エレメンタルタワー攻略

第16話 家族の始まり

 アクエリアスを回収してアスラ帝国へ向かうディーオ。

 十五キロの超巨大工業生産戦艦に揺られて、ディーオ達が向かう最中

「ではな!」

と、バディーガーティが手を上げて通り掛かった北部大陸、北方大地のど真ん中へダイブした。


「ええええ!」

と、ディーオは驚き甲板の手すりから身を乗り出す。

 高度としては一万メートルは下らない。

 そこから墜ちた。

 アクエリアスの周囲には防壁バリアが展開されているので、高度一万メートルの低温や大気の薄さ、あと、宇宙線といった害は防がれて地上のようにはなっているが。

 防壁バリアは、外側の外力には強く内側から墜ちれば、簡単に出られる仕様だ。

 だから、バディーガーティは墜ちながら防壁バリアを少し紫電を纏って通過して、墜ちていく。


「大丈夫なんですか?」

と、ディーオが後ろにいるラプター達に。


 ラプターが肩をすくめて

「まあ、見てろ」


 ディーオが見ていると、バディーガーティが腹部のポケットから何かを取り出し広げると見事にパラシュートになってゆっくりと地面に落下していく。


「ああ…」とディーオは告げて心配無用だったのを確認した後。


「ディーオ!」とリリアが駆け付けて

「あの、バディーガーティってバカっぽい大きな人を捕まえて置いて…」


 ディーオが墜ちた先を示して

「あそこ…」


 リリアも手すりから見て

「ああ…」


 ディーオが

「捕まえて置かなければいけない人だった?」


 その問いにリリアは頷き

「ええ…ルーデウスさん達と連絡を取ったら…そう…」


 ディーオは北方大地に消えたバディーガーティに

「ムリそうだ。ここでアクエリアスを止めて、アクエリアスの探査システムで探しても」


 ラプターが

「それも時間の無駄だ。アイツ、頑丈だし足速いし、もう…何処かの国に紛れ込んだかもしれん」


 ディーオが

「まあ、とにかくアスラ帝国へ向かおう」




 ーーー


 アクエリアスに乗って移動中に、ラプター達は正体を現した。

 現地民の軍服ではなく、超時空連合国家ホーリートライアングルの軍服に。

 飴色に近い象色の軍服。

 こっちの世界の飛空艇に偽装していた外観は、ルービックキューブの回転のように面が変わって黄金の槍先の如き船体と、その周囲を周回する黄金の翼が出現した本来の形に戻る。


 それを前にするディーオ達。

 リリアが耳打ちする。

「あんな船体、見た事もない」


 ダリスも耳打ちして

「どこの国の…船体?」


 エレナが

「なんか、感じる力が…とてつもなく強いんだけど…」


 ディーオが「オレに任せてくれ」と彼女達三人の前に出る。


 それと同時にラプターとリュシュオルが前に出ると、ホーリートライアングルの兵士達が一斉に整列して敬礼の構えをする。

 凜として真っ直ぐな胸に手を当てる姿。

 それは圧倒的に訓練された戦士の威圧を纏っている。

 

 ダリス、リリア、エレナの三人は若いながらも戦闘経験がある。

 その中で、最も戦いにくい者達がある。訓練されて規律が乱れない部隊だ。

 まさに、それを体現している。


 ディーオは額を抱えながらラプターとリュシュオルに

「ホーリートライアングル…ですか…」


 ラプターが

「知っているのか?」


 ディーオが頷き

「前世でね。しかし、巨大な時空連合国家の軍団が…こんな辺鄙で、貴方達からすれば下位の世界に何の用なんですか?」


 ラプターとリュシュオルが視線を合わせた後、リュシュオルが

「アナタ…ヘオスポロスの兵器人?」


 ディーオが腕組みして

「元ですが…」


 リュシュオルが

「そう、じゃあ、アルダ・メルキオールは知っているわよね」


 ディーオは頷き

「そちらの時空連合国家の総主ですよね。絶大な力を持つアヌンナキ、完全なる支配者でしたよね」


 リュシュオルが

「そのアルダ・メルキオールが消滅したわ」


 ディーオは青ざめ

「そ…え? はぁ? そんなバカな! アヌンナキ、完璧なる者達、神人ですよね? それが消滅した?」


 ラプターが悲しげに

「事実だ。オレ等の御方は、消滅した。そして、今、ホーリートライアングルは御方の対であった弟のアシュリードが統治している」


 ディーオが額を抱えて

「信じられない。アルダ・メルキオールもヘオスポロスを創ったベルタ・バルタザールも…消えたなんて…。オレがここで生まれ変わって生活している間に、そんなとんでもない事になったなんて…」


