第21話 終焉と覚醒
クレイオルがサタンヴァルデットの巨獣へ変貌した。
赤黒い結晶の巨大獣へ変貌した彼は、アスラ帝国の首都へ向かう。
その巨大獣から首都を封鎖する結界が放たれて、誰も首都から逃れられない。
クレイオルのサタンヴァルデット、罪喰いの巨大獣が首都の上に来ると、その体から生える手の化け物が罪人を捜し出して喰らい殺す。
殺人、強姦、窃盗、詐欺師を手の形の化け物、喰手触手が手の平に備わる花弁のごとき三つの眼と、花弁のごとき獣の牙が並ぶ口で罪人を捜し出す。
罪の色、罪の臭い、それを的確に感じ取り
「ぎああああああああ!」
叫び声が響き渡る。
大人を一握り出来る喰手触手が罪人を見つけて捕まえ、すり潰すごとく罪人を喰らい尽くす。
罪人の九割は男性だ。
なので、男性ばかりが捕まり、喰らわれる。
女性達や子供は、スルーされて、目の前で罪人である男達が喰らわれる。
まれに罪人の女性もいるが…
「ひぃ…」
と、女性がおびえる。
女性の匂いを嗅いでいる喰手触手だが…その罪を誘発する罪人の男を見つけて
ゴオオオオオオオオ
喰らい尽くす。
ディーオは町中を疾走する。
エピオンの装備を纏って屋根を飛び回って宿泊所へ、妻達三人がいる部屋のベランダへ飛び込む。
「リリア! ダリス! エレナ!」
そこには武装する彼女達がいて、ダリスが
「ディーオ、何が起こっているの?」
ディーオはダリスを抱きしめて
「逃げよう。あの化け物には、どうやっても勝てない!」
リリアが
「説明して。どういう事」
ディーオが苦しい顔で
「クレイオルを知っているな」
エレナも来て
「ええ…確かディーオと一緒にクリスタルヴァイドについて調べていた…」
ディーオが厳しい顔で
「クレイオルは、ヘオスポロス以外の勢力と繋がっていた。そこから…あの化け物になる技術を…力を提供されていた」
と、外に見えるクレイオルのサタンヴァルデットを指さす。
ダリスが困惑して
「ええ…そんな。何で?」
ディーオが
「クレイオルは、アスラ帝国に滅ぼされた小国の王子だった。アスラ帝国にアリエル陛下に復讐する為に…今の力を手に入れた。アレは…罪人を喰らい尽くす大量殺戮兵器だ!」
ダリス、エレナ、リリアが顔を見合わせて、エレナが
「止める事って出来ない?」
ディーオが首を横に振り
「無理だ。アレは…この結界が覆った首都にいる罪人全員を喰らい殺すまで、止まらない」
ダリスが
「エピオンの力を」
ディーオが
「エピオンの力じゃあ対応できない! アレは…領域が、この現世より高い次元にいる存在だ。魔法でも物理でも、全ての攻撃がスルーか、完全防御される。無理だ! エピオンの力は物理の力だ。勝てない」
リリアが
「ディーオ、戦った事があるんだね」
ディーオが頷き
「ああ…昔、ヘオスポロスの兵士だった時に衝突したが…全く敵わなかった。アレが発動した世界は、大量の罪人が食い殺されて、人口が三分の二に減った」
エレナが
「じゃあ、もし…アレが首都から離れたら…」
ディーオが鋭い顔で
「クレイオルの復讐心を核にして動いている筈だ。首都を壊滅させれば…自壊するだろう。それまで、逃げ回ればいい」
リリアとダリスにエレナの三人が厳しい顔をして、ダリスが
「じゃあ、ダメだよ。アレを止めないと…」
ディーオが
「だから、止められないんだって!」
リリアが
「アレは、罪人を喰らい殺すって言っていたわよね」
ディーオが頷き
「そうだ。だから…」
エレナが
「どんな罪で喰らい殺すの?」
ディーオが渋い顔で
「殺人、強姦、窃盗、詐欺の四つを基準にして…」
ダリスが
「アタシ達、その罪を犯した事がないわ。ディーオは?」
ディーオは首を横に振り
「そんなの、この生を受けてから一回もない」
リリアが
「確かに、罪はいけない事だよ。でも…それを反省したり、どうしようもない事で犯してしまう人達だっている。それを深く後悔して懺悔している人も殺してしまうの?」
ディーオは
