全ての路の果てに

第29話 帰るべく決戦

 ディーオは、この世界の事について色々と調べる。

 無論、それはこの世界で主要な地位にいる龍神オルステッドのお陰でもあった。


 そして、分かった事は、この世界は…自分が産まれた世界の延長ではないか?と思うようになった。

 理由としては、世界中で広まっている技術だ。

 魔法と工学が融合している技術で、これが将来…自分があの世界で活動した場合に、予想される未来の技術と一致している。

 だが、歴史が違う。

 そして、この世界は自分達の世界のように閉じられた時空にはない。


 ここの六つの世界は、六つの惑星がゲートという転移システムによって繋がっている。つまり、同じ広さの別惑星同士が繋がっているという事だ。

 

 似ているようで違う。

 だが、似ている部分がある。

 つまり、自分の産まれた世界の平行延長世界としたら…道理が、理屈が合う。

 だからこそ、この世界に来られた。


 ディーオは、脳裏にとある事が過る。

『これで君は私の干渉から解放され、自由だ。好きに生きるといい』

と、告げたオリジナルのエピオンの言葉だ。

 空しいけど、この言葉の意味が理解できる自分がいる。

 そう、自分は、エピオンが干渉して行動する為に作られたエピオンの複製品。

 だからこそ、エピオンの記憶と人格、能力がインストールされていた。

 そして、もし任務が終えた場合の慰謝料として…超時空戦艦であるリーブラとアクエリアスが…。


 オレは…任務を果たす為の道具だった。

 その任務とは、多分、ヒトガミの抹殺とそのヒトガミが世界を操作する力を発揮していた能力を奪取する事。

 ヒトガミも最初は、相手の利益があるからこそ、加えていたが…その目的が…自分の抹殺とは思ってもいなかったろう。


 アルスの家の庭で苦悩するディーオ。

「どうすれば良いんだ?」

 未来が思い描けない。

 今まであった任務も意義も、オリジナルのエピオンが操作して寄越した命令。

 それが無くなった時…自分の存在意義は?


 考え込んでいるディーオにリリアが来る。

「ディーオ」


 ディーオは答えない。

 自分が分からない。自分が自分ではなかった。もしかして、このリリアとダリスやエレナの三人を愛している気持ちさえも設定された偽物かもしれない。


 リリアが唐突のディーオを抱きしめる。


 ディーオは戸惑い

「リリア、どうして…?」


 リリアが泣きながら

「私達の気持ちは、ウソじゃあ無いわ」


 ディーオは自分の左手にハマっている双極の指輪を見る。

 そう、自分達は精神の深い部分まで繋がっている。

 自分の気持ちがリリアにまで伝わったのだ。


 リリアがディーオを抱きしめながらキスをして

「私、良かったわ。ディーオがエピオンじゃあなくて、ディーオは…私達の世界で生まれた同じ命だって」


 ディーオが震えながら

「でも…ぼくは、オレは…ただの任務を果たす為の人形だった」


 リリアが

「いいじゃない! もう、そんなの関係ない。ディーオはディーオ、私の大切なアナタなの、それでいいのよ。ダリスだってエレナだってそう思っている。それとも、今のアナタの気持ちは…ウソなの?」