 リュシュオルが

「事実よ。そして、我らはアルダ・メルキオール様の魂を探している」


 ラプターが

「ヘオスポロスの連中のネットにハッキングして、どうやら、アルダ・メルキオール様の魂がこの世界に転生しているらしい」


 ディーオが青ざめ

「ホモデウス(神人)の魂が転生している! なんの冗談ですか?」


 ラプターが

「冗談じゃあねぇ。だからこそ、その危険性を理解できるな…」


 ディーオが頭を抱えて

「神域、高次元さえも越えた存在が、この世界で本来の復活を果たしたら…。一瞬で、この世界は作り替えられる」


 リュシュオルが

「だから、私達が来た。その転生した人物を保護する為に。この世界の時空許容ギリギリで活動できる者達でね」


 ディーオが上を見上げて

「そんな事になっているなんて…ヘオスポロスが…色々とガタガタになるワケだ」


 ラプターが

「協力してくれるなら、見返りは用意する。だから…」


 ディーオが溜息を漏らして

「はぁ…自分達の上の人達と話を通しますので…」


 リュシュオルが頷き

「感謝する」


 ディーオが頭を振り

「この世界を壊したくないんで、早く回収し保護してくださいね」


 ラプターが微笑み「ああ…」と



 ーーー


 アスラ帝国首都上空にアクエリアスが到着した。

 首都にいる人々は、空に浮かぶ巨大な戦艦を見上げている。誰しもが驚いた顔をである。


 アクエリアスから一隻の時空戦艦が下りる。

 全長三〇〇メートルの時空戦艦は、首都にある皇帝城の上を覆い尽くす程だった。


 そこから下りるエレベーターが伸びて皇帝城内の庭園に降り立つと、そのエレベーターからディーオ達が現れる。

 目の前には、アスラ帝国の女帝アリエルと息子のエドワード、ルーデウスとシルフィーに護衛達がいて、その前にディーオ達が跪き

「ただいま、戻りました」

と、女帝アリエルの前に頭を垂れる。


 アリエルが頷き

「ご苦労です。しかし…これほど巨大とは…」

と、アクエリアスを見上げる。


 ディーオは跪いたまま

「あと、一隻、これと同等の戦略兵器戦艦リーブラスを通信で呼び寄せる必要がありますので…。まだ、騒がしくなるかも…」


 アリエルが

「ディーオ、一つ聞きたいわ」


 ディーオが頭を垂れたまま頷き

「なんでしょう? 陛下…」


 アリエルが

「表を挙げて立ち上がりなさい」


「は」とディーオは立ち上がりアリエルと視線を交わす。

 アリエルが真っ直ぐとディーオを見詰め

「コレに関して無知な私でも分かります。空の上にあるコレは…強大な力です。それをアナタは、ディーオは扱える。それを手にしたディーオは、どうするつもりですか」


 ディーオは苦笑して

「残念ですが、陛下。こんな力なぞ、私がいた組織ヘオスポロスにとって慰謝料でしかありません。それに、事情が大きく変わりました」

と、告げてディーオは再び跪き

「陛下。わたくしの力では、どうしようもできない事態が発生しています。どうか…お力をお貸し下さい」


 もう一隻、ホーリートライアングルの時空戦艦アセウスが来て、アセウスから乗員を下ろすエレベーター力場が働きディーオ達の隣にラプターとリュシュオルが降り立つ。


 リュシュオルが頭を下げ

「現地の統治者に出会えた事に感謝します。我々は、別世界から来たホーリートライアングルという軍です」


 アリエルが厳しい顔で

「説明してくれますよね。ディーオ」


 ディーオは跪いたまま頷き

「勿論です。陛下…」



 その後、皇帝城内の会議室で、ディーオの話を聞くルーデウス達。

 この世界を当て馬にしようとしたヘオスポロスの計画が変更された事。