「ああ…そうだ。懺悔して後から善行を積もうとも、罪人は罪人だ。反省して人を助け続けても罪人は罪人だ」
エレナが
「倒せないけど、みんなが逃げるまでの時間は稼げるよね」
ディーオは頭を抱える。彼女達の考えが分かったからだ。
「今は、何とかしてホーリートライアングルのラプター達へ連絡している。ラプター達なら、何とか出来る。それまでの時間稼ぎなら…」
ダリスが「やろう!」と告げてリリアとエレナも頷いた。
ディーオは額を掻き上げて
「全く…分かったよ。オレも君達に付き合うよ。それが…夫婦ってもんだな」
「ありがとう」とダリスが微笑む。
ーーー
一人の女性が町中を歩いている。
アスラ帝国の首都は、突如発生した巨大な化け物から逃れようとする人々でごった返していた。
彼女は、ヴィオラだった。
ヴィオラは、皇帝城から見えるクレイオルの成れの果てを見て、絶望した。
助けようとした…間に合わなかった。
皇帝城は、首都の防衛に手一杯で、ヴィオラに構う者はいなかった。
ヴィオラは一人、クレイオルのサタンヴァルデットへ向かう。
人の流れとは逆に進む。
首都を蹂躙する二百メートルの結晶の化け物。
ヴィオラは、その上部にいるクレイオルの上半身だけを見ていた。
そこへ彼女は向かっている。
その最中、逃げる人々の上を飛んでいく四つがあった。
ディーオ達四人だ。
深紅のエピオン装甲を装備して、背中にエピオンの翼を伸ばして飛んでいく。
向かう先は、クレイオルのサタンヴァルデットだ。
ディーオを先頭に両脇にリリアとダリス、その三人の後ろにエレナ。
四人はその布陣でクレイオルのサタンヴァルデットへ向かう。
ディーオが
「おおおおおお!」
雄叫び、両手にエピオンのヒートロットから構築された巨剣を握る。
その剣先から膨大な熱エネルギーの刃が伸びて、クレイオルのサタンヴァルデットへ振り下ろされる。
頭上から落ちる赤熱発光する光の刃。
だが、クレイオルのサタンヴァルデットがそれを浴びた瞬間、その熱エネルギーが霧散して消える。
ディーオが忌々しい顔をする。
完全物理無効。
これがサタンヴァルデットの能力だ。
リリアとダリスが、魔力とエピオンの力を混ぜたエネルギーの剣で斬りかかる。
音速を突破した動きでクレイオルのサタンヴァルデットを切り刻むように走るが…。
その力さえ無効化されて消える。
サタンヴァルデットの頭上で出たダリスとリリア。
「ウソ…でしょう」
と、ダリスは驚きリリアが苦々しい顔をする。
エレナが遠くで
「なら、これで!」
バーストノヴァ!
オールステッド直伝、神級魔法を放つ。
エレナの背後から幾つもの巨大な光の柱が伸びてサタンヴァルデットを攻撃する。
エレナの放った攻撃は、この首都を壊滅させる程に強大だが…。
二百メートルの巨体を持つサタンヴァルデットの全体を包み込む程の攻撃でも、サタンヴァルデットは簡単に飲み込んで無効化した。
ディーオが苛立つ
「本当にムカつく程の無敵さだよ!」
魔法も物理もダメ。
ならば…
ディーオは幾つもの圧縮したエネルギーの機雷をサタンヴァルデットの周囲に浮かべる。
それがサタンヴァルデットに接触して爆発、だが…その爆発さえも無効化。
エレナが
「ダリス、リリア! 力を貸して!」
「おう!」とダリス、「分かったわ!」とリリア。
エレナは飛翔すると、それにダリスとリリアが続き、三人のトライアングルを形成すると、エレナが
「混合魔術…」
エレナとダリス、リリアの三人はディーオのエピオンを通じて繋がっている。
その繋がりでお互いの力を共有する。
エレナは魔力、リリアは時の速度を操作する神子の力、ダリスはその身に宿った龍族の力。
魔力と龍族の力、ドラゴンオーラの混合体を作り、それをリリアの時が遅くなったり加速したりする力で増幅。
エレナが
「見よう見まね! 独自独善魔法!」
ヘブンアンドアース(天地開闢)
エレナ達三人を中心に世界を歪ませる曼荼羅が発生して、それをサタンヴァルデットへ向ける。