 ディーオは、リリアに抱きしめられているだけで、不安が無くなる。

 リリアとの一体感で寂しさや苛立ち、恐怖が癒やされる。

 そうだ、この気持ちはウソじゃあない。本当に感じている。

 本心から愛している気持ちだ。

 オレは、彼女たちを愛している。


 ディーオもリリアを抱きしめて

「ありがとう…リリアの言う通りだ。オレはオレだ。君達をリリアをダリスをエレナを愛しているディーオ・アマルガムだ」


「うん」とリリアが頷いた。


 そこへ「お取り込み中、悪いんだけど…」と二人に声を掛ける人物がいた。


 ディーオとリリアは、声のした後ろを見ると、そこには…この世界のエリスとシルフィとロキシーの三人がいた。

 三人は静かに空から降りて来たのか、龍族の翼を伸ばしていて仕舞おうとしていた。


 ディーオが三人に

「あの…この世界の…」


 シルフィが頷き

「ええ…そうですよ」

と、この世界の出身であろうシルフィとロキシーにエリスがいた。


 ディーオが渋い顔で

「ぼく達の世界に来た。この世界のルーデウスさんを…帰還させようとして…」


 ロキシーが頷き

「その通りです」


 ディーオがとある推測が過り

「ここと、ぼく達の世界を行き来できる方法を…知っているんですか?」


 シルフィが頷き

「一応はね…」


 エリスが

「アンタ達は、なんで…ここにいるの?」


 ディーオが後頭部を掻きながら

「ヒトガミが倒された事によって、何らかの方法で…この世界に通じる時空の穴に飲まれて…ここへ」


 エリスが残念そうに

「そう…じゃあ、ルーデウスの居場所は分からないのね」


 ディーオは頷き「はい…」として

「もしかして、三人も…」


 ロキシーが頷き

「見失いました」


 ディーオは微妙な顔をして

「すいません。ぼく達は、多分、役に立てないかもしれません。けど…」


 シルフィが

「帰る方法だけは、教えるよ。君達は…巻き込まれたようなモノだから…」


 ディーオは頭を下げ

「ありがとうございます」


 シルフィが説明した帰る方法とは、アスラ帝国のフィアット領の上空には、時空の穴が定期的に発生しているらしい。その発生した時空の穴へ飛び込めば、ディーオの世界に帰れる…と、そして…妙な事を

