第30話 二つ目の世界

 ディーオ達は、フィアット領の上にある、この別の平行世界の時空の穴から落ちてきた。 

 そこで出会った自分達の世界とは違うララ先生に、ディーオ達は自分達の事を話した。


 それをフィアット領にある領主城で聞くララ。

 隣にはララの隣は、ララの伴侶たる藤治がいる。

 藤治は、この世界に転移してきた人物で、ララと共に暮らしていた。


 ララは困惑気味に

「信じられません」


 ディーオ達をテーブルを挟んで前にして考えるララ。

 その隣にいる藤治が

「でも、彼らの話…特にディーオくんの話には、自分がいた地球と符号する部分が多くある。これほど符号するとは思えない」


 ララが

「ヒトガミが封印された次元の穴から出てきたのも驚きですが…繋がっている別世界の存在…色々あって…頭が痛くなりそうです」


 藤治が

「だけど、オルステッドがいなくなったのも理由になるかもしれない」


 ララも頷き

「ナナホシ達もいなくなった理由としても…」


 ディーオがララ達を見つめて

「どういう事ですか?」


 ララは説明する。

 ララ達は、ヒトガミを倒す為に様々な方法を探していた。そして…フィアット領に特殊な転移の力がある時空の穴の存在を知って、それを使ってヒトガミがいる場所へと転移したが…そこで、世界がヒトガミの力によって固定されているのを知り、ヒトガミの下へ行き、ヒトガミを封印する事にした。


 そして、ヒトガミを封印して数日後、龍神オルステッドと藤治と同じ異世界人であるナナホシと篠原 秋人が消えた。

 二人は、三人が消えた理由は…おおよそだが…ヒトガミを倒すという使命を全うできなかったからループに消えたのでは?

 そう、ララ達は結論づけた。

 つまり、龍神オルステッドとナナホシと篠原 秋人は同じループの力の作用が働いている。


 ディーオは、とある事を思い出した。

 自分達の世界にいるナナホシへ未来のナナホシが色んな技術の品を送り、その送られたモノの一つに未来のナナホシの記憶が幾つも増えている…という事を。


 ディーオが考えていると、両隣にいるリリアとダリスにエレナが見つめて、リリアが

「ディーオ。何か…」


 ディーオが鋭い顔をして

「もしかして、ぼく達は…勘違いをしているんじゃないか?」


 エレナが

「勘違いって?」


 ディーオが

「この世界のオルステッド様も、ぼくの世界の同じオールステッド様も、ループしている…と勘違いしているだけで…本当は…」


 轟音が外から響く。


 ディーオ達とララ達は、外へ出ると…あの深紅の時空戦艦ラグナロクが降りて来る。


 フィアット領の領主城の大きな庭先に降りた時空戦艦ラグナロクのゲートが開き、そこから篠原 秋人が姿を見せた。


 ララが

「アキトくん!」


 篠原 秋人が鋭い顔で

「ディーオ・アマルガム。オレと一緒に来て…やって貰うぞ」


 ディーオが篠原 秋人を見つめて

「何を?」


 篠原 秋人は

「ヒトガミの真の討伐を…」



 ーーー


 篠原 秋人が乗ってきた時空戦艦ラグナロクにディーオ達四人と、ララに藤治が乗り。

 ララが

「アキトくん。説明してください」


 時空戦艦ラグナロクの操縦室で、篠原 秋人は操縦席に座ったまま

「全ては、リリアを解放する為です。再生の神子リリアを…」


 ララが首を傾げ

「その神子を助ける為に…アキトくんは動いているのですね」


 篠原 秋人は無言で肯定した。


 ディーオが

「その再生の神子リリアを助ける為に、オレ達をどうするつもりなんだ?」


 篠原 秋人は時空戦艦ラグナロクをフィアット領の上空にある時空の穴へ向けると、フィアット領の空にある時空の穴が開く。

 普段は、青空だが…それが渦巻き紫電を放って穴を形成する。

 それが時空の穴だ。

 それに時空戦艦ラグナロクを飛び込ませる。


 藤治が

「この穴の先にヒトガミがいる領域、封印した場所へ向かう」


 ララが

「私は世界を回って色んな遺跡を見ました。龍族の遺跡や、他の種族達の遺跡を見て、とある魔法を知りました。この世界、六つの六面世界の何処にでも転移出来る魔法です。

 そして、それが…とある場所を中心として転移できる魔法と…」


 ディーオと並んで座っているエレナが

「もしかして、このフィアット領にある時空の穴がそうなの?」


 ララが

「オルステッド様も、それはかつての創造神の力を使ってヒトガミがやっていると…でも、違った。ヒトガミは創造神の力を遙かに超える力を持っていた。それによって、この世界を…」