 それによって当て馬にされないが、自分達の力の宣伝とディーオの退職金として、アクエリアスとリーブラスを渡した事。


 それにルーデウスが頭を抱えて

「超巨大な時空戦艦を慰謝料てどんなレベルの組織だ?」

と、改めてヘオスポロスの力を感じた。


 アリエルが

「それと宣伝…と言っていましたが…」


 ディーオが忌々しい顔で

「ええ…そうです。自分はヘオスポロスにいたので、よく分かりますよ。ヘオスポロスは兵器の売買と運用を行います。武器商人という表現が正しいかもしませんね」


 ルーデウスが

「どういう風にするんだい?」


 ディーオが苦しそうに

「自分がアクエリアスを持ち帰ったのは、もう…世界中に知られているでしょう。ヘオスポロスの使う方法は、とても簡単で分かり易いです。対立がある世界の片側に巨大な武器を提供する。そうなると…どうすると思いますか…」


 エドワードが嫌そうな顔で

「ああ…対立している側も同じモノを欲する。つまり…」


 ディーオが

「ヘオスポロスの兵器は、全てが無人自動兵器…」

と、全体の顔を見ると首を傾げている。


 ルーデウスだけが

「少し分かり易くしてくれな。ディーオ」


 ディーオは考えて

「ええ…闘神鎧、そう、着る人が必要としない闘神鎧の軍団を提供するのです」


 エドワードが困惑しつつ

「そんな、過剰な表現をして。有り得ないだろう」


 ディーオが

「その有り得ないは禁物ですよ。アクエリアスがあるんですから」


「んん…」とエドワードは困惑しつつ

「つまり、乗り手を必要としない闘神鎧の軍団を売り渡すとして、その見返りに金額は、膨大だろう」


 ディーオが皮肉な笑みをして

「お金なんて請求しません。相手の側にある土地や権利を対価として受け取るのです」


 ルーデウスが

「そんなんで、釣り合いが取れるのか?」


 ディーオが呆れ気味に

「釣り合いなんて関係ないんですよ。ヘオスポロスは、無限に近い物資を生産する能力があるんです。この世界の持ち主が許可したという事実を楯に、土地開発を行い…そこから、ヘオスポロスの超絶技術で出来た製品を販売するんです。安い手頃な値段でね」


 アリエルが考えながら

「それにどんな得があるのですか?」


 ディーオが厳しい顔で

「それこそがヘオスポロスのやり方なんです。便利な道具は、あっという間に世に広まる。そして…それが社会にとって必要不可欠にする。そうなれば、ヘオスポロスを切り離せなくなる」


 ルーデウスが青ざめて

「それってスマホやパソコン、ネットのように…」


 ディーオが両手を広げて怖い顔で

「考えて下さい。戦い合う両陣営に兵器を売って、ヘオスポロスは両陣営の権利や土地を得て便利な道具を両陣営に提供し続ける。その果てに待っているのは、ヘオスポロス無しでは生活不可能な社会です」


 エドワードが厳しい顔をして

「なるほど、そうやって支配するのか…」


 ディーオが

「支配するではないのです。ある程度の領分を持っての社会への取り込みなんです。そこもヘオスポロスの狡猾な部分なんです。争いは何時しかヘオスポロスの道具で十分となり、生活にもヘオスポロスの便利な道具や機構が入り込む。しかし、それのコントロールには必ず現地民が採用されている。そして、現地民の裁量範囲が必ずあり、決定権もある。ヘオスポロスは、便利な道具として徹し続ける」


 アリエルが

「だからこそ、ヘオスポロスと切れなくなる」


 ディーオは頷き

「その通りです。それがヘオスポロスの戦略です。社会は便利なるでしょう。ですが、その便利な分、不便は必ず生じ、そのしわ寄せとして既存の権威達はゆっくりと…その力を削がれる。ヘオスポロスが介入した事で、多くの元からあった権威や力は削がれてしまい、形だけが残るだけ世界を幾つも…自分は…」