「その時空の穴には、他に二つの世界と繋がっているんだよ」

と、シルフィが説明した。

 つまり、この世界も合わせて四つの世界と繋がる時空の穴がある…と。


 ディーオ達は、それを聞いて帰る支度をする。

 それに、彼女達三人も同行してくれる。

 もう一度、ディーオ達の世界に行ってルーデウスを探すつもりらしい。


 ディーオ達は準備をして、オルステッドとアルスの見送りでアルスの家の庭先に出ると、この世界のシルフィとロキシーにエリスが使う飛空艇?いや、時空戦艦が現れた。


 それを見てディーオが

「これ…誰が…作ったんですか?」


 深紅に染まる龍の形をした時空戦艦、その側面にはラグナロク…と船名があった。


 エリスが

「あの時空の穴を通る途中で、穴の中で見つけたのよ」


 ロキシーが

「ロックも外れていて、誰でも入れるようになっていて」


 シルフィが

「私達も時空の穴を通る時は、相当に消耗するから、使わせて貰っている」


 ディーオが、はぁ…と時空戦艦を見ていると唐突に耳元で「ごめん」と声がして

「え?」

と、告げた瞬間、背面から胸にかけて何かが貫いた。


 ご…と吐血するディーオ。


 唐突の事で全員が混乱する中、ディーオの背後で不可視のステルスの力から姿を見せた青い魔導鎧を纏う篠原 秋人が…ディーオに剣を突き刺していた。


 リリアとダリスにエレナは、直ぐに篠原 秋人を攻撃しようとしたが…頭上から稲妻の嵐が降り注ぎ、ディーオと篠原 秋人から全員を離した。

 その稲妻の嵐を放ったのは、あの龍神の大賢者ルーデウス、その人だった。


 篠原 秋人が突き刺した剣から、ディーオが何かの結晶に包まれる液体があふれ出して、ディーオを赤き結晶の中へ閉じ込めた。


 龍神の大賢者ルーデウスが回収の魔法で、篠原 秋人と結晶に閉じ込められたディーオを持って行く。

 そこへエリスが

「ルーデウス! アナタ、何をやっているの!」


 龍神の大賢者ルーデウスは、エリスに

「ワシの家族と世界を守る為さ」

と、告げた後、ディーオの伴侶達、リリアとダリスにエレナに

「夫を取り戻したくば、神の眼の下まで来い」

と、告げると大規模な空間接続転移で、天井に神の眼まで繋いだ回廊を出現させ、そこに消えた。



 ーーー



 神の眼の巨塔、神の眼の間である巨大ドーム。

 中心にある神の眼の下に、ディーオが入った赤い結晶があり、そこから神の眼に向かって結晶の先が伸びて神の眼と繋がっていた。


 その前に龍神の大賢者ルーデウスが浮かび見つめている。

 その下で篠原 秋人が

「これで…リリアが救われるんだな」


 龍神の大賢者ルーデウスが

「ああ…お主の望みが叶えられるぞ。篠原 秋人殿…」


 篠原 秋人が俯く。


 ディーオを結晶の中に閉じ込めて三時間、時空戦艦ラグナロクが神の眼の間に到着した。


 ラグナロクから、エピオンの装甲を纏ったリリアとダリスにエレナの三人が降りて、ダリスが怒りの顔で

「ディーオを返して貰う!」


 その他にラグナロクからシルフィとロキシーにエリスの三人が降りて、シルフィが

「ルディ、なんでこんな事をするの?」


 ルーデウスは、全員に笑み

「なぜ? 簡単さ。そうする必要があるからだ」


 六人の彼女達に、龍神の大賢者ルーデウスであるルーデウスの威圧が襲いかかる。

 ルーデウスの周りに四つの剣のような杖が衛星のように周回して、その杖から炎、稲妻、重力、光の魔力が溢れている。

 龍神の大賢者ルーデウス、三度の転生者にして、神の眼の使徒であり、神の眼から無限に魔力を取り出し、それを今まで会得した秘技にて発動する最強の魔道士。

 戦闘力、経験値、どれをとっても六人に敵う気配はない。

 だが、それでも…


 リリアは構えて

「アンタを殺してでもディーオを返して貰う」


 ダリスも構えて

「その通りよ。誰もディーオを奪わせない」


 エレナも構えて

「アタシ達四人で帰って、一緒に暮らすの。それを邪魔するな!」


 龍神の大賢者ルーデウスがあざ笑いを浮かべ

「なら、来い。取り返してみろ…小娘共が」


 彼女達三人は、超音速で突撃する。


 龍神の大賢者ルーデウスの周囲を回る剣の杖が膨大な魔力を放って変貌する。

「我が究極の奥義、フォースゴッドディス(四神獣)」


 光の魔力を放つ剣杖は、白き閃光のタイガーに、紫電を放つ剣杖は青き雷龍に、重力を放つ剣杖は黒き重力のドラゴンに、炎を放つ剣杖はフェニックスに。


 超音速で走るリリアとダリスにエレナのエピオン武装へ、フォースゴッドディスが襲いかかる。

 一撃で吹き飛ばれる彼女達三人。


 そこへエリスが

「もう、止めて! ルーデウス!」

と、ドラゴンヒューマンの竜人に変貌して攻撃する。


 ロキシーも青きドラゴンに変貌して

