
ディーオ達が外に出ると、時空戦艦ラグナロクの前で腕組みして待っているエピオンとルビードラゴンがいた。
シルフィがエピオンに近づき、とある光の球体を渡す。
「ありがとう。これが例の報酬だよ」
エピオンは、その光の球体…全ての事態を起こした神の眼のデータを受け取り
「最後は、彼と彼女達によって…」
と、ディーオ達を見る。
シルフィが頷き
「うん。お願いしますね」
ルビードラゴンが頷き
「きっちりと仕事はやり遂げる」
ディーオがそばにいるロキシーに
「貴女達は、どうするのですか?」
ロキシーが
「ここを深淵の穴の底にいるリリアにぶつけます」
エリスが
「そうする事で、深淵の穴が消えて、リリアが露出するわ」
シルフィが
「それが最後のチャンスなんだ。リリアが現れて、それを解放しないと…更に再生の神子リリアの力が強大になって、それこそ…全ての関連した時空を破壊して、やり直すかもしれない。周辺の関係ない時空を、世界達を破壊しても…」
ディーオは頷き
「はい、では…さようなら…で…」
シルフィとロキシーにエリスの三人は手を振って
「さようなら」
と…。
ディーオ達は、エピオン達が操縦する時空戦艦ラグナロクに乗って、この世界から出て行く。
それを見届けたシルフィとロキシーにエリスは、輪になるように手を繋いで
「行くよ」
と、シルフィが告げて、ロキシーとエリスが頷く。
深淵の穴へ向かって、三人が構築した世界の球体が落ちていく。
それをディーオ達は、時空戦艦ラグナロクの操縦室で見つめる。
深淵の穴の底、神子リリアがいる時空操作結晶神獣がいる特異点に、三人の世界が落ちる。
その時に、輪になっている彼女達三人の元へルーデウスが来て
「ごめんね。こんな事になって…」
と、告げる。
その目には意思の光がある。
シルフィとロキシーにエリスは、驚きルーデウスが
「ぼくは、君達の幸せを願っていた。ぼくと関わったから…不幸な結果に…」
シルフィとロキシーにエリスがルーデウスの元に来て
シルフィが涙して
「バカ、不幸な結果なんて、そんなの関係ないよ」
ロキシーが
「そうですよ。ルディ…」
エリスが
「だから、次は絶対に私達と一緒にいてね」
ルーデウスは頷き
「ああ…必ず迎えに行くから」
彼女達と彼の世界が、深淵の穴の特異点へ落ちた。
そして、深淵の穴が光に変わって、そこからリリアをコアとした時空操作結晶神獣がいる特異点が出現した。
光の波紋が足場となってリリアのコアを持つ時空操作結晶神獣が雄叫びを上げる。
再び、深淵の穴を形成して時空を、リリアの願いを叶える為に…更なる深淵の穴を形成しようとする。
時空戦艦ラグナロクを操縦するエピオンが
「行くぞ! これが最後だ!」
時空戦艦ラグナロクを時空操作結晶神獣へ向ける。
時空操作結晶神獣が、時空戦艦ラグナロクを察知して膨大な数のクリスタルヴァイド、時空回遊生命体を放出して攻撃する。
ルビードラゴンが甲板に出て
「これは、オレが対処する」
ルビードラゴンが雄叫びを上げる。
ルビードラゴンを中心に深紅の装甲を持つ大陸クラスの超巨大な龍が出現する。
ルビードラゴンの大陸深紅龍が咆哮のブレスを放つ。紅蓮に輝くブレスが向かっているクリスタルヴァイドを消滅させる。
エピオンが時空戦艦ラグナロクをディーオ達へのサポートモードにして
「あのバケモノの攻撃は、オレとルビードラゴンが受け持つ。後は…お前達がやれ!」
ディーオが
「ぼく達は、どうすれば…」
エピオンが微笑み
「分かっているはずだ」
と、告げて甲板へ出てルビードラゴンを加勢する。
ルビードラゴンは、大地深紅龍。
エピオンは、暴威のような紅蓮の閃光を放って攻撃する。
ディーオ達を乗せた時空戦艦ラグナロクが時空操作結晶神獣へ迫る。
その目標は、頭部にある結晶の中にいるリリアだ。
ディーオ達を乗せて疾走する時空戦艦ラグナロクは、後ろにエピオンとルビードラゴンの加勢を連れて真っ直ぐに突撃する。
ディーオ達も甲板に出て、ホワイトレガリアの力を解放して神鎧を装備する。
ディーオは、リリアのコアを見つめる。
どうすれば…破壊するのか? でも…それは…。
考えているディーオにリリアが
「ディーオ、私達が出来る事があるじゃない」
ダリスが
「そうだよ。私達は破壊なんてしなくていい」
エレナが
「アタシ達は、願いの光を示せる」
ディーオは頷く。
「そうだな。その通りだ」
ぼく達は、破壊なんてしない。願う光の路を作れる。
ディーオ、リリア、ダリス、エレナの四人は輪になって手を握り繋がり
『全ての願いの光よ! 彼女の…リリアが望む願いの光をぉぉぉぉぉぉぉぉ!』
ハイパーグレート、超越していく存在である願光路王の力が、リリアの願いを降臨させる。
ディーオ四人を中心に、リリアが操作して繋がった世界達の願光が放たれる。
その光の流星は膨大で、この宇宙の星々が流星のように歪んだ時空の穴を包み混む。
その願光達から、一つの願いがリリアへ向かう。
リリアぁぁぁぁぁぁぁぁ!
篠原 秋人の願いだ。
リリアをコアとする時空操作結晶神獣を願い達が優しく包んで昇華させる。
紅蓮の結晶の体は木のように変貌して、恐ろしい神獣を暖かな巨木に変える。
その巨木の下にコアの結晶から砕けたリリアが降り立ち、それを篠原 秋人の願いが抱き締める。
リリアは、願いを叶える時に魂だけの存在になっていた。
そのリリアの魂を篠原 秋人の願いが抱き締めて
「ああ…」
と、リリアが目覚める。
篠原 秋人の願いが
「行こう…ぼく達の願いを叶えよう」
リリアは涙して「うん、行こう…アキト」と、リリアの魂は篠原 秋人の願いに連れられて、向かうべき場所へ飛んでいった。
それをディーオ、リリア、ダリス、エレナ、エピオン、ルビードラゴンは時空戦艦ラグナロクの甲板から見届けた。
たった一人の少女が世界を変えても叶えたかった願い。
その結末を見届けた。
再生の神子リリアは、リリアとして再生して…解放された。
ーーー
ヘオスポロスの中枢、エグゼクティブ達の通信ドームで
「では、デブリーフィングを聞くとしよう。ナンバー19820305、エピオン」
と、エグゼクティブ達がエピオンを見つめる。
その先には、軍服のスーツに身を包むエピオンが腕を組み立っていた。
「了解しました。これがデブリーフィング…帰還報告になります」
エピオンは、任務を終えた報告を開始する。
デブリーフィングへ
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