 藤治が

「だから、我々はヒトガミを封印するしかなかった。もしかしたら…それを無くした瞬間に世界が崩壊する危険があったからだ」


 ララが隣にいる聖獣レオの頭を撫でて

「苦肉の策でした」


 ディーオが立ち上がり

「ララさん。これを…」

と、ララにとあるメモを渡して

「これが、この世界の創造者が残した力がある装置がある場所です」

 ディーオの世界で見つかったエレメンタルタワーの場所だ。

「これにララさんが接触すれば…その心配もありませんから」


 ララが受け取り

「アナタ達の世界では、そうして世界の崩壊を防いだのですね」


 ディーオが厳しい顔で

「ですが、まだ…分からない事がありますので…」


 時空戦艦ラグナロクは、真っ白になる空間へ到着した。

 篠原 秋人が操縦席から立ち上がり

「行くぞ」

と、出て行く。


 それにディーオ達とララ達も続く。


 時空戦艦ラグナロクから出て、白い空間を歩いた先に、封印されたヒトガミがいた。


 両手足と首から上が離れて、四肢がバラバラにされて封印されるヒトガミが

「やあ…よく来たね。ぼくにヒドい事をした連中が」

と、あの白き顔で笑う。


 ディーオはヒトガミを前に

「で、どうするんだ?」


 篠原 秋人が

「お前なら、コイツを倒せるはずだ。世界に害がないように…」


 ディーオが溜息を漏らして

「知らない。分からない」


 篠原 秋人が

「そんな筈は無い。エピオンが…」


 ディーオが呆れ気味に

「ホントに知らない。第一に、なんでそんなにエピオンを信じているんだ? 騙している可能性だって」


 篠原 秋人が

「エピオンは、全てを知っている。オレも彼女達三人と出会って、彼女達がこの方法しかないと!」


 ディーオが篠原 秋人に迫り

「事情を説明しろ! そうでないと!」


 言い争っている間に、ヒトガミはある事に気付く。

 腕を動かすと封印が動く。

 ヒトガミがニヤリと笑む。ディーオが神の眼の力を持っている事で、それが呼び水となって自分にブーストされている。ディーオを取り込めば…

「ふふふ…やっぱりぼくは、幸運に愛されているんだ!」


 ヒトガミを封印していた力が崩壊して、ヒトガミが解放される。


 ララが

「まずい。ここはヒトガミの世界、封印が解ければ、ヒトガミは絶対的な」


 ディーオはリリアとダリスにエレナである半身達に視線を合わせると、あの白き装甲、ホワイトレガリア(白き王衣)を瞬間装備する。


 ヒトガミが自分の世界で侵入者である全員を始末しようとしたが、ホワイトレガリアの力でディーオ達四人は、世界を飛び越えて、ヒトガミの世界の上からヒトガミを攻撃した。


 幾つもの斬撃がヒトガミを両断する。

 そして、ヒトガミの世界も払われた。

 そこに広がるのは、無限のように流星が落ちる世界だ。


 ヒトガミが

「な、なんで…」

と、倒れる。


 ディーオ達が倒れるヒトガミの下へ来ると、あの知覚できない白い姿の斬れた部分から素顔が見えた。

 ディーオが

「アンタは…ジャギア…」

 そう、龍神の大賢者ルーデウスの世界で世界を救った男の一人だ。


 ジャギアの顔が見えるヒトガミが

「ぼくを…知っているのか?」


 リリアが

「ええ…ルーデウスさんの日記から…」


 ヒトガミの外装が剥がれたジャギアが

「ぼくは…人類を救う英雄になりたかったんだよ…。神の眼よ。我は願い乞う!」


 流星が落ちる時空の穴の世界に巨大な神の眼の巨塔が出現する。

 ヒトガミだったジャギアが、再び神の眼の力を使おうとする。

 ディーオが

「いけない。アンタの力じゃあ、それ以上は死ぬぞ!」


 だが、神の眼の巨塔から赤き結晶が伸びて、ヒトガミの外装が剥がれたジャギアを貫いて持ち上げる。


「な…」と驚くディーオ達、篠原 秋人は鋭い顔をしていた。


 ジャギアは胸部を貫かれて何かを取り去れた。

 あの赤き結晶だ。

 ジャギアは、吐血して

「ぼくは…ぼくは…人族を救いたかった…」

と、告げて泥人形のように崩れて消えた。


 篠原 秋人が

「早く乗れ!」

と、時空戦艦ラグナロクの入口を開けていた。

 それに急いでディーオ達とララ達が乗り込むと同時に、流星群の時空の穴が深淵に落ちる穴へ変貌する。

 全てを呑み込む闇の闇、その中心に…

 ディーオ達は、ラグナロクの操縦室で深淵の穴の中心にいる存在を見た。

 あの全長が二百メートルの赤き結晶の昆虫のような化け物、その頭頂部には一人の少女が閉じ込められている。

 

 時空戦艦ラグナロクを操縦する篠原 秋人が

「リリア、待っていろ。直ぐに…」

と、告げて時空戦艦ラグナロクは膨大なエネルギーフレアを放って、深淵の穴から脱出して、次のヒトガミがいる世界へ向かった。



 その通過途中にとある球体の大地が見えた。

 深淵の穴の上に浮かぶ球体の大地。そこは…優しい風景が広がる世界だった。


 ディーオ達は、その球体の大地で、こっちを見ている者達がいた。

 三人の娘達、子供の頃のシルフィとエリスに、ロキシーだった。

 

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