「ルーデウス! こんな事をして何になるんですか!」

と、青きブレスを放つ。


 シルフィは、白き竜人に変貌して

「もう…こんな事に意味なんてないよ! ルディ!」


 フォースゴッドディスがエリスとシルフィにロキシーへ牙を剥くが、それをかいぐり彼女達三人が龍神の大賢者ルーデウスへ迫るが…。


 龍神の大賢者ルーデウスは

「意味ならあるさ。これで…ワシの家族や、世界を守れる!」

と、龍神の大賢者ルーデウスの周囲に黄金の光の鍵盤が出現して、そこから全てを吹き飛ばす力が放たれて


『ぎああああああああああ!』

と、全力のエリスやシルフィとロキシーを吹き飛ばした。


 その隙を狙って、ダリスにエレナとリリアが向かう。

 リリアがタイムリープを発動させる。

 向かってくるフォースゴッドディッスの動きが何度も繰り返す時間波の影響で止まる。


 その隙を彼女達三人が狙うが…

「甘い、それは…アレキサンドライトの力と同質ゆえに…ワシには効かん」

と、龍神の大賢者ルーデウスが自身が待とう黄金の鍵盤を発動させて、リリアのタイムリープを無効化した。

 時間をコントロールする力が効かない。


 再び彼女達三人は、フォースゴッドディスに吹き飛ばされるが、それを受け止める者達がいた。


「ルーデウス!」

と、リリアとダリスにエレナを受け止める龍神オルステッド。


 龍神の大賢者ルーデウスが

「オルステッド様…それと、アルス…」


 龍神オルステッドと共に息子のアルスが来て

「父さん、こんな事…止めてくれ!」


「できん」と龍神の大賢者ルーデウスは告げて、二人を攻撃して吹き飛ばす。


 龍神オルステッドが

「前龍門、後虎門」

と、龍族最大、龍神の継承者だけに伝わる絶対防壁で攻撃を何とか防ぐ。


 強烈な閃光の本流を受け止める龍の防壁と、虎の防壁。

 その二つを持って、やっと防いでいる状態。全員が動けないのだ。



 その頃、赤き結晶の中にいるディーオは、とある世界にいた。

 周囲が星々の空間で、その目の前にある黄金のピラミッドの頂天にある王座に誰かが座っているのをディーオが見上げていた。


 ディーオは、感じて分かる。

 ここは、現世より遙かに高位の次元。

 その場で、最高の頂天の王座にいる人物。

 かつて、ホーリートライアングルという幾千もの時空群を統括して安念に支配していた神人(ホモデウス)であるアルダ・メルキオールの残像がいた。


 神人アルダ・メルキオールの残像が訪ねる。

「汝よ。再び汝は、神人となるか?」


 ディーオの脳裏の神人の強大な力の意味が入る。

 この力を得れば、全てが叶う。

 神さえも時さえも、何もかも…自在に…。

 だけど、それは人を捨てる事になる。

 ディーオ・アマルガムという存在を捨てる事になる。

 おそらく、この力を得れば全てが解決するだろう。

 だけど、そうなれば…。


 ディーオの後ろに三つの光が届く。

 その光は、リリアとダリスにエレナに通じていて、そのリリアとダリスにエレナの三人のお腹には、ディーオとの愛の結晶がいる。

 その愛の結晶である子供達がディーオを呼んでいる。


 ディーオは、神人の残像に背を向けて

「ぼくは、もう…君じゃあない。君の魂を受け継いでいるけど…君じゃない」


 神人アルダ・メルキオールの残像は、満足そうに頷いて

「よろしい。前に進むといい。新たなる魂よ」

と、神人アルダ・メルキオールの残像が消えて、そこには光が現れる。


 ディーオは、その光を握る。

 超越していく存在の光がディーオに渡された。

 かつて、それは神人アルダ・メルキオールが負けた暖かさを持つ光を手に、ディーオは戻る。

そして、ディーオに残っていた神の眼、神人アルダ・メルキオールの力が抜けて、別の存在、人型の全能を形成した。

 それは、ディーオの前世であったアレキサンドライトの記憶と魂を元に生まれた。



 龍神の大賢者ルーデウスの猛攻に全員が負けそうになる。

 その時に、神の眼とそれに繋がる赤き結晶のディーオが閃光を放つ。

 神の眼の下に閃光が集まり、新たな存在を構築する。

 それは光が無限のメビウスの輪になり、それが二つ重なった花柄となった。

 同時に、ディーオがいた赤き結晶から、白と赤のラインを持つ装甲を纏ったディーオが現れる。


 同時に、リリアとダリスにエレナが待とうエピオンの装甲が、ディーオと同じ白と赤のラインを持つ装甲へ変貌した。


 龍神の大賢者ルーデウスは、神の眼の下に現れたメビウスの輪の花柄と、変化したディーオを見て、笑みを浮かべる。


 白き装甲のディーオが右手に光の剣を持ち、消えた。

 光を越えた世界で、龍神の大賢者ルーデウスへ迫る。

 同時に同じ白き装甲をまとうダリスにエレナとリリアも、光を越えた世界で疾走する。

  