それを…サタンヴァルデットが無効化…できない。
サタンヴァルデットが動きを止めて、末端から蒸発するように砕け始める。
ディーオがそれに
「すげー 流石、魔法の天才エレナ!」
だが、サタンヴァルデットがそれを全身から伸ばす手の平の龍の顎門で喰らい尽くす。
それを見てエレナが
「ウソ…」
世界を組み替える程の魔法をサタンヴァルデットは喰らい尽くす。
そのお陰で止まった。
そこへディーオが
「おおおおお!」
と、サタンヴァルデットの頭頂部にいるクレイオルへ斬りかかるが…別の喰手触手に弾き飛ばされる。
それでも食らいつこうするが、更なる喰手触手がディーオに追撃する。
ディーオを押さえる喰手触手がディーオの匂いを嗅ぐ
まさか…とディーオは喰われるかもしれないと…。
そして、思い返した過去が、あの誘拐された時に誘拐連中を殺した事だ。
罪はない…と言ったが、それは裁かれていないだけであって、殺人は殺人だ。
ディーオの匂いを嗅いだサタンヴァルデットの喰手触手が、顎門の手を閉じてディーオを殴った。
それに飛ばされた。
どうやら、罪人選別で弾かれたようだ。
家の屋根を突き破るディーオ
「う…」
と、起き上がりつつ少し安心してしまったが…直ぐに外へ飛翔すると、エレナ達の魔法を解除したサタンヴァルデットがそこにいた。
「クソ…」
と、ディーオが唸るとその隣にリリアとダリスにエレナの三人が来た。
リリアが
「どうする? 全く攻撃が効かない」
ダリスが
「他に手立ては…」
サタンヴァルデットがとある高い塔の部分に来ると、エレナが
「アレ!」
と、塔の頂上を指さす。
ディーオとリリアとダリスがそこを見ると「な!」と三人は驚く。
塔の頂上にヴィオラが立っていた。
ヴィオラは、近づくサタンヴァルデットを見下ろすと、丁度良くクレイオルの取り込まれた姿があった。
ヴィオラはそこへ向かって飛び込む。
そして、クレイオルを抱きしめる。
サタンヴァルデットに吸収されようとする夫クレイオルと共にヴィオラも取り込まれ始める。
ヴィオラの胸部には、ディーオに見せたサタンヴァルデットの一部があった。
ヴィオラは、飛び込む前にそれを飲み込んでいた。
ヴィオラもクレイオルと同じくサタンヴァルデットに浸食されていく、そしてクレイオルと共に呑み込まれていく。
クレイオルに意識は…ない。
そんなクレイオルにヴィオラは
「これからは、ずっと一緒ですよ」
と、告げてクレイオルと共にサタンヴァルデットに吸収されてしまった。
サタンヴァルデットが更に巨大化する。
歪に膨れ上がり、二百メートルから八百メートルと大きくなり幾つも喰手触手の龍の顎門を伸ばすヒュドラへ変貌する。
巨大な翼を幾つも伸ばす、赤き結晶の多頭龍の化け物が完成した。
それを見てディーオが
「終わった。もう…無理だ。あの規模、アスラ帝国の首都だけじゃあない。アスラ帝国にいる全ての罪人を喰らい尽くすまで止まらない」
打つ手なし。
そこへ通信で
「お前等! 無事か!」
エピオンに備わる重力波通信機にラプターから音声が入る。
ディーオがそれを受けて
「何とか無事です」
通信機にラプターが
「良かった。緊急事態だからって聞いて急いで戻ってみれば、入れないし、こっちの世界の通信も使えないし。どうしようか…手詰まりだったから、お前ならこれが…って」
ディーオが
「現状を伝えます」
ラプターは、ディーオから話を聞いて
「そうか…サタンヴァルデットの…シンイラの連中が…」
ディーオが
「もう…無理です」
通信のラプターが
「……いや…まだ…ある。お嬢ちゃん達」
と、リリアとダリスにエレナの三人に呼びかける。
「え? 私」とリリアが自分を指さして、ダリスとエレナは戸惑い気味だ。
通信のラプターが
「お嬢ちゃん達に渡した…」
と、何かを言いそうになり止まる。
首都の外では、強大な七色の結界で弾かれているラプター達の時空戦艦がある。
その甲板で、通信を開くラプターが苦悩していた。
その隣にリュシュオルがいて