 その先を言えなかった。

 それを嘗て、エピオンとしてやっていたからこそ…。


 そこへオールステッドも現れ

「力なき理想なぞ、無力に等しい」

と、告げて会議室へ入ってきた。

 ルーデウスの隣にオールステッドが座り

「この世界には、崩壊した氏族達の世界がある。力を得る為に崩壊して不必要な場所なぞ、手渡すのは目に見えている」


 ルーデウスが

「もしかして、もうここで…そうやって兵器を売っているかもしれない」


 ディーオが

「それを防ぐ為にも、虎の威を借る狐ではありませんが…彼等の…」

と会議に同席しているホーリートライアングルのラプターとリュシュオルを見る。


 ラプターが手を上げ

「オレ等は、協力するぜ。この世界に転生しているだろう御方を探し出す為に…」


 ディーオが

「ホーリートライアングルとユグドラシルの民の介入を入れれば、ヘオスポロスの戦略を弱める事が出来ます」


 アリエルがラプターやリュシュオルに

「信用に値すると?」


 リュシュオルが

「少なくても、私達は貴女方と同じ王権を上に置いています。ですから、こちらの王権も尊重しますし、長い…協力関係になりますので。共存をお願いしたいです」


 アリエルが溜息を漏らして

「本当に…大変な事態になってしまったわね。良いでしょう。ディーオの考えを受け入れます。オールステッド卿、ルーデウス殿」


 オールステッドは頷き

「異論は無い。それが最善だろう」


 ルーデウスは頷き

「ディーオくん。まず、最初にやる事は?」


 ディーオが

「変わっていません。リーブラスを呼び寄せて、この世界にあるエレメンタルジェネレーター達の連結、そして、この世界の神の庭エルガルザドへ行き、奪還!」


 ルーデウスが

「よし、ちゃっと終わらせましょう」



 


 ーーー


 会議が終わりディーオは、皇帝城の客間へ来ると、そこには嫁達三人、リリアとダリスにエレナがいた。

 エレナが

「お帰り、どうだった?」


 ディーオが

「会議が纏まったよ」


 リリアがディーオの上着を取り

「結局は、やる事は変わらないのね」


 ディーオは頷き

「ああ…エルガルザドへ行くのは決定事項さ」

と、告げてベッドへダイブすると、ダリスが隣に座って背中を擦り

「何時くらいに、エルガルザドへ行く支度が始まるの?」


 ディーオがベッドで横になりながら

「一週間後くらいらしい。色々と手配があるので、直ぐには出来ないさ」


 エレナも来てベッドに座り

「そんな、のんびりでいいの? 相手は早いじゃないの? もし、野盗やヤバい連中に武器を売ったら…」


 リリアもベッドに来て座り

「私もそう思うわ」


 ディーオは仰向けになり

「ヘオスポロスは、野盗やヤバい連中なんかに兵器を提供しない。犯罪に使われるとイメージが悪くなる。必ず統治している人達へ提供する。大義のない事に使われる兵器は、暴力というレッテルを貼られる。それはヘオスポロスにとって痛手だ。心配するな。ヘオスポロスのやり方は分かっている。アクエリアスやリーブラスが現れた程度では、始まらんよ」