 龍神の大賢者ルーデウスは、捕らえる事が出来ない領域の斬撃によって倒された。


 浮かんでいた龍神の大賢者ルーデウスの全ての攻撃が消えて

「これで良い」

と、ルーデウスは床に転がり、そこへ


「ルディ」とシルフィとロキシーにエリスの三人が駆けつける。


 深い傷を負ったルーデウス。

 それを治療しようとシルフィとロキシーが治癒魔法をかけるも治らない。

 シルフィが

「どうして…」


 ルーデウスが

「これが…神の眼の力を最大まで引き出したツケさ。もう…肉体がもたない…」

 急速にルーデウスが老けていく。


 龍神オルステッドとアルスが来て、アルスが

「父さん…」


 ルーデウスは息子アルスに微笑み

「すまんな。こんなワガママな父親に付き合わせてしまって…」

 そして、オルステッドに

「オルステッド様…アレが…新しいこの世界を支える力です。投入した全ての力を無限に増殖する装置です。神の眼のように暴走する事も、未知の力も招来させない」


 そこへ、隠れていた篠原 秋人も出てきて

「篠原 秋人よ…。汝が望むリリアの解放を、その者達がやってくれる」

と、ディーオを見る。


 篠原 秋人はディーオ達四人を見つめる。


 ディーオ達は少し離れた所でルーデウス達を見つめている。その顔は悲しげだ。


 ルーデウスが消え行く中で

「オルステッド様、神の眼を破壊してください。アレは…あってはなりません。恐ろしい程に万能な力だ。故に…多くの者達の道を惑わした…」


 オルステッドは頷き「分かった…」と答える。


 ルーデウスがアルスに

「アルス、ジークにも伝えてくれ、ワシの子として生まれてくれてありがとう」


 アルスは涙して頷いた。


 ルーデウスは何とか治療しようとシルフィとロキシーに、泣きそうな顔のエリスに

「君達に伝える。ワシに囚われずに…幸せになりな…さい…」

と、ルーデウスは急速に老化して…亡くなった。


 シルフィとロキシーにエリスの三人の鳴き声が響く。

 さらにそこへ

「この無限増殖のメビウスの輪花を創造する為に、最大限に神の眼の力を引き出そうとした結果だ」

と、全員の後ろにエピオンが現れる。


 ディーオ達が構えるが、エピオンが首を横に振り

「お前達と戦うつもりはない。これを回収しに来ただけだ」

と、ディーオが抜けた赤き結晶を触る。


 エピオンが話を続ける。

「この結晶は、ディーオ達がいた世界のヒトガミから取り出した神の眼と繋がる結晶から作られている。篠原 秋人がディーオに刺した剣に偽装して、ディーオに突き刺す事で発動して、そして…龍神の大賢者ルーデウスが神の眼の力を極限まで引き出した事で、ディーオの魂は、神の眼の始まりと接触して…あのメビウスの輪花を作った。その反動として…それを…覚悟していた」


 ディーオが

「どうして、この世界のルーデウスさんは、神の眼の力を極限まで引き出せるのですか?」

と、エピオンに問う。


 エピオンが

「この世界のルーデウスの体内には、神の眼の完全適合者であったアレキサンドライトとエメラルドの血が入っていた。それと、神の眼の信徒として前世の記憶を持つ形質も加わって、新たな道標を作れる程の力を神の眼から引き出せた」


 唐突に、エリスが牙を剥いて死んだルーデウスの首に食らいついた。


 それに全員が、え!と困惑するが、ルーデウスの亡骸に食らいついたエリスは、ルーデウスの血を飲み込んで、血盟秘術を発動させる。


 それにエピオンが

「まさか! 遺体に残る血の力の残滓を!」


 エリスが泣きながら叫ぶ

「神の眼よ! 我は願い乞う!」


 メビウスの輪花の上にある神の眼が光を放つ。

 そして、神の眼から赤き結晶の先が伸びて、エリス達を包む。

 それにシルフィとロキシーは静かに待っている。


 ルーデウスの遺骸と、シルフィとロキシーにエリスを呑み込んだ赤き結晶は、神の眼を頭頂部にして歪な結晶の巨大虫のようになり、時空の穴を形成する。


 突如、発生した時空の穴に、ディーオ達は呑み込まれた。


 ディーオ達は互いに離れまいとして、お互いに抱き合い星々が落ちていく風景の時空の穴を通過する。

 そして、再び出口の光から外に出た。


 ディーオ達は、とある草原に着地した。

 ディーオ達は、周囲を見渡して

「ここは…どこだ?」

と、見つめていると、正面の小屋から一人の青いおさげの少女が姿を現す。


 ディーオ達は、それを見て

「ララ先生?」


 それはララだった。

 ララは首を傾げ

「どちら様でしょうか?」


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る