「ラプター これを何とかするには…」
ラプターが頷き
「分かっている。だが…やっと御方の…」
リュシュオルが
「彼女達を信じてみましょう」
ラプターが頷き通信を続ける。
首都内にいるディーオ達に、ラプターが通信で
「いいか、お嬢ちゃん達に渡した双極の指輪…あるだろう」
リリアとダリスにエレナの三人は懐から赤いリングを持つ陰陽の宝石が填まった双極の指輪を取り出す。
通信のラプターが
「それを嬢ちゃん達が装備して、残りの男性用の双極の指輪をディーオに…装備させるんだ」
ダリスが
「でも、これって繋がりを強めるだけの力しか」
通信のラプターが
「その繋がりが強くなる作用を使ってディーオの深層、心の奥深くまで入れ。そこに…解決する手段がある」
ディーオが困惑して
「何を言っているんですか? 確かにオレはエピオンの、ヘオスポロスのネオデウス・ウェポンの力は持っていますが…それ以上は」
通信のラプターが
「いいから、やれ! そうすれば分かる筈だ」
リリアが、男性用の双極の指輪を取り出して
「ディーオ、お願い」
ディーオは困惑気味に、左手を出して
「そんな事したって無駄だと思うけど…」
リリアがディーオの左手の薬指に双極の指輪を填めて、リリアとダリスにエレナの三人も同じく左手の薬指に双極の指輪を付ける。
四人の双極の指輪が淡く輝く。
そして、四人が深く、精神的な部分まで繋がる。
リリアとダリスにエレナの三人とディーオは、自分達の精神世界に入る。
それは瞬間の世界だ。
世界の現実の時間が停止して、自分達だけが動く世界へ入り込み。
ディーオが困惑している、リリアとダリスにエレナの三人がディーオの精神に、魂に触れる。
そこに、ディーオは…四人はあるモノを見た。
光を放つ宝石。その光は黄金色だ。それは眼のような象徴を象り、黄金の光を余すことなく放っている。
その黄金の光を放つ眼の存在がディーオを見る。
ディーオの意識が飛躍する。違う記憶が内側から溢れる。
ディーオだった精神が変化する。
白い軍服を纏う王へ変貌する。
その白き王は呆れたように眉間を寄せて
「やれやれ…こんな事になるとは…」
と、まるで幾星霜もの年月を経たような重い声色だ。
それにエレナが
「アナタは…誰?」
白き王はリリアとダリスにエレナの三人に微笑み
「神人、アルダ…いや、今は神の眼と呼ばれている」
四人がいる場所から強い閃光と稲妻が溢れ出す。
そこを皇帝城から見つめるアリエルは
「何が起こっているのですか?」
と、驚きを放つ。
四人の閃光から光の翼を伸ばす巨人が現れる。
それは急成長したサタンヴァルデットを遙かに超える巨大さだ。
サタンヴァルデットが止まって後退するが、それを光の巨人が稲妻で縛って止める。
光の巨人の中には、白き王になったディーオと、その周囲にダリスとエレナにリリアの三人が浮かんでいる。
白き王のディーオは、サタンヴァルデットのコアとなっている二人を見つける。
クレイオルとヴィオラだ。
お互いが離れまいとしてクレイオルとヴィオラは抱き合っている。
それに白き王のディーオが手を向ける。
リリアが
「お願い、殺さないで…」
白き王のディーオが
「心配するな」
と、告げる。
白い巨人から無数の光と稲妻がサタンヴァルデットを包み、分解していく。
サタンヴァルデットは吸収した罪人達の魂を放出しつつ崩壊していく。
ヒュドラ型の体は、末端から砂のように風化して、残ったのは…クレイオルとヴィオラの二人だ。
その二人を優しく包み込む光の巨人。
そして、ゆっくりと二人を地面に下ろすと、白き王のディーオは、ディーオに戻り、それをリリアとダリスにエレナの三人が抱えると、その内部にいる四人は光の巨人から下ろされて、光の巨人が消えた。
その頃になると、首都を覆っていた結界も消えて、夜空が戻っていく。
クレイオルが目を覚ますと
「ここは…」
と、周囲を見る。
そして隣には、離れまいと抱きしめるヴィオラがいる。