 エレナとダリスにリリアは顔を見合わせて、リリアが

「そう。ディーオがそう言うなら、信じるわ」


 ディーオがアンティークなシャンデリアがある天井を見上げて

「なぁ…一週間の休みがあるから…行かないか?」


 エレナが

「どこに?」


 ディーオは上半身を起こして

「誓いの場所に…」



 ディーオは、ルーデウス達に許可を取る。

 ルーデウスは笑み

「全く、そんなに急かさなくても…」


 ディーオが真剣な顔で

「やって置けるときにやっておきたいんです。ですから…」


 ルーデウスが頷き

「分かったよ。まあ、君達の出番は、まだ、後だから。その準備期間中の一週間で出来るならやってくれても構わないよ」


 ディーオが頭を下げ

「ありがとうございます」


 ディーオは時空戦艦に、リリアとダリスにエレナを乗せてミルボッツ領へ向かった。

 ミルボッツ領の領主の城の上に巨大な時空戦艦を止めて、城に下りると呆れた笑みの領主ルークがいた。


 ルークが

「全く、君は…」

 大体の連絡はルーデウスから聞いているようだ。


 ディーオが

「すみません。今後…大変な事になりそうなので…」


 ルークが四人を中へ導き

「色々と準備をして置いたから。後は着替えて…」


「はい」とディーオにダリスにエレナとリリアの四人は返事をした。


 ディーオは紳士の服で、ダリスにエレナとリリアはドレスを纏う、ダリスが

「こんな服、着慣れなくて…」


 リリアが

「今だけだから」


 紳士服のディーオと、ドレスのエレナとリリアにダリスは頭にブーケを乗せる。

 そして、領主の城内のホールに来ると

「おめでとう」

と、祝福してくれる人達がいた。


 四人の結婚式が始まった。


 この世界の結婚式は、ミリス教以外、簡素なモノで、結ばれる当人同士の家族の顔合わせやお世話になった人達を呼ぶパーティーみたいなモノだ。


 奥の席に、ディーオ達四人が座って、一人一人がお祝いのメッセージを送る。


 ダリスの両親は、喜んでくれていた。

 それを見て気恥ずかしそうだ。

 男勝りなダリスが本当に誰かを迎え入れるのか心配だったらしい。


 リリアの母親とディリーナに父親のルークも来て、ディリーナが

「色んな話を聞いている。師匠として嬉しい限りだが…ディーオ、絶対にリリア達を裏切るなよ」


 ディーオが

「そんな事ありますか?」


 ディリーナが

「お前は、しっかりしていてモテそうだからな」


「え? そうですか?」とディーオに自覚はない。

 むしろ、ゴッツいモテそうもないタイプと思っている。


 ルークが呆れ気味に

「やれやれ、鈍感な事で…」


 そこにエレナの母親と、ディーオの母親レディス、父親ルディーオが来て

 レディスが

「おめでとう。なんというか…安心している。何を考えているか分からなくて怖い息子だが、末永く頼むよ」


 ルディーオが

「おめでとう。これから…色々とあるが、頼って欲しい」


 ディーオが

「父さん。まだまだ、自分達は未熟な部分がある。だから…助けて欲しい。それに…まあ、孫の面倒も見て欲しい」


 それを聞いてルディーオは頬をほころばせて

「ああ…何時でも頼りなさい」


 こうして、緩やかに結婚式は終わり。

 ミルボッツ領内にある家でディーオ、リリア、ダリス、エレナの三人は暮らし出す。


 ミルボッツ領は人口が増えてきたので、城塞都市の外に新たな町が建築されていく。

 その新たな番地に四人の家が建造された。

 すこし大きめの屋敷としては小さめの家。

 そこへ、色々と生活する家具や品が運び込まれる。

 それを設置して忙しいディーオ達。

 二日くらいしてやっと生活が始まる。


 ディーオは二階の窓を開けると、遠くの方で新たに作られている城塞都市を覆う城壁の建造が見えた。

 この世界は、魔物といった外から来る害が多い。

 それから新たな町を守る為に作られる。


「いつか…その害もなくなるといいな」

と、ディーオは思いつつも、ここでの新たな生活を楽しもうと…。


 三日目、ルーデウス達がお祝いに来てくれた。

 ルーデウス達、シルフィー、ロキシー、エリスの妻達をルーデウスが連れてきて、色々と話をして、夜が更ける。


 ルーデウスは用意されたお酒に酔っ払い。

 それを看護しているのは、ディーオで。

 ルーデウスの妻達は、色々な心得をディーオの妻達に教えていた。

 その中に、遠慮はするな!とか、よく話し合えとか、外でも甘えてくるからビッシさせるとか、色々と吹き込んでくれた。


 そうして、一週間後、ディーオは装備に身を包む。

「じゃあ、最初に行くよ」

と、リリア、ダリス、エレナの見送りに伝える。


 リリアが

「私達も後から行くから」


 ダリスが

「ごめんな。まだ、家の事の整理があるから」


 ディーオが微笑み

「二日くらいだろう。先にアクエリアスに行って、色々とやって置くよ。その後は…」


 エレナが

「せっかく新婚生活が始まったのに…また、冒険か…」


 ディーオが

「この冒険が終わったら、一段落はつけるから…。じゃあ、先に行ってる」


「いってらっしゃい」と彼女達は見送った。


 家から離れてディーオは

「いってらっしゃいか…」

 前世ではなかった光景だ。

 シミジミ、自分がエピオン、ナンバー19820305ではないと…理解する。


 こうして、ミルボッツ領の領主城にある転移ゲートを通ってアスラ帝国首都へ到着後、王竜が管理しているアクエリアスに島へ向かった。

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