「ヴィオラ…なぜ…」
その頭上から、ラプター達の時空戦艦が降り立ち、ラプターとリュシュオルが降りて
「話…聞かせて貰うわよ」
と、リュシュオルがクレイオルを見つめる。
ディーオ達は、ディーオはリリアに膝枕され、それを心配げにダリスにエレナが見つめていると、ディーオが目を覚まして
「ああ…ここは?」
三人共、安心して肩の力を抜きリリアが
「良かった…」
ディーオが起き上がり
「何が起こったんだ?」
と、左手で額をなでると、填まった双極の指輪を見つけて
「ああ…これを填めた後…」
と、外そうとするが
「あれ?」
全く外れない。
完全に皮膚と融合しているようで、皮膚のようにつまむと伸び縮みする。
そして、宝石なのに触られてる感触を感じる。
「えええ?」
リリアとダリスにエレナも、エレナが
「どうしよう。アタシ達も同じだわ」
そこへラプターが来て
「やっぱりそうなったか…」
と、来た。
ディーオがラプターを見つめて
「事情を…説明してください」
ラプターが面倒な顔で後頭部をなでつつ
「それには、欠点がある」
ーーー
全てを見終わったフェイス01がその場から立ち上がり
「さて…終わったようじゃから、行くか」
と、背後に二人の影が。バディーガーディーと篠原 秋人の二人だ。
フェイス01が
「ああ…お膳立ては整った。後はヒトガミがどう動くかだが…」
バディーガーディーが
「面倒な事を…」
フェイス01が
「バディーガーディーよ。連中に流している情報は?」
バディーガーディーが
「問題ない。ヒトガミのヤツがシーローン王国で何かやろうとしていると…グレイラート騎士団に流している。この世界の宗主をどうするか前に…」
フェイス01が頷き
「上々、これでいい。後は頼んだぞ…二人とも」
秋人がフェイス01に迫り
「本当にこれでいいんだろうなぁ…」
フェイス01が仮面の口元を笑み
「ああ…君のリリアを救いたいという願いは達成され、ワシの願い…ワシの世界を救いたいという事も叶う。バディーガーディーは?」
バディーガーディーが楽しげに笑み
「まあ、ヒトガミのヤツの最後を見れるなら…」
フェイス01が頷き
「大丈夫さ。全ては予定調和の通りに…」
ヒトガミがいるこの世界の上位域で、ヒトガミが地上を見て
「はは…まさか、君の複製に神の眼の使徒がいるなんてねぇ…」
隣には深紅のネオデウス・ウェポンのエピオンが立っている。
エピオンが腕組みして
「私と複製とのリンクが切れてしまった。どうやら、複製は…神の眼の魂を持っていたようだ」
ヒトガミが
「偶然にしては凄いね」
エピオンが鋭い視線で
「偶然ではない部分がある。生まれた場所も、相当に運が良い場所で、持っている素養も揃っていた。過去の私とは違う」
ヒトガミが
「へぇ…まあ、仕方ないよ。勝ち組になるヤツは、生まれながらにその運に恵まれているからね」
エピオンが目を閉じて
「その運という偶然を過信して、墜落する者達をたくさん、戦場で見てきたがね…」
ヒトガミは怪しく笑み
「でも、そのお陰でぼくは…欲しい力を手にできた」
と、手を上げると…その背後に巨大な塔が出現する。
電子回路と魔方陣の歯車が動く、巨大な塔の最上部には黄金の光を放つ眼を象った物体があった。
ヒトガミが嬉しげに笑み
「ぼくは、更に…神の眼を操作する力を得た。後は…シーローン王国にいるラプラス因子の集約体に入り込んで進化するだけ。さあ、これで世界を元に戻して始められる」
エピオンがヒトガミを横見して
「どうして、人の、人族の世に固執するんだ?」
その問いにヒトガミは
「それがぼくの願いだからさ。龍族や魔族、獣人族に踏みにじられて堪るか…」
エピオンはフンと鼻息を荒げ
「どちらでも良い。君から得られる神の眼のデータさえ貰えれば…」
ヒトガミが怪しく笑み
「満足いくデータを渡すから…心配しないでよ」
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